閑話2話 とある友人たちの憂鬱
>刑部涼
「涼、修学旅行は、同じ班を組もうぜ!」
元気に話しかけてくるこいつは、一之宮次郎、平凡な名前をしているが、俺の家族が仕えている主の二男だ。
「わかった、どうせいつものメンツで班を組むつもりだろう?」
「そうなんだよ、先週から彩ちゃん頼まれていてさ、可愛いよなぁ俺の彩ちゃん「修学旅行は一緒の班で京都を回ってみたいです。」ってさぁ俺は」
「……そうかそうか、分かったから落ち着け。」
こいつとは生まれた頃から一緒に居るのだが。こいつは一之宮家の御曹司というのに、お調子者で顔は中学校に進学して成長期が来たためか、小学校の時より精悍な顔つきになったが、兄や周りが美形過ぎて、埋没している印象をもたれるのは彼の不幸だろうか?
まぁそれ以外にも名家出身のため自由がない所が一番不憫と、今までは思われたが、一番の不幸は三井のお嬢様に捕まった事であろ
「あら涼君、今失礼な事を考えていませんでしたか?」
「っ!!いやいやいや、何も考えていません!!今度の京都旅行の事だけを考えていました!!いやぁ今からどこに観光に行こうかと思うと心が逸っていますよ!」
「おっ涼、意外と楽しみにしてたんだな。」
「涼君はクールさんですからね、感情をもっと表に出せば宜しいのに。」
「……仕事柄ポーカーフェイスが癖になっておりましてね……、次郎様ちょっとジュース買って参りますので、少し席を外しますね……」
「おう、なら俺も行くかな。」
「いや待て!待ってください、彩香さんも次郎に用があって来たのでしょう、私が買って来ますから!いつものでしょう?」
「ん?そうだな、なら頼んだ、コーヒーな。」
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危なかった……、今、購買部に次郎を連れ出すとお嬢様の機嫌は下がるだろうなぁ……あのお姫様は普通のお姫様じゃあ決してない。
気配は消せるし、感はすっげぇ鋭いしで、ずっと一緒だとこっちがまいっちまうよ。一之宮家と同じく名家の家柄ってのもあるが、いろんな意味で逆らえないし怖い相手だ。
次郎が絡まなきゃおっとりとした御嬢さんなのだが、残念なことに俺の近くには次郎がいることが多い、これには次郎に感謝しないとね、あぁ感謝しすぎて涙が出てくるよ。
しかし次郎は、頭も良いし運動も出来るが、感が鈍いのであれに気が付かない……、がそのおかげで幸せなんだろうなぁ……
最近は次郎と別行動を増やしている、理由はもちろん三井さんの存在だ。昔はそうは思わなかったが、彼女はかなり独占欲が強い。同性の幼馴染みってこともあるが、四人で居ても次郎は結構俺の方に話しかける事が多い、多すぎるとお姫様の機嫌が降下する……悪気は無いんだろうけどさ、胃がね痛いんだ……最近。
そのため三井さんが来ると、少し距離を開けたりして、とりあえず次郎と三井さんをくっつけるようにしている。俺も田中さんと一緒に居る方が気が楽だ、向こうもそう思っているだろうね。
まぁ俺も後から知った話だが、婚約の件にもあのお姫様が絡んでいる。当時は両想いで成立したと思っていたが、お姫様の片思いから始まったらしい。怖い相手に捕まったもんだね次郎は、まぁ俺の被害にならないよう頑張って欲しいね。しかしあの二人組と一緒に居ると精神がすり減ってしまうよ……、
本人同士が幸せなら良いのだろうけどね。若いのに意外と趣味が地味、次郎はお城巡り、彩香ちゃんは神社仏閣巡りというから以外とお似合い夫婦なのかもしれんね……
いや待て京都も寺ばっかり行く気じゃないだろうな、あいつら?前に福知山城は遠いしとか、銀閣寺は風情がとか言っていた気が……雅美ちゃんと一緒に、あいつらとは別行動しようかねぇ?
早く放課後にならんかな……早く野球に専念したい……。
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>田中雅美
「どうすれば、次郎様を三井家の婿養子に出来るかしら?」
可愛い顔をしていきなり重たい話をしないでください、お願いですから。
私の主は、三井家長女の彩香様、母も三井家に仕えている。が肝心のお嬢様は朝からかなり物騒な話を振りまいてくる。
「彩香ちゃん、どうして次郎君を婿養子にしたいの?」
付き合いも長いので理由は見当がついているが、念のためだ。
「もちろん次郎様を三井家の当主にするためよ!その方が幸せになれるはずよ。」
いやぁ嫡男の瑞樹様がいらっしゃるのにそれは拙いでしょう……普段は大人しい大和撫子風なのにどうして次郎君の事となるとこうも暴走するのか……
しかも考えがぶっとんでいる。前々回は行き成り結婚したいので手伝ってくれなんて言うし……小さかったから分からなかったが、今思うと幼稚園児で結婚は無理だよ……そういえば私が初めて怒られたのもその時の次郎君のプロポーズ(?)を録音できなかった事が理由だったな……というか彩香ちゃんあれは絶対婚約の返事ではないと思うの……当人同士が幸せなら良いのだけど。
そういえば大和撫子風なのも次郎君が髪の毛を褒めたからこうなったのか……。
ともかく流石にこれはお止しなくては、三井家が壊れる……そして我が家も崩れる。正論を言っても聞かないだろうし、どうする?
やはり次郎君をダシに使って進めればなんとかなるかな……
「でも次郎君前に公務員に成りたいって言ってなかった?」
「っは!?いえ、それはそうですが……当主になった方が次郎様の……」
効果は絶大だ!相手の大手門は開いた、今が攻め時だ。
「ですが名家ゆえに好きな野球も碌に出来なかったでは無いですか?土日の休みの部署ならばお二人で野球観戦、草野球にも参加できるのではありませんか?」
「……ですがせっかく一之宮家にお生まれになったというのに、いえ公務員を見下しているわけではありませんが……」
二の丸は陥落した、本丸に向けて畳み掛けろ!!
「彩香ちゃん、次郎君は今まで自分の好きな事を我慢して生きていたように見えます。将来くらいは自分で選ばしてあげてはどうですか、次郎君とちゃんと話をするのも大切だと思います。」
どうだ我が采配は!
「そうですね、分かりました。私も先走り過ぎたようです…………。」
よくやった私ぃ、これで我が家も救われるはず。あれなんか彩香ちゃんの様子が……
「…………でもその前に雅美ちゃんとも、ちゃんとお話しをしないといけませんわね……」
「ひぃ……」
彩香ちゃんは私の親友だけど精神が持ちそうにありません…………次郎君早く彩香ちゃんを迎えに来てください(切実)




