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29事件解決。国王陛下はベルンハルト侯爵の行いを深く嘆き、厳罰を下す。セシリア公爵令嬢の潔白は証明され名誉は回復

「お母様、告白本当に衝撃的だったわ。ベルンハルト侯爵がそんな悪事を働くなんて……ね」


 ルミナが不安げな表情で話しかけてきた。ふわふわ亭が閉店した後に厨房の奥で、ベルンハルト侯爵の企みを阻止するための作戦会議を開く。アランも真剣な顔で話に耳を傾けている。


「ええ。だからこそ、動く必要がある。警察だけでは、貴族の闇には太刀打ちできないかもしれない」


 アランが口を開く。


「どうやってベルンハルト侯爵の企みを暴く?手紙は盗まれてしまっている。セシリア様が犯人だと偽装する痕跡も残されているのだろう?」


 問いはもっとも。証拠がなければどんなに真実を知っていても、侯爵を罰することはできまい。


「ええ。だからこそ証拠を見つける必要がある。秘密の書簡の写し、あるいは内容を裏付ける別の証拠を」


 頭の中で培った情報収集と推理のスキルをフル稼働させる。


「カインに協力をお願いしてみるわ! 彼なら、王宮の書庫にある古い文献の中から秘密の書簡の内容を裏付ける手がかりを見つけられるかもしれない」


 ルミナが力強く言う。カイン侯爵は王宮の書庫の管理も任されており、古い文献に非常に詳しいため、この上ない協力者。


「素晴らしいアイデア。 彼なら、きっと私たちを助けてくれるはず」


 提案に賛同。早速ルミナはカイン侯爵に連絡を取り、事の経緯を説明してみた。カインは驚きを隠せない様子だったものの、助けを求める声に快く応じてくれる。


 翌日、カイン侯爵から早速朗報が届く。


「セレスティーナ様、ルミナ。秘密の書簡に書かれている内容の一部が、別の古い文献にも記載されているのを発見したぞ。非常に断片的な情報でこのままでは証拠にはならないが」


 少しがっかりしたがそれでも、一筋の光明が見えた。断片的でも秘密の書簡の存在と内容を裏付ける手がかりになるはず。


「ありがとう、カイン。それでも十分。文献に書かれている内容とセシリア様が教えてくれた情報、アランが見つけてくれたハーブの情報を組み合わせれば、ベルンハルト侯爵の不正を暴くための強力な証拠となるはず」


 頭の中で散らばっていたピースが、少しずつ繋がり始めていくのを感じる。


「ベルンハルト侯爵が、秘密の書簡を盗ませたことを証明する決定的な証拠だけ」


 厨房の地図を広げ、事件現場、ハーブの場所、ベルンハルト侯爵の屋敷。これらの位置関係を何度も確認する。


「セレスティーナ、何か閃いたのかい?」


 アランが様子を見て尋ねる。いつも気付いてくれる人だなとほわほわした。


「ええ。ベルンハルト侯爵はわざとハーブを残して、セシリア様を陥れようとした。ハーブは彼自身の足跡ともう一人の犯人の足跡を隠すための目くらましでもあるのではないかしらって」


 アラン達は目を見開く。


「とすると、ベルンハルト侯爵がそのハーブを植えた瞬間を誰かが見ていた、あるいは、ハーブの種を侯爵が手に入れた証拠を見つけられれば……?」


 ルミナが推理に続くように言う。まさにその通り。


「そうよルミナ。ハーブは珍しい種類だと言っていた。きっと、どこかの特定の植物園か特別な取引ルートからしか手に入らない」


 すぐにハーブの流通ルートを調べることに。アランは彼の持つ広範な人脈を使い、植物に詳しい商人や、薬草師たちに情報を集めてくれた。


 数日後、ついに決定的な情報がもたらされ、ハーブは国でもごく一部の植物園でしか栽培されておらず、最近植物園から大量の苗がベルンハルト侯爵家の関係者によって購入されていた、という証言が。


「全てのピースが揃った! ベルンハルト侯爵は秘密の書簡の盗難を指示し、罪をセシリア様に擦り付けようとした。証拠隠滅のためにわざとハーブを残したのだと!」


 確信がこもる。集めた証拠を全てまとめ、カイン侯爵を通して国王陛下に謁見を願い出す。

 国王陛下の前でベルンハルト侯爵の不正と、セシリア公爵令嬢に仕組まれた罠の全貌を、冷静かつ的確に説明していく。


 アランが見つけてくれたハーブの証拠、ルミナとカインが発見した書簡の裏付け、セシリア自身の証言によって一つ一つ裏付けられていった。

 ベルンハルト侯爵は全ての証拠を突きつけられ、ついに自身の罪を認めざるをえなくなる。


 国王陛下はベルンハルト侯爵の行いを深く嘆き、厳罰を下す。セシリア公爵令嬢の潔白は証明され、名誉は回復。

 事件が解決した後、セシリアはふわふわ亭に来ると顔には以前のような怯えはなく、穏やかで感謝の念に満ちた笑顔が浮かんでいた。


「セレスティーナ様、本当に感謝いたします。貴女様がいなければわたくしは、今頃どうなっていたか」


 セシリアは深々と頭を下げた。


「いいえ、セシリア様。あなたが真実を話してくださったおかげよ。それに、私にとっても謎を解き明かすことは、大きな喜びでしたからねぇ」


 ふふ、と声を出して微笑んで答えた。穏やかな日常に刺激を与え、ベルンハルト侯爵の事件を解決できた。

 セシリア様との和解も果たしたあと、再びまろやかな日常へと戻っていく。ふわふわ亭は相変わらず大盛況で、カウンター越しに、お客様の笑顔を眺める毎日。


 心には新たな好奇心が芽生え始めていた。いけないことかもしれないけれど、一度味を知ってしまったから。

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