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19店の宣伝用のCM制作の監督になることにした

「いらっしゃいませー!」


 ルミナの元気な声が朝のふわふわ亭に響き渡る。開店して数ヶ月が経ち、お店はすっかり街の顔になっていた。今や、近所では知らない人などないない。


「お母様、今日の生地も最高よ! ふわふわ具合が今までで一番だわ!」


 ルミナが焼き台の上でふっくらと膨らむパンケーキを見つめながら、話しかけてきた。


「本当にね。あなたの腕もますます上がったのよ」


 ルミナは誇らしげに胸を張る。


「ふふん! お母様から教わったんだもの! コンロと焼き台のおかげよ。お父様が作ってくださったおかげで、毎日こんなに美味しいパンケーキが焼けるんだから!」


 奥の工房からはアランが新しい木の型を削る音が聞こえてきて、彼もお店の成功を心から喜んでくれているのがわかる。


 次々に新しい型を作るのだから。


「セレスティーナ、ルミナ! そろそろ新しい蜜の準備ができるぞ!」


 アランの声が響き、ルミナが目を輝かせた。


「わあ! 今度はどんな蜜かしら、お父様!」


「すみません、いつもの陽光パンケーキを二つと、子どもには森の果実パンケーキを一つお願いします!」


 常連客の家族が笑顔で注文してくれる。彼らは毎週のように朝食を食べに来てくれる、大切なお客。


「はい、かしこまりました! 今すぐお作りしますね!」


 ルミナが手際よくパンケーキを焼き始め、お客さんの子供が、テーブルで孫と楽しそうに遊んでいるのを見つめる。


「おばあちゃま! 私今日、お店のお手伝いする!」


 孫が小さなエプロンを引っ張りながら、足元に駆け寄る。


「あら、偉いわね。じゃあ、お皿を並べるお手伝いをお願いできるかしら?」


 孫は嬉しそうに頷き、ルミナの妹。セレスティーナの末娘を乗せたベビーワゴンを押し始める。末娘も姉の声に合わせるように、にこにこと笑う。


「あはは! お兄ちゃん、ちゃんと押してね!」


 ルミナが笑いながら、焼きあがったパンケーキを皿に盛り付ける。その間に話しかけられた。


「お母様、本当にパンケーキのお店を開いて良かったわね。みんながこんなに笑顔になってくれるなんて」


 ルミナがふと感慨深げに言う。


「ええ、本当にそう思うわ。温かさ、みんなの笑顔が私の一番の宝物よ」


 店の窓から差し込む朝の光を浴びながら、心の中で考える。こんなにも満たされた日々を送ることになるなんて。

 お店が落ち着き、家族はそれぞれの時間を過ごす。アランが温かいコーヒーを前に置く。


「セレスティーナ、君がいてくれて本当に良かった」


 彼の優しい言葉に笑う。お茶を飲む。


「お店のパンケーキ、もっとたくさんの人に知ってもらいたいわ。私、魔導映画の技術を使ってお母様の昔言っていたCMを作りたい」


 ルミナが目を輝かせながら、突然とんでもない提案をしてきた。朝のふわふわ亭は、いつものように甘く香ばしい香りに満ちていたが、熱意は香りをも凌駕する勢い。


「CM?ルミナ、それはまた壮大な計画ね」


 驚きを隠せない。宣伝という概念が薄く、映像を使ったCMなど聞いたことはない。


「そうなのよ! 映画の技術を応用すれば、きっとできるわ! お母様、監督はお願いね! 私ももちろんお手伝いするから!ふふふ」


 ルミナは母たる自分が魔導映画の監督をしていることを知っているので、監督の座を押し付けようとしている。


「まあ、監督を?どんなCMを作るつもりなの?」


 尋ねると胸を張って言う。


「もちろん、ふわふわ亭のパンケーキの魅力を最大限に引き出すCMよ! まずはねぇ」


 アランも交えてCMの企画会議を始めた。


「やっぱり、一番伝えたいのはパンケーキのふわふわ感と、食べた時の幸せな笑顔」


 腕を組みながら頷く。


「そうねえお母様。あとは、朝食にぴったりだということも強調したい。朝、ふわふわ亭のパンケーキを食べて、一日を元気に始める、みたいなイメージかしらね」


「なるほど。じゃあ、映像は朝日が差し込む店内で、家族がパンケーキを囲んで笑っているシーンから始めるのはどうだ?」


 アランが彼の持つ穏やかな感性でアイデアを出してくれる。


「いいわねお父様! 子どもたちがパンケーキを頬張って、口の周りにクリームをつけているような愛らしいシーンも入れたい」


 さらに具体的にイメージを膨らませていく。


「ああ、それすごくいいわね! 最後にふわふわのパンケーキが、ゆっくりと宙に浮いて、ふわっとお皿に乗るような魔法の演出も入れてみたらどう?」


 冗談めかして言うと、ルミナは真剣な顔で考え始めた。


「それはっ……できるわ。特殊な魔導エフェクトを使えば、きっと! 技術を使えば可能だと思う」


 思わず笑ってしまう。ささやかなアイデアが、彼女の手にかかると現実のものとなってしまうなぁとほのぼのとなる。


「じゃあ、キャッチフレーズはどうする?短くて、覚えやすくて心に残るもの?」


 問いかけるとコーヒーを一口飲み、ふと思いついたように言う。


「一日の始まりはふわふわの幸せから、なんてどうだい?」


「あら、素敵! アラン、あなたもなかなかやるわね」


「ふわふわの幸せ。最高のキャッチフレーズだわ」


 皆も大喜び。こうして、ふわふわ亭のCM制作が本格的に始まる。監督はセレスティーナ。映像技術はルミナ。美術やセット、小道具はアランが担当。


「明日はいよいよCM撮影の本番。寝坊しないように、今日は早く寝ましょうね」


 ルミナが子供のように興奮した声で、念を押してくる。自分も初めてのCM監督という大役に胸が高鳴っている。


「分かっているわ、ルミナ。でも、あなたこそ、興奮しすぎて眠れなくならないで」


「大丈夫よ。最高に美味しいパンケーキのセットを作ってくださったから、撮影が楽しみで仕方ないの」

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