閑話3話 傍観者は観察する
最近、弟の様子が少しどころかかなりおかしいのだが……
俺には、弟が一人いる。名前は次郎、二男だから次郎……なんの捻りも無い名前だ。3歳頃までは、カルガモのヒナみたいに俺の後ろをずっと着いてきていたが、ある日突然、人格が変わったようになる。
一人で行動するようになったし、あまり俺を頼ることもしなくなった。俺の真似してサッカーボールをずっと蹴っていのが、急に野球の道具を所望しだしたりだ。可笑しなことばかりだ。
まぁ一番おかしいのは、この世界なんだが。実を言うと俺は転生者だ。そして転生した世界は、ゲーム「スクールドリーム 君は誰を選択するの?」通称スクキミに極めて似た世界だ。
スクキミはそう有名なゲームではない、所謂ギャルゲーとか恋愛ゲームと呼ばれるものだ。ヒロインは6名おり、それぞれ一定の恋愛度を上げると専用のシナリオに突入するものだ。俺は、ただのモブだ……残念ながら主人公ではない。
で何故似た世界かと言えるかというと、色々とゲームとは変化が生じているからだ。まずキーキャラクターである弟の名前が違う。本来、サブキャラである俺の弟の名前は政常のはずだ。弟は所謂、主人公のライバルキャラで悪役キャラという立ち位置で、最後はそれまでの悪事が明るみになり、失踪するという哀れな存在…………だったのだが。
不良に至るまでのフラグがバキバキに折られている、まだ幼稚園児で今後変わるのかもしれないし、ゲームは主人公が高校に入学してからになるので、もちろんライバルキャラの幼稚園時代の描写なんて無いので幼稚園時代の違いは不明ではあるのだが。
そして変化が大きすぎて一番大事なシナリオ自体が崩壊している。余りの崩壊っぷりに本当にスクキミの世界なのか戸惑った程だ。
一番面白かったのは、正規シナリオなら小学校時代の弟の方が、まず三井の御嬢さんに一目ぼれして、家の力を背景に無理やり婚約するはずなのに、何故か逆に向こうから請われて婚約に至っている事だ……というか話を聞く限り次郎は嵌められていないか?
まぁ良い、本来なら嫌々婚約したヒロインを主人公が次郎…………いや一之宮政常の悪事を暴き、彩香を助けて婚約を解消し、主人公と彩香はゴールイン……ってのがスクキミ「彩香編」の大筋のシナリオである筈だ。
まぁ本編だと、物静かな御嬢さんで図書館に居るのが自然な感じだったはずだが?なにやらアクティブな性格になっているようだし、やはりキャラクターには命が吹き込まれているからこそ、皆自由に生きているんだろう。やはり面白い。
次郎も自分の人生を生きているんだろう。だが恐らくあいつも俺と同じく転生者だろう。急に人格が変わったのもそうだけど「お兄様も僕と同じような事起きませんでした?」なんて聞きまわったのが拙かったな。
俺は次郎と違って生まれた時から自意識があったんでな。また主人公の九乃衛も尻尾が分かりやすかった、シナリオと同じく中学校のクラブチームが一緒になったのだが、弟の事はもちろん、彩香・雅美両ヒロインの事もひつこく聞かれたので、かなりの確率であいつも転生者なんだろうな。
以前次郎に俺も転生者であることを話そうとも考えたが、これは俺の最大のアドバンテージだ簡単には披露は出来ない。確定はしていないが主人公である九乃衛も転生者っぽいしな。隠していた方が動きやすいだろ。ゲームをしているときは悪役ざまぁとも感想は持ったが、この世界では俺の可愛い弟だ出来れば助けてあげたい、前世では一人っ子だったしな……でも最近俺の相手をしてくれないから少し寂しい…………
まぁ弟が不良化するのは、シナリオをでは完璧超人であり、勉強でもサッカーでも勝てず捻くれ、一之宮家の当主への最大の障害である俺との争いで敗れたせいなのだが、それをどう防ごうかなと考えている内に勝手に不良ルートから次郎が外れていた。
俺も何が起こっているのか分からないが、まず兄への劣等感、張り合ってませんサッカーもしてません…………当主主任への野望、持ってませんというか通字も与えられず、後から聞いた話だと養子に出される予定だったとのこと。まぁ弟も当主にならないようバカな振りをして、親父から当主に成ったら何がしたいと聞かれ「城を築城したい」なんて会心の笑顔で言っていたが…………冗談だよな?あの一瞬だけはこいつは本当に転生者なのか疑問に思ったね。サッカーも競うどころか野球に熱中している。
まぁ転生者ってのを話せるのは、出来てストーリーが完結する後、つまり弟が高校を卒業するまでは無理だろう。俺もこの世界をまだ理解できては居ないのだから。もしかすると弟が高校に入学するときがゲームの始まりだから、本当にゲームの世界でその時に俺の意識も奪われるやもしれない。俺もモブに近い存在だが、世界を構成する一部であるのは確かだからな。
しかし俺も当初は、転生した後は変に昆虫とかに転生じゃなくて良かったとか、どのみち俺は名前が文章に少し出てくるくらいのサブキャラだ。しかも俺はゲームに興味を失ってから死んだため、昔やったゲーム世界に転生しても興味は湧かなかった。だからヒロインの彩香ちゃんや雅美ちゃんにあっても、あぁあの子か、くらいしか思わなかった。
どちらかというと、何にしても中途半端な生き方をした俺だ。この一之宮政臣という存在になったからには、プロサッカー選手や社長になる才能がある、後はそれをどう磨いていくかが楽しみになった。
ただシナリオは覚えていたので、可愛い弟が悪の道に走らないくらいの介入をしようと思ったのだが、なんかすでにシナリオが壊れていたのは、正直自室で大笑いしたよ。良い意味であいつは様々な破滅への選択肢を回避しているように俺には見えた。
そして初めは、あいつもこのゲーム知っているのかとも疑ったが、情報を収集している範囲が広すぎで、この世界の元であるスクキミに関わること以外も調べていた、ゲームを知っているならば九乃衛みたいにヒロインや他の登場キャラの情報だけを調べるだろ普通。しかしあいつは、魔法やら戦争やらゲート・自衛隊など、まぁ転生ものに関わるもの全てを調べていたよ……
この世界は普通じゃないが、肝心な部分が分からないので手当たり次第ってのが真相だろう……でもなエロサイトは自分のパソコンを買ってからにしろよ……俺が親父に疑れちまったじゃないか…………
まぁそんなことはどうでも良い。今の俺にとっての重大事は、崩壊したシナリオが今後どうなっていくか?他にも転生者がいるのか?次郎が今後どんな行動をするのか?それが現在俺の最大の関心事で楽しみなんだから。
だからパーティの開始はもうすぐだ、もうすぐゲームスタートだ……。




