↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麒麟の森  作者: 冨永 真一
PR
14/31

大介と柚絵②


 柚絵とはある街コンで知り合った。職場は男性職員ばかりで男女の出会いという意味ではまるで「砂漠のような環境だ」と同期入社で親しくしていた神林に誘われて参加した。神林と二人で参加した五回目の街コンだった。四回参加しても全く成果の上がらない自分たちに、「どこでも砂漠だな」と嘆いた大介に最後の参加にしようと食い下がる神林に押される形での五回目で柚絵とであったのだった。


過去四回では、街コンの「システムへの理解が不十分だった」ために、目当ての相手とマッチできなかったと友人の神林が分析していた。どちらも立食でのフリーの会食の後で、初めに分けられたグループごとに男女の懇談が準備される。参加者全員が触れ合う機会が保障されるのである。最後に連絡先交換を希望する三名を記した用紙を提出し、マッチしたペアだけがめでたく“結ばれる”のである。


初めの街コンでは二十名いた女性の誰とも神林も大介もあえなくマッチする相手がいなかった。神林は、街コンが終了した後、三人組で来ていた女性達に声をかけて、夕食に誘った。


二対三という少しアンバランスな人数構成が功を奏して打ち解けた雰囲気になった。女性たちは街コンには興味本位で何度も参加しているがなかなか思うような結果が得られないと酒も入ってよく話した。


彼女達から聞いた話はこうだった。自分たちは第一から第三希望までお気に入りの男性を記名する。しかし仮にマッチしたとしても、相手が自分を第一希望に記入していなければ、主催者から連絡先交換の可否を問われる際に、「ノー」と伝えるのだ。彼女たちが見ていたところによると、第一希望に自分を指名した男性とではないと連絡先交換を希望しない女性が大半だという。


 

 柚絵は、白いシャツとジーンズに踵の低いサンダルで現れた。今思い出しても、夏の日差しが窓ガラスから入り込む会場に仄白い光をまとっていた。黒い髪を後ろで軽く束ねていた。大介は、第三希望までの欄に全て柚絵の名前を書いて提出した。でも、どの場面でも柚絵と話が出来なかったので、その希望はほとんど祈りでしかなかった。最後のマッチングの場面で柚絵とマッチしたことが分かったとき、喜びを通り越して恐れすら感じてしまった。それからは、大介本人にも意外なほどスムーズに交際が進み、交際1年を少し過ぎたあたりで同棲を始め、そのままの流れて入籍したのだった。


 同棲をしている頃にも、柚絵の不安定さを感じたことが何度かあった。例えば、大介が大学の同じゼミの友人達との集まりからの帰りが遅くなったことに激しい抗議をしてきた時のことだ。


「わたしと友達とどっちが大事なの!」


 赤くなった目を潤ませながら、大介の腕を引っぱった。大介はことの重大さが分からずと惑うばかりだった。たまたまその日は携帯電話の充電が切れてしまい、連絡が出来なかったのだ。心配をかけてしまったのは分かる。でも、「友達と自分がどちらが大事なの」かを問われる事態であるはずがなかった、少なくとも大介の認識では。


終電で帰宅した大介に対して、涙ながらの非難は夜通し続いた。確かに自分に非がなかった訳ではないので、大介は平謝りしたが、今思い返すとあの時が最初に感じた柚絵の不安定さだった。

その不安定さが顕わになる度に、次第に柚絵への思いも深まっていくのも事実であった。

「柚絵をなんとかしなくちゃ」、そんな声が大介は心で呟いた。



しかし、近頃は大介は柚絵を支える力が保てなくなっていることをはっきりと認めるしかなかった。



                   つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。