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18ふわふわ亭でモーニングはいかがですか?

 彼は言葉の端々から、必要な道具や材料のヒントを見つけ出すのが得意だ。頼りになる。


「膨らませる粉、か……前に、あんこを滑らかにする時に使った魔法の粉と似たようなものか?」


 問いかけられた。彼は重曹、食用ソーダをそう呼んだのを覚えていたのだろうな。


「そうよアラン。まさにそれ! 粉をもう少し調整すれば、パンケーキにも使えるかもしれない」


 失敗と発見は日々の試行錯誤。それからの数日間、キッチンはパンケーキの試作で大忙し。アランは、以前あんこ作りに使った魔法の粉の比率を変えたり、新しい白い粉を探したり。


 ルミナは説明を元に牛乳の代わりに別の乳製品を使ってみたりして、卵の泡立て方を変えてみたりと様々な工夫を凝らす。


「あーあ、また焦げちゃった……」


「生地は焼くとぺちゃんこになってしまうの」


 失敗作の山が積み重なっていく中で、パンケーキ作りの記憶を必死に辿る。混ぜ方、休ませる時間、焼き加減。

 全てが材料と道具に合わせて、微調整が必要だ。ルミナがふと思いついたように述べた。


「お母様!泡立つ蜜(卵白を泡立てたもの)を、もっとたっぷり入れてみたらどうかしら?それを混ぜることで、ふわふわになる気がするわ!」


 ハッとした。メレンゲの概念。


「ルミナ! それよ! 天才ね、あなた!」


 最高の朝食に近づけただろうか。ルミナのアイデアを取り入れ、最後の試作に取り組み、卵白を泡立てて作った泡立つ蜜を生地に混ぜ込むと、驚くほど軽やかでふんわりとした生地ができた。

 アランが以前どら焼きのために作った特製の焼き器を熱し、上に生地を流し込む。


「わあ、膨らんだわ。見て見て! ふわふわだわ!すごーいっ」


 ルミナが興奮した声を上げるのを聞き、焼けるにつれて甘く香ばしい香りがキッチンいっぱいに広がる。

 焼きあがったばかりのパンケーキはこんがりと焼き色がつき、見るからにふっくらとしていた。特産である蜜をたっぷりかけ、新鮮な果物を添えていく。


「さあ、みんな、できたわよ。新しい朝食、パンケーキ」


 男たちやルミナ、孫たちが食卓に集まって、一口食べるとみんなの顔に笑顔が弾けた。


「美味しい! 口の中でとろけるわ!」


「甘くてふわふわ! こんなに美味しい朝食、初めてだわ!」


 孫たちも小さな口いっぱいにパンケーキを頬張り、嬉しそうにする。


「うまい」


「義父上、お肉を乗せるとよいのでは?」


「そうなると酒にも合うな」


 新たな朝食の定番となる予感がした。


「お母様!パンケーキ、お店で出したら、きっと大人気になるわ! 夏だけのアイスクリームと違って一年中、いけるわよ!」


 ルミナがパンケーキを頬張りながら目を輝かせて言う。パンケーキの優しく温かい味は、皆を笑顔にできるはず。


「そうねルミナ。パンケーキは今後の朝食を変える力があるかもね」


 アランも優しい笑顔で頷く。


「甘さはきっと老若男女問わず愛されるだろう」


 こうして、成り行きでパンケーキ専門店を開くことに。お店の名前はパンケーキの最大の特徴であるふわふわな食感にちなんで、ふわふわ亭と名付けられた。お店の準備は家族総出のプロジェクト。


「お母様、お店の雰囲気はもっと温かくて、朝の光が差し込むようなデザインがいいわ! 壁の色は優しいクリーム色で、木目を生かした家具を置きましょう!」


 ルミナは内装のデザイン担当を申し出てくれ、魔導映画の美術設定で培った色彩感覚と空間構成のセンスを遺憾なく発揮される。


 心地よい空間をデザイン。


「任せてくれ、セレスティーナ。パンケーキを最高の状態で提供できる、特別な焼き台を作ろう。熱が均一に伝わり、焦げ付かないように、最高の金属を選んでくるよ」


 アランはパンケーキを焼くための専用の鉄板と効率的に加熱できるコンロを設計、製造。精巧な職人技が、ふわふわのパンケーキを大量生産するための基盤を築く。


 自身は様々な種類のパンケーキのレシピを考案。甘い蜜をたっぷりかけた定番のパンケーキ、季節の果物とクリームを添えたもの。特産であるチーズやハーブを使った、食事系のパンケーキも開発。


「蜂蜜を煮詰めて作ったソースと陽光の実のジャムを合わせたら、きっと最高のハーモニーになるわね」


 厨房では親子が連日、様々なトッピングやソースの試作を繰り返す。孫たちも小さな体で一生懸命、手伝いをしてくれる。


 数ヶ月後。ふわふわ亭は温かい木のぬくもりと、甘く香ばしいパンケーキの香りに包まれてついにオープン。


 開店初日、店の前には朝早くから長蛇の列ができていた。周りは店から漂う甘い香りに誘われるように、期待に満ちた表情で並ぶ。


「いらっしゃいませ!」


 自分とルミナが焼きたてのふわふわなパンケーキをお客さんたちに提供すると、誰もが甘さと口の中でとろけるような食感に驚きと笑顔を浮かべていく。


「こんなに美味しいパンケーキ、初めて食べたわ!」


「朝からこんなに幸せな気持ちになれるなんて!」


「毎日でも食べたい」


 お客さんたちの歓声が店中に響き渡り、ふわふわ亭はあっという間にこの街の新しい名物となる。

 ふわふわ亭のパンケーキを食べると、一日が明るくなると口々に言うようになった。朝の光が差し込む店内で、焼きたてのパンケーキの香りに包まれながら笑みを浮かべた。

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