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07娘ルミナの描く未来。魔導映画のその先へ

 カメラやプロジェクターの原理を思い出し、ルミナにレンズの焦点や光の取り込み方、映し出す際のフレームレート(コマ数)の概念を伝えた。現代教育とコンテンツは最強だ。


「お母様の言うフレームレートの概念を取り入れたら、もっと動きが滑らかになるわ!」


 ルミナは言葉をヒントに一度に多くの光と影を連続して記録し、それを高速で映し出すという画期的な方法を編み出した。さらに、音を記録する魔導具と映像を映し出す装置を連動させる。音と動きのある物語を作り出すことに成功。


 最初の試作品は工房の壁に映し出された、アランが薪を割る映像。これまでの静止画の魔導具とは全く違う。生き生きとした動きと薪が割れる乾いた音がする動く絵だった。


 映像にただただ感動。映画として有名なタイトルである、魔法物語はこうして生まれることになったのだ。


 ルミナは魔導の映画を子供たちに見せたいと考えた。国の伝説や民話を元にした短い物語を人形劇のように撮影、記録すしたものを。


 夕方、広場に大きな白い布を張り、初めての魔導の映画を上映。


 広場に集まった人たちは最初は半信半疑であったものの、光と影で描かれた物語が魔法のように動き出して音と共に目の前に広がると、感嘆の声を上げた。


 子供たちはスクリーンに映し出される物語の世界に夢中になり、大人たちは革新的な技術に目を奪われる。


「魔法みたいだ!」


「物語の中に本当に飛び込んだようだ!」


 ルミナの発明は人たちが物語を楽しむ方法を根本から変え、文化に新たな彩りをもたらしたのだ。

 誇らしい気持ちになる。記録ではなく、感情を揺さぶる物語を創造する才能を持っていた。


 コンロに続き魔導の映画という新たな革命を起こしたルミナ。彼女の才能はどこまで発展させていくのか楽しみだ。


 ルミナが発明した魔導の映画は、瞬く間にこの国の文化に深く根付いた。最初のうちは短い物語や風景を映し出すだけだったが、ルミナの探究心と魔導士たちの協力によって技術は驚くべき速度で進化を遂げたのだ。


 記録媒体の改良。以前は魔石に記録していたが、ルミナはより高密度で長時間記録できる新しい結晶体を開発した。長期保存可能のもの。

 これにより、長編の物語を映し出すことが可能になった。さらに、カラーの再現技術も向上させ、より鮮やかで奥行きのある映像表現を実現。前世の時代よりも早い発明の進化。音響技術の進化に手をつけた。


「ルミナ、お茶しましょう」


「待って、お母様、もう少しだけ」


 音を記録するだけでなく、登場人物のセリフや音楽を独立して記録して映像と同期させる技術が、確立されれば物語の感情表現が格段に豊かになり。

 観客はその場にいるかのような臨場感を味わえるようになった。


 技術革新が魔法と組み合わされると、こんなに早いのかと目を丸くするばかり。最も画期的だったのは、複数の記録装置を使って様々な視点から撮影と記録をする技術の確立。


 観客自身が物語の中に入り込んだかのような、より没入感のある映像体験を提供できるようにまでなる。

 ルミナはこれを多角視点記録と名付けた。実は長い横文字を無しにしたのは、セレスティーナだ。


 覚えられないくらいの、名付けをされかけていた。セレスティーナの考えうる、魔導映画館の誕生と社会の変化はすぐにやってくる。

 魔導の映画の人気が高まるにつれて、ルミナは専用の施設が必要だと考えた。母親がそっと囁いたとかなんとか。


 娘の夫のカイン侯爵の協力を得て、この国で最初の魔導映画館が建設された。大きなスクリーンと快適な座席。最新の音響設備を備えた映画館は、連日多くの人たちで賑わう。


「デートで映画なんて素敵ね」


「私も誘っていきたいわ」


「僕らも行こう」


 映画館の誕生は周りの人たちの生活に大きな変化をもたらした。今までの物語を楽しむ手段は、本を読むか旅芸人の芝居を見るくらい。

 映画館では手軽に、大勢で壮大な物語を体験できるようになった。映画の題材も多岐にわたる。古の英雄たちの伝説。遠い異国の文化。


 日常のささやかな出来事を描いたもの。あらゆるジャンルの物語がスクリーンに映し出された。映画を通して新たな知識を得たり、異なる視点から物事を考えたりするように。


 ルミナが力を入れたのは教育用の魔導映画。歴史上の出来事や科学的な現象。遠い国の地理などを、映像と音で分かりやすく伝えることで子供たちの学習意欲を飛躍的に高めることができた。

 娘の映画は教育制度にも大きな影響を与え、識字率の向上にも貢献。


「タイトルは魔法使いとエブリデイか魔法使いとリージョンか、魔法使いとマザーか。マザーオアパピーか」


 セレスティーナは密かにタイトル名を考えていた。


 ルミナは普通の発明家ではなく物語の力を通して心を豊かにし、社会をより良い方向へと導く文化の創造者となっていった。


 大会社の社長並みの影響力。セレスティーナは夫のアランと共に、そんな娘の活躍を誇らしく見守っていた。

 シナリオを捻じ曲げ、娘が無実の罪で断罪されたあの頃からは想像もできない。輝かしい未来。

 ルミナの描く未来はどこまでも明るく、家族の人生にも、尽きることのない喜びを与えてくれる。


 映画監督に転身を受け入れるほどに。

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