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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
序章 異世界召喚
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第46話 未回収のイタリア

機巧暦2139年12月・イタリア王国マルタ島



「こんな大変な時に何しているですか?

新田中将・・・・・・・・・」



「何って女たちの踊りを見ながら酒をやってるだけだ。北畠少将も一献どうかね?」



「・・・・・・・・・わ、わかりました」



マルタ島にある新田の屋敷に立ち寄った北畠は酒に付き合いことになった。畳敷きの部屋に女性5人が踊っている。女性たちは着物姿・・・・・・上半身は着物姿で下半身には太股の半分くらいまでしかないスカートをはいていた。踊っている最中にチラチラと下着が見える。上半身に着ている着物は着崩しているため胸元が開いている・・・・・・・新田は女たちの前に座って酒を飲んでいた。



「ほら、一献」



「・・・・・・・で、欧州やバルカン半島が戦争状態の時に何をやっているんですか? 貴方は中将です。本拠地であるこの島で指揮を執るべきでは?」



「こんな時だからこそよく遊んで、よく寝て、よく食べて飲んで、よく女を抱いて・・・・・・それが長生きのコツだ。堅いことばかりでは気が滅入る」



「女は余計では? 女が無くとも長生き出来ます」



「フッ! フッハハハ!!」



北畠がそう言うと新田は爆笑した。



「?」



「たしかに女はいらないな。でもな北畠よ。溜まったままでは良い考えも仕事も出来ないのだよ。溜まっているものを発散してこそ仕事に集中できるのだ」



「まったく貴方という人は・・・・・・・・で、何ですか? 今日の用事は」 



「ああ~すまない。女たちを見ていたら忘れてしまったわ」



「・・・・・・・・・・・・・」



北畠が呆れていると襖がそっと開き奏上役の人が入ってきた。奏上役は新田の元に近寄ると書簡を渡して去っていった。



「榊原少将は若いながらも中々やるな・・・・・・フフッ」



「?」



「榊原少将が親オスマン帝国派の籠もるブルガリア、ギリシャ、ルーマニアを攻め落とし、統監府を建てて大日本帝国・欧州本部派を樹立したと書いてある」

 


「一気に3っも落とした・・・・・・・どうやって落としたのか・・・・・・・」



「書簡によれば坑道を掘り城壁の下に爆薬を仕掛けて城壁を破壊したとある。さらに城内に内通者をつくり破壊工作をさせたとある」



「徹底してますね」



北畠は苦笑いした。



「さらに逃げた親オスマン帝国派を捕縛して処刑したそうだ。その数200人だと書いてある」 



「やりすぎでは? せめて国外追放とかに処せばよかったのでは?」



「・・・・・・・・悪くはないだろ。大日本帝国・欧州本部は平等、平和をモットーではあるが、その反面、平和や平等を乱す奴は情け容赦なく虐殺してもよいということだからな」



「虐殺はやりすぎです! 人心掌握のためには反対派も寛大な態度で挑むべきです」



「どこの国の言葉だったか知らないが・・・・・・・汝、隣人を愛せという言葉がある。一見、平等を謳っているようにも見えるが本質は隣人以外つまり、自分と価値観の合わない者は人間扱いしなくてもいいととれる」



北畠はそう言うと新田はゾッとするような目つきそう言う。



「拡大解釈しすぎですよ・・・・・・・それでこれからどうするおつもりですか?」



「久遠柚希をどうしようか迷っている。このまま彼を野放しにすれば必ずどこかのタイミングで強敵として立ちはだかるだろうな・・・・・・・・・大金をくれてやったから彼も我々に多少の恩義は感じているはずだ。それでも彼は我ら大日本帝国・欧州本部かドイツ帝国かと迫ったらドイツ帝国を選ぶだろうな」



「ドイツ帝国を選ぶのは当たり前ですよ。ドイツでの生活が長いですし仲間もたくさんいると思いますから・・・・・・・・・・」



「オスマン帝国を滅ぼしロシア=ソビエトを退けた後、全軍でドイツ帝国に攻め込み久遠柚希を生け捕りにして降伏を迫るか、それとも暗殺してしまおうか・・・・・・・」



新田は顎を手でさすりながら考えた。



「仮に暗殺するにしても相手は当代随一の魔術師です。それに対してこちらに魔術師はいません。もしやるのであれば欧州本部の軍人の誰かをイタリア王国に行かせて洗礼を受けさせるしかありません。しかし問題はナポリがドイツにいる人間しか洗礼を受け付けていないことですね」



「洗礼させるにしても誰を行かせるか?」

 


「・・・・・・・榊原少将はどうでしょうか? 若くて今は無名の存在ですがいずれは化けるでしょう」



「フフッ、北畠も私と同じ考えか・・・・・・・イタリアがドイツの連中しか洗礼を受けつけないことは私も耳にしている。解決方法はあるから安心しろ」



新田は得意げにそう言う。



「?」



「未回収のイタリアって言うのを聞いたことがあるだろ?」



「たしか、イタリア統一戦争の時にオーストリア=ハンガリー帝国から取り損ねた北ナポリの一部とか・・・・・・・・」



「そうだ。イタリア王国は未回収の場所を何とかしてでも取りたいらしくてな。でも戦争するにも経済的に厳しいから出来ないらしいのだよ。そこで我ら欧州本部が経済的に支援するから今こそ未回収の場所をオーストリア=ハンガリーから奪いとれと言うのだ」



「なるほど、無事に未回収のイタリアを獲得できたらそれを理由に洗礼させろと迫るわけですか」



「うむ。誰のお陰で未回収のイタリアを獲得できたんだ? と言ってやるのだ。そうすれば洗礼させてくれるだろう」



未回収の領地は山岳地帯となっていて、全山に要塞を築けばオーストリア=ハンガリーやドイツからの北方の守りは万全となる。さらに北方が盤石となれば南方に勢力を伸ばし、かつてのローマ帝国を復活させることができるためイタリア王国にとっては悪くない話だと新田は思ったのだ。



「ご歓談中申し訳ございません。少しいいですか?」



「ん? なんだ?」



後ろで控えていた新田のメイドがそう言う。メイドが耳元で何かを話すと新田の顔色が変わった。



「どうしたんですか?」



「オスマン帝国の使者が鎮守府に来ているらしい」



「おそらくバルカン半島の件での詰問でしょうね」



「ああ、すぐに鎮守府に行こう」



「わ、わかりました」

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