《ゆづ、異界に立つ》17/20 ゆづ、腹を決める
不意を打ちたいなら、静かに行うべきだな!─────『オーバーロード』
「目からドリル生やすねん」
とどすえちゃん先輩は言った。
「え、」「……ドリル?」
「そう。」
「また独特な例えですわね舞子……」
「あの……ここのな?」
と言いながらご自分の目の中程をちょいちょいと指差す。
「……瞳な?」
「そう。そこの真ん中からドリル生やして、突き刺す感じ」「見る物に」
「……」「……ドリルを、見る物に、」
言われた通りに瞳の中心をせり出す感覚で潰れた金網があるとされる方向を凝視してみても、特に視力補正のような効果は感じられなかった。
「……もっと、ありますわよ?簡単な説明」
「ほんとか?絶天」
「えぇ……」「要はね?子犬ちゃん」
「はい……?」
「煌アイ……Absolute Focusは眼球の動きとその裏にある筋肉の膨張を感じ取ってスイッチをONするんですの」
「……はい」
「眼球の動きで言えば下から上に軽く煽るような動きですわね。体感で言えば見る物に対して角膜を軽く斜め上に向けるような感覚」「……つまりはね?」
「……」
「上下の直筋の動きがキモになるわけ。下直筋はあえて弛緩させて上直筋で眼球をくいくい、と引っ張るんですの……もちろん斜筋は上下ともに弛緩させておいて?ここが一番難しい……と言うかコツがいるところですわね」
「……」
「臨床を重ねるうちに分かったのは、人間は内直筋と外直筋の連携を使わずにおくのが本当に苦手な生き物だということね……でも煌アイ」「……ほほ、失礼」「Absolute Focusの機能を最大化させるためにはその連携を切ることがとても重要な」
「絶天」
「ポイントになりますから、」「……はい?何ぁに?」
「ちょっと黙っててくれ」
「……」「……」「まっ、、、」
〝いいか?ゆづ〟と言ってアニカさんは左手の人差し指を立て、私の目の前に持ってきた。
「この指先を見てろ。何か……ここにトンボか何かでも止まってると思いながら」
「トンボ……なるほど」
「そう……目を離すなよ?」
言いながら左右に往復させたり、八の字を描いたりする。
「……うん、そうだなもっとこう、」「眼球の動きだけで追う感じで」
「……」「……」
「……そうそう、上手い上手い」
と言いながらアニカさんは体を左向きに捻り、フリスビーを投げるのに似た動作で潰れた金網があるとされる方向に向けて左手を切った。
「……」「おお?」
人差し指の先にイメージしていたトンボがアニカさんが手を切った方向に真っ直ぐ滑空していくような錯覚を覚えるのと同時に、視界の右側だけが魚眼レンズを覗いたようにずにゅぅ、と奥に向けて伸長していった。
「あ、す……」「……すごい」
「できたか?」
「はい、」「……お、おぉ、」
なおもズームされていく視界の端にぐしゃり、と花開くように潰れた金網の一角が映り
「(……あった!)」
と思った瞬間視界の伸長は止まった。
直観的に注意を向けるとともに、右側の視界はその一角を中心に捉えた。
「(……すーごい、これ)」「(超ハイテク片眼鏡、みたいな……)」
視界の右下には薄く〝Absolute Focus10-X9 is activated…〟の文字、右上にはいくつかの文字列と合わせて〝1.262km〟という表示があった。
「……」「見えた?」
「見えました!……すごいこれ、本当」
「ほほ……当然ですわ」
〝本当にすごいですよ、煌さん〟と言いながら振り返ると右目の視界は一瞬で切り替わり、左と同じ風景を映した。
「(……!本当にすごい、これ……)」
「まあほんとに……」「可愛らしい子」
「あたしは嫌いだけどな?これ」
「……何ですって?」
「頭痛くなんじゃん、これ」「多少便利でも絶対使いたくないね」
「……」「遠距離から狙撃されて死ねばいいんですわ……」
煌さんが専用ガジェットを使ってはめてくれたこのレンズ……〝煌アイ〟は本当にすごかった。
さっき見た金網が潰れたエリアを目で追うと自動でそこに焦点を当ててくれて、顔を真っ直ぐそちらに向けていなくても右側の視界の中心にその映像を映し出してくれた。
「大体さぁ、大丈夫なの?副作用とか」
「はぁ?ないですわよ、そんなもの」「あるわけないじゃありませんの」
「いやぁ……怪しいと思うなぁ。あんな無理矢理な視力補正かけて、脳に本来あるべきじゃない映像を見せてさぁ、」
「……」
「開発から何年よ?」
「……8年ほど」
「だろう?たった8年でそんな……」「副作用が出てくるならここからだと思うんだよなぁ」
「……」
「そこへいくとさぁ?例えば〇茎手術なんか信頼度高いわけじゃん?一見無理矢理な手術だけど、歴史はもう100年以上にも上るわけでさ。その間これといった副作用も報告されてないわけじゃん?」
「……」
「早過ぎたと思うんだよなぁ、市場に流すの。8年とかじゃ……」
「……」「どうして、女のあなたが流れるように〇茎手術を引き合いに出すんですの……?」
煌アイはおぼろ気ながら空気の流れも視覚的に捉えることができるようだった。
正確には空気中を漂う細かなチリの動きまで捉えられるというか……
それを意識しながら〝潰れた金網〟の付近を凝視しているとそこに近々で見た覚えのある、ある造形が浮かび上がった。
「……」「あの、」
「まあ一つの体験としてやらせてみたけど、やっぱゆづには着用控えさせようかな」
「それはあなたが決めることじゃないじゃありませんの」
「いやあたしはゆづの保護者として」
「あの、」
「……?」
「どうしたの?子犬ちゃん」
「……」
やっぱり、その形にしか見えなかった。
「……」「なんだ?どうしたんだゆづ」
「あそこ……」「あそこに、戦車ありません?」
「……」「……えぇ?」
と言いながら(煌アイを着けていなくて)見える筈もないアニカさんが手でひさしを作ってその方向を眺める。
「……戦車?」
「いや、ないない」「ないで戦車なんか」
と言いながらどすえちゃんが隣に来て、また軽く折った中指を右のこめかみに当てながら〝潰れた金網〟の方向を眺めた。
「(……あー、分かる、確かに見易そう)」「(視界安定しそうだわ、そのポーズ)」
「……どこよ?」
「あの……あそこ」「潰れた金網の上……」
「えぇ……?」
〝潰れた金網〟の上には、
……見たままを表現すると、〝透明な戦車〟が乗っていた。潰れた金網の上に乗り上げるように軽く角度をつけて停まっていて、砲身が中途半端に空を指していた。
もちろんぱっと見では気付かないけど、煌アイでしばらく凝視していると〝潰れた金網〟の上を舞う空気中のチリのどれもが一定の位置で落ちるか方向を変えるかしていて、それらのポイントを線で結ぶ意識で見ているとどう考えても戦車にしか見えない透明なシルエットが浮かび上がった。
「……え、ごめん。意味分からん……」
「まぁー……あなた方そんなことにも気付いてなかったんですの?」
「えぇ……?」「じゃあ」
「マジで言うてる?」
「そうですわよ、子犬ちゃんの言う通り。あの金網は戦車が乗り上げて押し潰したんですのよ」
確かに、見たところそんな感じだった。向こう側から走行して来た透明な戦車が金網に激突して押し潰し、その場で停車して立ち往生している……丁度そんな格好だった。
「……あー」「……ほんまや、おるわ、なんか」
「でしょ?」
「この木偶の坊はともかく舞子あなた本当に……」「何をやってるんですの?煌アイを着けていながら」
「……」「……」
「今日初めて装着した子にも後れをとるなんて……」
〝ねぇ?〟と言いながら煌さんは私の頭をガントレットを着けた手指の背で撫でた。
「……えへ////」
「本当、賢いわね、子犬ちゃん」
「ありがとう、煌さん……」
「うん……煌、増々欲しくなっちゃう……」
「……あ!」
と、どすえちゃんが遮るように大きな声を出した。
「……砲塔回転、砲塔回転、」
反射的に見ると、透明な戦車の砲塔が確かにゆっくりと回転し始めていて、中途半端な方向を向いて止まっていた砲身が明確な意思を持って上下運動を繰り返していた。
「狙いは……恐らくこちら方面」
「……うん、」「じゃあ子犬ちゃん、ちょっと離れてて?」
「え……煌さん?」
アニカさんの傍に寄って見ていると煌さんは銀のガントレットに包まれた両手を胸の前で合わせてガシャガシャと鳴らして準備運動しながら
「……ちょっと真っ直ぐ過ぎるわねぇ?舞子」
と言った。
「うん……これ多分、煌ちゃん」
「えぇ、上等よ」
煌アイで見ている透明な戦車は、確かに砲身を限りなく真っ直ぐこちらに向けているように見えた……まるで私達が今いるこの場を直で狙っているかのように。
「発射!」
とどすえちゃんが言うと同時に確かに爆炎を上げて砲弾を吐き出した戦車からは、何の音もしなかった。煌アイの右上の表示は〝1.258km〟……離れているとは言え遅れて聞こえてきてもよさそうな発射音の類は全く聞こえてこなかった。
射出された砲弾を思わず目で追うと今度は砲弾に焦点が合い、その表示が高速でカウントダウンされていく。
〝0.300km〟に到達した辺りで煌さんがだだ、と足を鳴らして飛び上がった直後に上空でゴン、という鈍い鐘の音のような音がし、皮膚をびりびりと揺らす衝撃波が広がった。
「……!!」
どす、と音を鳴らして着地した煌さんは小脇に戦車の砲弾を抱えていた。
拳銃の弾によく似たフォルムで後ろに放射状に羽を生やした砲弾は、尻から火を噴いていた。
「ふん、なかなか外して撃ってきましたわね……」
言いながら火を噴いている砲弾を両手で掴んで丸みを帯びているサイド部分に目を近付ける。
「うん……古い。お祖父様かお父様の時代のものですわ」
「鹵獲されたやつ?」
「えぇ……」「全く、始末に負えない」「熱っつい!!」「熱っつい熱っつい!!」
〝熱っついじゃないですのよ!!〟と言いながら煌さんは地団駄を踏み、砂の地面に火の消えた砲弾を投げ捨てた。
「……」「……」
「……」「……」
「はぁ、熱っつ……」「はぁ、」
「……」「……」
「……」「……」
「熱……」「何ァにを笑ってやがるんだ、あーた方二人は」
「……」「……」
「……」「……」
「お前達も」
と言って20人近くいるお仲間の方を振り返る。
私は笑ってない。地団駄を踏む煌さんのぷるぷると揺れる胸元と太腿の肉を、右目の煌アイを使って観察するので忙しかったから。
「……」「……煌ちゃん、次弾に備えんと」
とどすえちゃんが言い終わる前にどこか遠くでカン!という、今度は高い鐘の音のような音が響いた。
「何だ?」
「……砲撃ね。二人とも備えなさい」
煌アイで確認した透明な戦車は、さっき煌さんがキャッチした弾を放ったままの角度で砲身を固定させていた。
「(……違う、あれが撃ったんじゃない)」
高い鐘の音のような音は透明な戦車を向いて左側……つまり南側方面から聞こえた。砲身を真っ直ぐこちらに向けたままのあの角度だとそっちは狙えない。
「あたし取り敢えず潰してくるわ、その戦車。金網の上だよね?」
「……いえ、ちょっとお待ちになって」
「え?」
「銀の竜鱗、展開!」
引き連れて来た20人近い女性の集団に煌さんが号令をかけるのを聞きながら透明な戦車を見ていると、その向かって左側後方で爆炎が上がり、砲弾が射出された。
「……!?」
「砲弾発射!」
どすえちゃんが怒鳴った直後に、また南側方面でカン!という高い鐘の音のような音が鳴り響いた。
「扉を壊す気ですわね……」
射出された砲弾は、確かにここから南方向に見える〝ゴジラでも通るんじゃないかと思う扉〟か、あるいはその近辺の黒い壁に衝突していた。扉の様子を煌アイで確認するうちにまたカン!という高い着弾音が響く。
「β!γ!展開してこの近辺に飛来する砲弾を防ぎなさい!」
「……」「……」
「δとεは民間人の救護と避難!急いで!」
「……」「……」
続いて次々と飛来し始めた砲弾は、やっぱり何もない場所から射出されていた。金網を押し潰して停まっている透明な戦車のさらに後方数十~数百mのいくつもの地点から、音もなく爆炎だけが上がり砲弾が射出され続ける怪奇現象が起き続けていた。
何発発射されようとも、やっぱり発射音は聞こえてこなかった。ただ着弾音だけがカン!カン!と矢継ぎ早に鳴り響いている。
「……こちら第二皇室絶天煌。西の検問所に脅威多数。至急応援を乞う」
「……」「……」
「……ええ、取り急ぎ斬空隊を」「第五皇子の出陣願えますか?」
「……」「……」
「……」「第五皇子もう帰ったそうですわ」
「……大量にいんのか?透明な戦車ってのは」
「ですわね。増援が来るまで耐えましょう。」「あなたも砲弾を防いで?」
「何両ぐらいあるんだ?」
「……」
「絶天」
「……えぇ。」
「何両ぐらいあるんだ?戦車は」
「……」「ざっと、」
金網に乗り上げた透明な戦車は、繰り返し砲弾を放つうち正体を表していた。撃った以上隠れても無駄だと思ったのか砲撃が引き金になってステルス機能が外れる仕様なのかは分からないけど、アニカさんの研究所で私達が対峙したものと全く同じ外観をあらわにしていた。
「250~300程度」
「……」「……」
「あるいはそれ以上ですわね」
金網に乗り上げた最初の一両の後方に、膨大な数の戦車が続々と姿を表し始めていた。地平線を埋め尽くさんばかりに横に並んで、間断なく爆炎を上げ続けている。
「子犬ちゃん、どうする?」
と言いながら煌さんが、軽くステップを踏みつつ胴を回してこちらに向け飛んできた砲弾を蹴り返した。
がきん、という爆音と共に火花が散り、体を押す衝撃波が広がる。
「ひっ!?」
「……今からわたくしね、あの戦車どもを片っ端からブッ潰しに行くんですの」
「……」「えぇっ?」
「来る?一緒に。それとも、舞子と一緒に逃げる?」
「……」「……」
「どちらでもよろしくてよ?ただ逃げるなら今しかない」
「……」「……」
私は今間違いなく、戦争に巻き込まれていた。
遠くに見える巨大な扉はここからでも見て取れるぐらい細かく振動しながら、間断なく高い衝撃音を上げ続けていた。
煌アイのおかげで遠方に並ぶ膨大な数の戦車も、今やその全てがはっきりと見えていた。地平線を埋め尽くし間断なく爆炎を上げ続けているその戦車の大群は、どう見てもこの街を侵略し、そこにいる全ての人間を殺し尽くすつもりだった。
「……」「……」
場違いなのは分かっていたし、何かができるとも思わなかった。
でも迷わなかった。
ここを離れて、この人達のいない場所に行くことなんて考える気にもならなかった。
「行かせてください」
「……」「……」
「ついて行きます、どこにでも」
「……」「うん、いい子」
全く恐怖心を覚えないのは〝どうせ夢だから〟とか、そういう理由では多分なかった。
【登場人物・用語】
白河ゆづ…………煌アイを使いこなし始めている人。知能が高いので観察・分析系のツールを渡すと初見でも最大限活用する。地団駄を踏んだ煌の胸や太腿は直感的にスローモーションモードに切り替えて見ていて、実は録画されてもいたその映像をゆづはこの後の数年間で都合数千回は繰り返し観ることになる。
絶天煌…………煌アイをこの世で最も上手く使いこなす人。半径5kmを常に見通し、そこに踏み入った脅威を見逃さない。〝透明な戦車〟に関してもこの場に来る前にその存在を察知していて、アニカとM.E.K.A.舞子がそこに居合わせていることも知っていた。清楚系の淑女だが兵装を身に纏うと露出度高めの体育会系に変貌する。知能も随一だが実は運動神経も随一に高い。ほぼほぼ自分目線しかない人なので既知の事象に関する分かり易い説明とかは苦手。アニカを木偶の坊などと呼び決して名前で呼ばないが、そうする理由は〝そうしないとメス出ちゃいそうだから〟。柔和なアニカを相手に強めの態度をとっている女性は大抵アニカのことをそういう対象として見ている。ゆづに関してはシンプルな愛着を持って〝子犬ちゃん〟と呼び始めている。
〝煌.corp〟…………先祖代々経営してきた兵器開発グループ〝絶天財閥〟を煌が受け継ぐと同時にリブートさせた新生企業。社としてのテーマは〝攻める兵器ではなく護る兵器を〟。戦車や銃器、航空戦艦等を主に製造していた先代までに対し防護用装備や危険察知ツールをそのまま攻撃に転用するような製品が多い。〝女性にこそ戦う力を〟というのも裏テーマとしてあるが、その結果得たのは〝力を得た場合より残虐性を発揮して手に負えなくなるのは(男性よりも)圧倒的に女性〟という臨床データだった。自国に向けて振るわれる兵器の大半が鹵獲された元自国産のものである現状に〝これじゃあ自分で自分の国と戦争してるようなものですわ〟と憂い、〝鹵獲されない兵器を〟という裏テーマも打ち立てた。銀の竜鱗部隊の兵装はどれもオーダーメイドでなければ最大限効力を発揮せず、装備している物理武器もその兵装無しには持ち上げることも困難な程に重い。
銀の竜鱗部隊…………煌の号令に即応して一糸乱れぬ統率を見せつける部隊。総勢40名足らずの隊員が能力順にβ、γ、δ、εに組分けされていて、βとγは戦闘任務を、δとεは救護や補助任務を優先的に行う。煌がミスを犯した際には皆一様に遠い目をして一点を見つめる。
煌アイ…………正式名称はAbsolute Focus。普通はその名か〝レンズ〟みたいなそのままの名で呼ばれていて、〝煌アイ〟の愛称を使っているのは現状煌とゆづだけ。煌の手により試作品が完成したのが8年前、煌が18歳の時。その点強く留意して作られただけあって副作用の類はまだ報告されていないが、脳に無理矢理な視覚体験をさせているのは確かな話。肌に合うのかゆづが早くも使いこなし始めているが、その際ゆづの右目は先刻ドン引きした白黒反転の色味に変化している。末端価格は1枚で数千万円だが使用期限は半年で、それを過ぎると視力矯正の機能すら持たないただのビニール片に早変わりする。
アニカ・サンドルート…………煌アイに関してどちらかと言えば反対派の人。新規技術に関してはあくまで慎重に、長い時間をかけて一般には浸透させていくべき、という考え方。煌に対してずけずけと批判しているようだが〝科学者は互いに議論をぶつけ合って高め合っていくもの〟という考え方も固く持っている。唯我独尊で常に独力で完璧な答えを打ち出してきた煌とはこの点考え方が逆で、新規技術の一般化についても煌の方がより推進派。煌アイの使い方についてゆづにレクチャーできるほど熟知しているが、そのために使用した煌アイは末端価格数千万をちゃんと払って購入している。他人目線で物事を見ることに長けているので既知の情報を他人に分かり易く伝えるのが上手い。
京家M.E.K.A.舞子…………煌アイを使用し始めてそろそろ3年が経とうとしている人。煌アイを十分に活用できていないことに関して煌から注意を受けているが、戦闘や捕縛が専門なので偵察とか分析とかはそもそも得意ではない。物事の大半を直観と反射神経で片付けるタイプなので他人にものを教える時も〝サッと出てバッと来てビュンや〟みたいな独特な表現になることが多い。
〝ステルス戦車〟…………〝敵襲〟を仕掛けてきている某国が独自開発したステルス機能付きの戦車。消音機能も付いていて、走行音を始めとした戦車の立てるあらゆる音が周りに聞こえなくなる。煌アイを使えばギリギリ見破れないこともないが、〝潰れた金網〟みたいな切っ掛けが無ければそれも難しい。戦車が大破しかねないダメージを受けるか主砲を数発撃つかでステルス・消音機能共に解除され、自国に戻って再調整するまで再度使用はできない。はじめは首都の中心で行われた陽動戦に紛れて西の検問所に続く金網を全て押し潰し、そこを突破口に首都スレイトアール内になだれ込む算段だったが、戦車を故障させかねないほどに丈夫だった金網に負けてその場に留まり、首都衛壁の中でも比較的脆そうな扉部分を狙う作戦に切り替えた。煌がキャッチした最初の砲弾は国外にも顔の知られた煌個人を狙って放たれていて、仮に煌がこれにより死亡した場合スレイトアールの被る損害は甚大のその先だった。煌はステルス戦車について〝250~300両程度いる〟と言っているが後列のものも合わせると実際には450両を超えていて、これは煌やアニカでもさすがに青ざめるレベル。
第五皇子…………現スレイトアール王の五番目の子にあたる人物で、第三皇子であるジルの二つ下の兄妹。単身で国一つ落とせるレベルのとんでもない超能力を持っているが責任感がなく、今回のような国家の緊急事態にあっても自分の仕事を終えたらさっさと帰って自室に籠ってしまう。国政に携わる気が端からなく、人前に姿を現さないので一般には顔が知られていない。煌が戦車の群れを確認した際に第五皇子の出陣を要請したのはここに来る前にいた首都の中心部で戦闘に参加する第五皇子の姿を見ていたからだが、同じくそこにいて戦闘に参加していたジルに対しては何故か出陣を要請していない。今回偶然首都近郊に居合わせて〝敵襲〟に対処した皇子は第三皇子と第五皇子の二人だけ。




