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04夫の祖国へ新たな旅立ち。愛と安らぎに満ちた新天地。王子たちの自業自得で店は大繁盛

 ルミナが追放を言い渡されたその日、夫のアランに全てを話した。世界がゲームであること。悪役令嬢として阻止するために行動したこと。

 ルミナが無実であること。信じてもらえなくても構わない。アランは驚きながらも、話を最後まで真剣に聞いてくれた。


「セレスティーナ。君を信じる。ルミナも何もしていないと信じている。国がルミナを拒絶するのなら、私たちには守れる場所が他にあるし。そこへ移動すればいい。いいね?」


 アランが提案してくれたのは彼の故郷。祖国が遠い国の出身とは聞いていた。この国では身分を隠して司書補佐として働いていたが、実は祖国では由緒ある家柄の次男だったのだという。


「え?」


「うーん、なんだかすまない。この国では無爵位なのは嘘じゃないから」


 数日後の夜、家族を連れて密かに国を去った。娘のルミナは最初は不安そうだったけれど。ルミナの祖父母たち、自分の父や母には申し訳ないけれど、国の総意のようなものだろうから。捨てられたようなもの。いらないと叩きつけられたもの同然。


 娘はアランとセレスティーナが傍にいることで、少しずつ笑顔を取り戻していった。



 乗り継いで辿り着いたアランの祖国は緑豊かな美しい場所だった。暮らす人は穏やかで異邦人である母娘に温かく接してくれる。


「パン、美味しいです」


「セレスティーナさんはお上手ねえ」


 アランの家族も心から歓迎してくれる。


「お父様、ちょっと横に動かして」


「ルミナ、これはどうだい?」


 ルミナはここでは誰からも恋人たちの恋を破ろうとする令嬢、と呼ばれることはない。酷いなんてものではない。割って入ってきた順番がまず違うのに。

 婚約は契約であり、そこに途中で入ってきたのはあちらなのにとセレスティーナは憤った。


 娘は好きなだけ本を読み、庭で花を育て夫のアランから娘は国の歴史や文化を学んだ。

 あっという間に無邪気な笑顔で時にはこちらに甘え、時にはアランと楽しそうに話すルミナを見ていると安らぎで満たされる。


 安堵の笑みが浮かぶ。夫婦はこの地で新たな家を築き、ルミナを愛情いっぱいに育てた。ここでなら穏やかに生きていけると娘は過去の理不尽な断罪を乗り越え、新しい国で自分らしく輝き始めた。

 見るたびに口元がほころぶ。国では誰も貴族の家として見ない。令嬢、夫人扱いしない、一人の人間として扱ってくれる。愛し合い、支え合う家族としてここにいられるのだ。


 転生者セレスティーナ・ロドウェイは娘のルミナと共に夫アランの故郷で静かに暮らしていた。愛しい子は無実の罪で断罪された過去を乗り越え、自分らしく輝いている。


 好きに過ごせているのだ。フフフ、とソプラノを奏でる一因は他でもない現在住む場所で始めた、営むお店にあった。

 アランの家族は以前からこの故郷で小さな工房を営んでいたのだけれど、彼は手先が器用で木工品や精巧な細工品を作るのが得意だったのである。


 日本での知識を持ち込むと作る品々にデザインの工夫を加え、さらには顧客体験という概念を取り入れてお店を工房から安らぎと発見の場所へと変貌させた。セレスティーナが。


 例えば、木製の箱ではなく開けるたびに異なるアズール色の輝きを放つ、星屑の宝石箱を考案したりした。使う人の心の状態に合わせて、色が変わる感情の花のオブジェを作ったりなど。瞬く間に評判を呼び、お店は連日大勢のお客さんで賑わうまでに。


 素晴らしい、素敵、また買いたいと言われるようになった。祖国であるあの国の王子たちは今なにをしているか、なんてちっとも思い出せなくなっていた。


 一方で、婚約破棄を突きつけられ、去った倫理観のない国では大変なことになっていたようだと、噂で耳に。情報は知り合いの侍女が密かに手紙を送ってきてくれるから得られた。


「セレスティーナ様! こちらの国では、大変な騒ぎになっておりますわ!」


 なんて内容から始まる。手紙によるとルミナが断罪されたことで、王子たちの評判はガタ落ちになったそう。

 当然の流れだ。無実の罪で貴族の子供を追放した、と貴族社会だけでなく一般市民の間でも大バッシング。


 やらかしたことが再び罷り通ったら、他の人たちも他人事じゃなくなるから。同じ目に遭うかもしれない恐怖は他人事なんかじゃない。


「王子様たちは、なんてひどいことをするんだ!」


「素晴らしいご令嬢だったルミナ様が、なぜあんなことをされないと」


 皆がヒソヒソ言う。以前、王家は彼らのいとこなどを地下牢送りにしたこともあり、寄家や同じ派閥の者達はもともと世間からの信用をかなり失っていた。回復を必死にしようとする親世代の心知らずの行動。


 追い打ちをかけるように、無実の娘を断罪したことで権威は地に落ちたわけだ。さらにルミナが去ったことで、学園での謎のトラブルが多発するようになったと聞きく。


「ルミナ様がいなくなった途端、学園で問題ばかり起きるようになったと噂されていますわ。殿下方は対処に追われ、毎日疲弊しているようです。他にも色々あって」


 おそらくルミナを陥れようとした真犯人たちのターゲットがいなくなったことで、別のターゲットを見つけてトラブルを起こしているのだろう。

 もしくは、ルミナというメインストーリーの悪役がいなくなったことで、ゲームのシナリオ自体が大きく狂ってしまって予期せぬ問題が、続出しているのかもしれない。


 学園の生徒たちは以前なら王子たちに助けを求めていたはずなのに、今では。


「どうせろくな解決策も出せないくせに」


 無能扱いで冷ややかな視線を向けているそうだ。


「殿下方は学園内の問題も解決できず国民からの信用も失い、四面楚歌の状態だとか」


 評判は地に落ち、貴族社会でも嘲笑の的になっているとのこと。正当に評価されるようになってよかったではないかと笑った。自業自得という言葉がこれほど似合う状況もない。声に出してくすくすと喉を震わせる。

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