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【ネガ・にじバース】スレイトアール王戦記【第一章】  作者: Veis Vain Nova……


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18/20

《ゆづ、異界に立つ》18/20 ゆづ、先輩の強さを知る




そうや、ワイは強いんや─────『転生したらスライムだった件』






「マリー!だめよそれでは!ボール……じゃなかった」


〝多分使うことになるから〟と言ってどすえちゃんが替えのマガジンをじゃらじゃらと石畳の上に転がした。


「わぁ、こんなに……」


「うん。一応持っといて」


「砲弾が足に当たる瞬間に体の力を抜くんですの!クッションだと思うんですわよ、自分の体を!」


一枚布の和装のどこにこんなに、と思うほどどすえちゃんは大量のマガジンを隠し持っていた。


「上手い!上手いわマリー!その調子!」「それに比べて……三枝(さえぐさ)三枝(さえぐさ)!マリーの動きをよく見て!」


〝今からな?〟と言ってどすえちゃんが〝戦車どもを片っ端からブッ潰しに行く〟までの流れを説明してくれた。


「城の方から援軍が来てくれるから、そしたらその人らの援護受けつつ前進して行く」


「はい」


「煌ちゃん先頭にな?シルバースケールも後から来るけど、ゆづちゃんは取り敢えず煌ちゃんの背中にぴったり貼り付いて行くこと」


「はい」「……」


「あたしはゆづちゃんの後ろに付いて行くから」


「ちょ、ちょっとちょっと」


「?うん」


「いいわよソフィー!でもオーバーハンドで補る時は必ず両手の親指同士を付けること!」


「ということはわたくし、煌さんに続いてほぼ先陣を切るような形になるんですか?」


ここから戦車の大群までの間は1km以上離れていて、その間にはほぼ平坦な野っ原が広がっているのみだった。そこを向かって行くとなればその姿は当然戦車側から丸見えになる。


「うん、そう」


「えぇ!?」


「上手い!ソフィー、さすがだわ!安定感が段違(だんち)でしょう?」「……ッチ、あいっつマジ……」


あわてふためく私の肩をぽん、と叩いてどすえちゃん先輩は言った。


「大丈夫、ゆづちゃん。これは後で絶対実感することやけど、」


「……?」「はい……」


「煌ちゃんの後ろが一番安全やから。」


煌さんはご自分でもごす、と胴体ごとで砲弾を受けながら部下の方に檄を飛ばしていた。


三枝(さえぐさ)ァ!何やってんださっきからお前は一人で!」「それじゃ民家の方に飛んで被害が拡大するじゃないですのよ!」


「……はい。」


「できそう?」


「はい」


〝煌さんの後ろが一番安全〟というのは、不思議と腑に落ちるワードだった。


確かに、戦車の砲弾降りしきるこの空間で煌さんの傍にいることで得ている安心感は計り知れなかった。


「あとな?」


「?はい」


「今は砲撃だけやけど、必ず歩兵が出てくるから」


「はい……歩兵ですか」


「うん。今砲弾捕ってるこの人らよりはちょっと弱いけど、それなりに強い奴ら」


「あのね、手とか足を体から遠く伸ばし過ぎなんですのよ。もっとこう、体で捕る!体で捕って手足はあくまで補助的に使う意識で……」


「そういう奴らが必ず湧いてきて戦車守るために襲ってくるから」


「はい……」


「そいつらを倒して欲しい、一体でも多く」


「わた、わたくしがですか?」


「そう!」


「大体あなた何故ここにいるんですの?ε(イプシロン)には民間人の救護を命じましたわよ?」


私はアニカさんから受け取ったまま持っていた頼りない銃を眺めた。


「敵の歩兵は鎧着てんねん」


「鎧……」


「そう。結構がっつりした鎧やねんけど、関節が弱い」


「関節が」


「そう。肘・膝・手首に足首……あとは首周りも弱いな」


「はい」


「そういう関節の裏側見たら大抵隙間が空いてるから。そこを撃って」


「なるほど」


「うん。肘裏・膝裏・足首やったらアキレス腱側。手首やったら脈測る辺りで、首やったら延髄側やな。ゆづちゃんの腕やったら多分かなり当てられる筈」


「はい」


「何?一番後列にいたから指示が聞こえなかった……?」「もーいい!もーいいですわ!あなたは一人にしておけません」


〝その二人に同行してわたくしに付いて来なさい〟と言いながら煌さんが三枝(さえぐさ)と呼ばれていた隊員の方を私達の方に押しやった。


「わぁっ!?」


「大人しくしておきなさい、そこで」


煌さんに押されて石畳の上に座り込んだ三枝(さえぐさ)さんは、前髪の重いピンク髪のマッシュヘアによってピンク色の瞳をした目が半分隠れた、大柄な女性だった。


「……あ、」


「……あ、」


「……ど、どうも」


「ど、どうも、よろしく、お願いします……」


分かり易くおどおどとしているその態度は、殺意高めのトゲトゲとした銀色の兵装におよそ不釣り合いに思えた。


「じゃあー、三枝(さえぐさ)はあたしの右隣りな」


「あ、はい、まいまいさん……」


「うん」


「(……まいまい、さん……)」


「ゆづちゃんは射撃担当やから白いの来たら守ったって」


少し離れた場所で赤い煙や黒い槍を使って砲弾を防いでいたアニカさんが煌さんに向かって


「おーい!あたしもう先に行ってるぞ」


と声をかけた。


「……あらそう?一緒に来るかと思いましたのに」


「いやいい!尖兵として突っ込んでくるわ。お前は後ろから」


「様子見ですわね?」


「うん!」


続いて私に向けて〝ゆづ!〟と声をかける。


「……はい!」


「間違いなくそいつに付いていくんだぞ!絶対に離れんなよ」


「はい!」


「そのお嬢様、あたしよりずっと強いから」


「はい……」


「そいつの半径数メートルが、ここらで一番安全な場所だから」


言いながら西の検問所の金網エリアに向かって行く。


「……」「アニカさん!」


「……ん?」


「死なないで?絶対。絶対……」


「……」


「絶対に無事で、帰ってきて?」


「……」「うん」


扉が埋め込まれた南側の黒い壁はどうしてまだ立っていられるのかが不思議なほどに、鐘の音のような高い音を鳴り響かせながら戦車の砲撃を受け続けていた。アニカさんは今から、あの砲撃の全てを放っている大元に単身で向かって行く。


「約束だよ?わたくし……もっとアニカさんと一緒にいたいから。ジル様とも、シキさんとも……」


「……」


「皆さんと一緒にもっと……ずっといたい。いつまでかは分からないけど、もっと、ずっと……」


「……」


「……だから」


「……」「じゃあ、」


と言って足早に走り寄り、〝お互いに約束だな?〟と言って私の頬を指の背で撫でる。


「あたしもお前も無事、じゃなくて。」


「……」


「無傷でここで、また会おう」


「……」


「な?」


「……」


屈んで私の肩をぎゅ、と抱き寄せ背中をぽんぽん、と叩く。


「……」「はい……!」


〝うん、〟と言って微笑んだ後、アニカさんは数歩スキップのようなステップを踏み、両足で地面を蹴って金網エリアの向こうへ跳んで行ってしまった。


「……」


「……なァにが〝お互いに約束〟よ、ねぇ?」


「うん、ほんまに」


煌アイで追っていると、アニカさんは公道を走る車より速い速度で戦車の大群の方向に突っ走っていた。赤い煙をだらりと垂らした左腕の横に従えて、右の小脇に槍を挟んで信じられないスピードで前進して行く。


「子犬ちゃん。大丈夫よ、奴は」


「……え?」


「異常者だもの。怪我なんて……ないない。負ったなんて話、聞いたことありませんもの」


あまりのスピードに気付かれないまま敵陣に到達してしまうんじゃないかと煌アイで戦車の大群を見てみると、横一列に並んだ戦車の合間合間からごつごつとした白い鎧を身に纏った人影がわらわらと湧き出てきた。


「……あ!」


「うん。あれな?〝歩兵〟。戦車守るために出てきよった」


百人は優に超えている〝歩兵〟のほとんどがアニカさんに向けて前進する後ろで、まだ戦車の間からわらわらと湧き出してくる。


全員てらてらと光を反射する、一見プラスチックのようにも見える装甲を身に着けていて、手には湾曲した長剣や双頭の薙刀のような武器を持っている。


「あぁ、あぁ……アニカさん」


「……まあ、見てるがいいですわ」


「アニカさん……」


「一応、閲覧注意ですわよ」


アニカさんと数十人の歩兵の集団がここと戦車の大群との間の空間(エリア)で衝突すると同時に、歩兵が装備していた刀剣型の武器が一つ、宙に舞った。


「……」


「……」


煌アイでズームしてよく見ると、それは武器を掴んだ腕の装甲だった。武器をがっちりと掴んだまま、白くてらてらと光を反射しながら円を描いて宙を舞っていく。


「……」


「……」


〝装甲が武器を掴んだままっておかしいな〟と思ってさらにズームして見てみると、それは装甲に包まれたまま武器を掴んでいる人の腕だった。ぶんぶんと円を描きながらねずみ花火のように血液を撒き散らして地上10mまで舞った後ざくり、と地面に武器を突き立ててだらり、としなだれた。


「……」


「……」


白い歩兵が寄り集まり過ぎて姿が見えなくなったアニカさんを中心に、白い装甲に包まれたままの人の四肢がぽんぽんと宙に舞い上がり続けていた。大抵の場合肩口から切断された腕が、場合によってはずっしりとして重そうな太腿付きの足が、結構な頻度で鎧を被ったままの頭が……


「(……)」「(だからさぁ、)」


「……」


稲光を纏う赤い煙が放射状に広がって歩兵の群れを押し返した時、自分の下半身を手探りで探しながら地上数十mを舞う歩兵の上半身が見えた。


「(夢も行き過ぎると萎えるんだって、現実味無さ過ぎて……)」


「……」


久しぶりに姿を見せたアニカさんは百名を超える歩兵の血を浴びて、赤くぐっしょりと濡れていた。


軽く天を仰いで前髪をオールバックにかき上げる。


「……」


「何か、武術の類を習い始めてやがりますわね、ありゃあ……」


「なんか煙やのうて槍メインの運用になってるよね」


「あの、どすえちゃん」


「?うん」


「あの白いのって、結構強いってさっき言ってませんでした?」


「うん……強いよ?結構」


「……ですよね」


それをあんな簡単に、ぽんぽんぽんぽん……


「ほんとに強いですわよ?結構……三枝(さえぐさ)よりは強いんじゃないかしら」


「えぇ!?」


「はい、私よりは強いですぅ……」


「えぇっ!?」


三枝(さえぐさ)さんもお仲間さん達と一緒に(あまり上手ではないにしても)さっきから尋常じゃない身のこなしで戦車の砲撃を受け止めてて、とても人とは思えないフィジカルを発揮しているのに……


「ア、アニカさんてもしかしてめちゃめちゃ強いんでしょうか……?」


「うん……まあ、強いと言うよりも、キモい……」


「キ、キモい……」


「うん、ほんまそれ。マジでキモい」


「皇子達を除けば一番キモいわよねぇ?」


「あーそうかも。国民の中では一番キモい」


「えぇ……」


アニカさんに群がる歩兵の累計は、もう恐らく500名近くに上ろうとしていた。


アニカさんはその全てを槍で突いて薙ぎ払い、蹴って胴体をくの字に折り曲げ、黄色い稲光を内部でバチバチと光らせる赤い煙を爆風のように拡散させて彼方に吹き飛ばしたりしていた。


「……」


アニカさんを中心として、赤い大地と鎧に包まれたままのバラバラ死体の山が築かれていった。


もしかして感情を持たないサイボーグか何かなのかなと思うほどに、白い歩兵達は絶え間なく戦車の隙間から沸き上がり、同じペースでアニカさんに向けて押し寄せて行った。


「(キモい……分かるかも。強いとか格好良いとかじゃなく、最早人間味を感じない……)」


私はさっきまでここにいた人当たりが良く温厚で、屈託のない笑顔で微笑むアニカさんの姿を思い出していた。


「(……)」


「さぁ、わたくし達もそろそろ参りましょうか」


煌さんが見上げた空を、小さな航空機のようなものが隊列を成して横切って行った。


「……!?」


「あれが〝援軍〟な」


羽の生えたジェットパックのような物を背負った人の一群だった。城方面から飛来して私達の頭を越し、〝黒い壁〟も軽々と飛び越した後でアニカさんが戦っている空間(エリア)も越え、戦車の群れに向かって行く。


「さぁー行くわよ銀の竜鱗(シルバースケール)β(ベータ)γ(ガンマ)は付いて来なさい!δ(デルタ)ε(イプシロン)はここに留まって引き続き砲弾受け(球拾い)よ!」


思い立ったように立ち上がってどこかに移動しようとした三枝(さえぐさ)さんの肩を、煌さんが無言のまま掴んで留まらせた。


「……」


「行けそうか?ゆづちゃん」


煌アイで見るアニカさんの周辺には、さっきの倍からの死体の山が出来上がっていた。


血で髪をかき上げて固めたままのアニカさんは、事務作業でもこなすかのように平静な横顔を見せながらざくざくと歩兵を切り刻んでいた。


「(ムカつく、あいつ……格好良い顔しやがって……)」


いち早く追い付いて〝キモ過ぎなんですけど?〟と言ってやりたかった。


私にだってそのくらいできるってことも。この頼りない銃一丁しか持たされてなくても、私にだって……


「ゆづちゃん」


「行きましょう、どすえちゃん」


「うん」


「行って早く……追い付いてやりましょう、あいつに」


「うん……思うよな?それ笑」


「うん……なんかもうほんと、ムカつく」


「ほんまそれな笑」


どご、という地面を揺らす轟音がして反射的に戦車の群れを煌アイで見てみると、前列の戦車のいくつかから高い火柱が上がっていた。砲撃の爆炎やそれによる煙などとは比べ物にならない、黒々としていて分厚い火柱が。


銀の竜鱗(シルバースケール)、前進!」


「絶対に、煌ちゃんの後ろな」


「はい!」


折り返して上空を戻って行く航空部隊を見送りながら、煌さんの後ろに付き従って金網エリアに一歩踏み出した。




【登場人物・用語】


白河(しらかわ)ゆづ…………アニカの強さを目で見て具体的に知った人。本人は自覚していないが強過ぎて格好よ過ぎるアニカの戦う姿を見て血が(たぎ)っている。令和を生きるZ世代にしては腹が据わっていて、思いの外好戦的な性格。煌アイを使って戦況を確認する習慣が既に板に付き始めている。


アニカ・サンドルート…………強い以上にキモい人。キモいほど強く、強過ぎてキモい。〝年間三桁斬り〟の件も然りだが、何事も度が過ぎるとキモさが勝つ。煌の言う通りさる専門家に師事して最近槍術を始めとした武術を学び始めたが、その結果敵兵の撃破能率は格段に増加した。M.E.K.A.舞子(メカまいこ)が〝槍を主とした運用(=戦い方)に変わっている〟点を指摘しているが、以前はRedGas(レッドガス)を相手の呼吸器系に送り込んで息を止めることを主な攻撃法としていて、それで仕留めきれなかった敵を長柄の鎌型に成型したBlackCoal(ブラックコール)で刈り取っていた。その名残で今の槍型のBlackCoal(ブラックコール)の穂先は軽く湾曲していて、突く以上に切る使い方が多い。煌を自分より強いと言っているがこれは誇張で、実際には互角。自分が製作したものに比べて遥かに高性能な兵装により発揮される煌の頑強さと怪力、体速(スピード)を脅威に感じている。現時点で既に400名を超す〝歩兵〟を屠っているが、180cm超の長身でさらに丈のある大槍を振り回して敵を蹂躙する姿は控えめに言って格好いい。


アニカの集団戦…………自作のバトルコルセットにより発揮されるフィジカルで2m超の槍を振り回すパワー戦術。敵との間に距離を作りたい場合はRedGas(レッドガス)を爆風状に拡散させて周囲にあるもの全てを吹き飛ばす。呼吸器系に送り込んで暴れさせてよし拘束して結晶化させてよしのRedGas(レッドガス)の圏内に入った時点で対象の死は実は確定しているのだが、それによって消耗したRedGas(レッドガス)のメンテナンス費のバカにならなさから現在のBlackCoal(ブラックコール)メインの戦闘法に切り替えた。


絶天煌(ぜってんきらび)…………部下の指導に長けている人。捕球……じゃなくて砲弾の捌き方もよく心得ている。アニカのことを〝キモい〟と表現しているがこの場合のキモいは強い、格好いいの隠語でもあるので、つまりはそういうこと。M.E.K.A.舞子(メカまいこ)と二人で悪口を言っているのは〝強くてかっこよくてマジでやばい、キャー〟と言っているのとそう変わらない。勢い余って言ってしまった〝皇子達を除けば一番キモい〟は皇子達に対する悪口でもある。アニカのことを皇子を除いた国民で一番強い、つまり自分より強いと言っているがこれは誇張で、実際には互角。アニカが製作する強力無比な攻撃用武器を常に脅威に感じている。


京家(きょうや)M.E.K.A.舞子(メカまいこ)…………ゆづのお守り役を煌から仰せつかった人。人によりまいまいさん、と呼ばれる。赤い着物の下に銃器用の専用ホルスターを装着していて、そこに結構な数の替えのマガジンを収納している。戦車の大群に向かって前進していくこの段になって先刻義手の大技を消費してしまったことを本気で後悔し始めていて、この戦闘の後で煌に二回以上大技を使っても壊れない義手の製作を打診する。そして〝あなたが気を付けるところでしょうがよ〟といってまためちゃくちゃ怒られる。


〝白い歩兵〟…………侵攻して来ている某国が誇る量産型強化兵。通称白騎士達(ホワイトナイツ)。中身はサイボーグなどではなく普通の人間。日本の鎧武者を彷彿とさせるようなごつごつとした角付きの鎧を着ていて、その表面はプラスチックに似た安っぽい光沢でてらてらと光る。煌やアニカの製作するバトルコルセットをイメージして作られた兵装で身を固めているが、その性能は前二者の生産物とは比べ物にならないほどお粗末で、筋肉の力みに反応して鉄製ワイヤーの引っ張りで出力補正をかけるだとか、〝なるべく軽く固い素材で装甲を形作る〟とか、そういうアナログな製品。アニカにざくざくと切り刻まれ既に400名以上が死亡しているが、本国に帰ってもクソな生活が待っているだけなので怯むことなく襲いかかってくる。彼らを送り込んだ某国も端から彼らを今回の侵攻中に消費しきってしまう算段でいて、某国においては人の命がとにかく軽い。


〝航空部隊〟…………通称〝斬空隊(ざんくうたい)〟。二枚の翼を装備したジェットパックを背負って空を飛ぶ、スレイトアールの誇る航空機動部隊。第一皇室直下のスレイトアール軍部に属す特殊部隊で、同軍のエリート兵士比嘉蔵人(ひがくらんど)一等が全指揮を執っている。今回援護のために訪れたのは20名強の斬空隊員で、それぞれがジェットパックに6発ずつの対戦車ミサイルを格納しているが、6×20=120発では450両を超える戦車の群れには太刀打ちできず、殲滅より攪乱が今回の主な役割。既に話中で第一陣が戦車を何両か破壊しているが、その場に留まると撃ち落とされるのでUターンしてまた戻って来ている。ヒット&アウェイがこの部隊のベースの戦法。


マリー…………銀の竜鱗(シルバースケール)部隊のチームβ(ベータ)に所属する金髪ツインテの小柄な少女。まだ18歳の若手だがめきめきと頭角を現し、同隊の中でもエースの一角。直観力と反射神経に優れ、勝ち気な性格も手伝ってどんどん手柄を上げていく。戦車の砲弾は足の内側で受けて勢いを殺すトラップを直観的に用いている。


ソフィー…………銀の竜鱗(シルバースケール)部隊のチームβ(ベータ)に所属する、赤みがかった栗色の髪を肩まで伸ばした女性隊員。落ち着いていてしっかりしているようだがまだ16歳でマリーよりさらに若い。勤勉な性格をしていて知能も高く、煌ともまともな議論を交わす。立ち回りは常に堅実で、戦車の砲弾は両掌を高く挙げて包み込むようにキャッチするオーバーハンド方式で捕る。


三枝零足彼別奴さえぐさレタスキャベツ…………銀の竜鱗(シルバースケール)部隊の最下層、チームε(イプシロン)所属。ピンク髪のマッシュヘアで前髪が重く、ピンク色の瞳が常に半分隠れている。銀の竜鱗(シルバースケール)部隊の発足当時(=8年前)に15歳で入隊した今年23歳の最古参だが、序列は隊で一番低い。実力が無く集中力も無く、他人の話も聞けず努力もできないしでクビになっていないのがおかしいぐらいだが、時に物凄いツキを発揮して大きな手柄を上げることでギリギリ踏み留まっている。見かねた煌が傍に置いてお使い役を申し付けたりもしているが、一定時間が経つと受けた指示を全て忘れる。今と同じで何もできなかった三枝を採用した8年前に煌がそれについて言っていたのは〝可能性に期待している〟だが、8年経った今もその期待には全く応えられていない。長く大きな手足を見てきっと伸びるはず、と煌が予想した当時140cmだった身長は170cm超まで伸びたがただ大柄になっただけで能力面は全く成長しなかった。任務に支障が出るからと目にかかった前髪を切るか分けるかするよう煌に度々注意されているが、切った前髪は爆速で伸びてまたすぐ目にかかり、前髪を割って額を出すことだけは死んでも嫌。国内最強の部隊に身を置いていながら身だしなみさえままならない、特異な存在。自分は白騎士達(ホワイトナイツ)より弱いと言っているがこれは誇張で、実際には互角。単身の白騎士達(シルバーナイツ)に勝てない唯一の銀の竜鱗(シルバースケール)部隊員。無から生み出されし存在。

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