36来月、街で収穫祭があるでしょう?お祭りの最後に花火を打ち上げてみてはどう?
ドカン、ドカンと。ルミナは様々な魔導素材を組み合わせて、光の色の研究に没頭。
「魔力凝縮結晶、光は綺麗なのだけど、音が小さすぎる。もっと大きな音を出したい」
「結晶の構造をもう少し工夫して、音の反響を大きくしてみるか?」
光の色が期待通りにならなかったり、打ち上げ装置が不安定になったりすることもあったが、一つ一つの課題を知恵と力を合わせて解決していく。
「花火が完成したら夜のお祭りも華やかになるわ」
未来の夢を語るように言う娘に笑う。
「花火は国の夜空を明るく照らすはず。遊園地の夜のイベントにも、彩りを添えることができる」
「見てください! 魔力凝縮結晶、完璧な色と音が出ますよっ」
興奮した声がアランの工房から響いてくる。彼女の手のひらには光を放つ小さな結晶。様々な色の光と、それを打ち上げた時に響くであろう音を想像するだけで理解できる。
「とっても素晴らしい。これなら、きっと夜空を彩るものになるわねっ」
感動のあまり声を震わせ、アランも満足そうに頷く。
「打ち上げ装置も最終調整を終えた。安全性は最大限に考慮したつもりだ。あとはどこで打ち上げるか、だな?」
アランの言葉に顔を見合わせるのは、初めての花火をどこで打ち上げるか決めるため。国の歴史に残る記念すべき瞬間となるだろうから。
「来月、街で収穫祭があるでしょう?お祭りの最後に花火を打ち上げてみてはどう?」
ルミナが素晴らしいアイデアを提案してくる。収穫祭は街の人たちにとって、一年で最も賑わうお祭り。
花火を打ち上げることができれば、きっと大きな感動を与えることができる。グランドフィナーレに最適解。
「素晴らしいアイデアだぞルミナ! 陛下にも打診してみようじゃないか」
アランもルミナの提案に賛同し、すぐに国王陛下に謁見を願い出、収穫祭での花火打ち上げ計画を進言。国王陛下も花火に大きな期待を寄せ、快く許可してくれた。
今までの功績の積み重ねのお陰だ。収穫祭に向けて街は活気づき、お祭りの広場には色とりどりの屋台が立ち並び、周りは楽しそうに準備を進めている。特に夜空を彩る花火への期待が街全体を包み込んでいた。
「セレスティーナ様、本当に夜空に光が咲くのですか?まだ誰も見たことがない、は、はな?花火、とやらを!」
祭りの準備を手伝っていた老婆が、目を輝かせながら話しかけてきたので頷く。
「ご期待ください。皆様の心に残る、素晴らしい光景をお見せできるはずです」
自信を持って宣言。花火の打ち上げ場所は街を見下ろせる小高い丘に設定。アランは打ち上げ装置の設置と周辺の安全確保に奔走。
ルミナは花火の打ち上げ順序や色の組み合わせを細かく調整し、最高の演出ができるよう準備を進めていた。
収穫祭の夜。祭りの賑わいが最高潮に達した頃、司会者の合図と共に全ての明かりが消される。街の人は固唾を飲んで夜空を見上げた。始まるものに期待をして。
「皆様! 我々が開発いたしました、夜空を彩る光の魔法をご覧ください!」
ルミナの感動に満ちた声が響き渡ると同時に、最初の花火が打ち上げられた。合図共に。
──バァン!
──バァン!
ヒュルヒュルという音を立てて上昇した光が夜空でパーンと弾け、鮮やかな赤色の光の玉が大きく広がった。
「わあぁぁぁ!」
国民達のどよめきと歓声が上がる。続いて青、黄、緑と、色とりどりの光が次々と夜空に咲き誇り、一つ一つの花火が異なる形や色で夜空を飾り、夢中になってそれを見る。肩車される子供も手を伸ばして触ろうとする。
「すごい! 宝石が降ってくるみたいだ!」
「なんて美しいんだ」
子供たちは興奮して跳びはね、大人は感動のあまり、ただただ夜空を見つめるばかり。クライマックスには無数の花火が一斉に打ち上げられ、夜空は昼間のように明るく幻想的に彩られる。
フィナーレを飾るのは月の雫紅茶をイメージした、優しいピンク色の光の花火。夜空に咲き誇った瞬間、皆が再び大きな歓声を上げ、温かい拍手が夜空に響き渡った。
花火が終わった後も興奮冷めやらぬ様子で、感動を語り合っているのを見て花火が心に忘れられない思い出を刻むことができた、という喜びで満たされる。
「花火、大成功だったわ。みんな、本当に喜んでくれたのね」
ルミナが手を握り、涙ぐみながら言う横でアランも満足そうな顔で隣に立つ。
「これもどれもアランとあなたがいてくれたからこそ。本当にありがとうね」
二人の手を握り、感謝の気持ちを伝えていく。余韻の火薬の匂いは子供達が大人になっても、夜空の思い出としての記憶と共に刻まれていることだろう。
*
「ふふ、見て! 花火の図案、隣の国の王女様が送ってくださったの! 今度の独立記念祭でぜひ打ち上げてほしいらしいわよ」
ルミナの弾んだ声が朝のふわふわ亭に響き渡るその手には、色鮮やかな花火の設計図が広げられていた。
夜空を彩る花火は国だけでなく、隣国にまでその名を轟かせ外交の場でも注目されるまでになっていたらしい。
「光栄だわね」
心から喜びを分かち合う。アランも花火の量産体制をさらに強化し、工房は常に賑わうことに。
「お母様、今度の打ち上げは隣国の王都の大きな広場で行うそうよ。私たちも、ぜひ一緒に来てほしいって」
少し興奮気味に言うことは異国の地での花火打ち上げ。それは嬉しい。即座に頷く。
「素晴らしいわね、新しい場所で花火を打ち上げられるなんて」
「セレスティーナいいことだ。異国の地となると魔導具の持ち込みや、現地の法令など確認すべきことが多くなるだろうなぁ」
アランが現実的な課題を指摘するのはもっとも。
「大丈夫よアランお父様。カイン侯爵が向こうの王家との調整を全て行ってくださるそうだから。私たちは最高の花火を打ち上げることだけを考えればいいって」
ルミナが力強く言う。カイン侯爵の協力があればどんな困難な課題も乗り越えられる。早速、異国の地での花火打ち上げに向けて準備を始めた。
アランは運搬中の衝撃にも耐えられるよう打ち上げ装置の梱包方法を改良し、花火の製造に一層力を入れる。ルミナは隣国の文化や歴史を学び、喜ぶような特別な花火の演出を考案。
「隣国の国花である青い星の花をイメージしてみたの。夜空に咲く青い光の花、喜んでくださるわよね?」
ルミナが新たな花火の設計図を見せてくれ、創造性は常に想像をはるかに超えていく。
「隣国の人たちも感動してくれるわ」




