17パンケーキ登場にセレスティーナは微笑んだ
この国では誰も知らなかった、アイスクリームが誕生。諦めない探求心が生み出した奇跡の味。
「アイスクリームは多くの人を笑顔にできるわ!絶対売れる」
興奮冷めやらぬ様子で言われて、同感。口どけと甘さは、きっとこの国の夏の風物詩になる。自分なら列に並んでも買う。新しいお菓子を店で提供することを決める。
アランはアイスクリームを保存するための大型の冷気庫を工房の裏に設置。ルミナは陽光の実の酸味を活かした陽光アイスクリームや、濃厚なミルクの風味をそのまま生かしたミルクアイスクリームなど、様々なフレーバーのレシピを考案。
ちょっとだけアドバイスはした。初めてお店の看板にアイスクリームの文字が掲げられた日、人たちは好奇心と期待の眼差しでその新しいお菓子を注文。一口食べた瞬間、誰もが美味しさに驚きの声を上げる。
「何これ! 冷たいのにこんなに滑らかなの!?」
「口に入れた途端に溶けちゃう! ふふ!魔法だわ!」
瞬く間にアイスクリームは店の看板商品となり、夏の日には行列ができるほどの大人気となる。子供たちは目を輝かせながらアイスクリームを頬張り、大人たちはその新しい味に舌鼓を打つ。
評判は店から街へ、国へと広がり始めた。ルミナの夫であるカイン侯爵が画期的なお菓子を国の特産品として、奨励してくれたおかげである。
カインの働きかけにより、各地でアイスクリームの製法が伝えられて国の豊かな乳製品を活用した、様々な地域独自のアイスクリームが生まれていく。
ご当地アイスクリーム。ふわっと、浮かぶものに笑った。チョコレートに似た豆を使ったショコラアイスクリームや、季節の果物を使ったフルーツアイスクリームなどバリエーションは多岐にわたる。
「あのね、先日、辺境の村で地元のハーブを使ったアイスクリームが作られていると聞いたわ! 今度一緒に味見に行きましょうよ」
ルミナが目を輝かせながら報告してくれる。彼女の情熱は国の食文化をさらに豊かなものへと変えていく。
「ええ、ぜひ行きましょう。こんなにもアイスクリームを楽しんでくれているなんて、本当に嬉しいわ」
こんなにも愛してくれることに感謝をしたい。幸福が満たされていく。笑顔へと繋がっていく。
工房の奥からはアランが新しい木工品を作る音が聞こえ、庭からは孫たちがブランコで遊ぶ楽しそうな声が。
店の中ではルミナが考案した新しいアイスクリームのフレーバーに、お客さんたちが歓声を上げている。朝食の時間はもうすぐ。
アイスクリームを成功させ、夏の日々を満喫していた頃のある朝、目覚めの香ばしい匂いにふと、過去の朝食の風景が脳裏に蘇る。
甘くてふんわりとした、パンケーキの香り。
「ああ、こんな朝には、温かくて甘い、あのパンケーキが食べたいわね」
ベッドの中でうっすらと目を開けながら、天井を見つめた。固いパンや薄いクレープのようなものはあったが、卵と牛乳をたっぷり使った分厚くてふわふわのパンケーキなどない。
ああ、メープルシロップのような、とろりとした甘い蜜も恋しい。家族に話さないと。朝食時、アランとルミナに提案する。
「粉物と卵や牛乳を使って、新しい朝食を作るわ。パンケーキというのだけれど」
夫が興味深そうに顔を上げる。
「パンケーキ?どんなものなんだい?」
「粉と卵と牛乳を混ぜた生地を、薄く。焼くと、ふわふわに膨らんで優しい甘さが広がるの。上には果物を煮詰めたジャム、蜂蜜をたっぷりかけて食べるごはんのようなデザートのような食べ物」
説明するとルミナが目を輝かせる反応が嬉しい。
「素晴らしいわ! 私ももっと手軽に作れる朝食があったらと思っていたのよ! 朝は忙しいから、簡単なものが助かるわ。子育ても仕事もあるから」
ルミナは頭の中で、新しいパンケーキのレシピやそれに合うトッピングの案を巡らせているようだ。
「白い粉、小麦粉のことは、きっとパンケーキと相性がいいわ。卵や牛乳も豊富に手に入るものね」
付近で手に入る食材で味を再現できる確信があり、夫は言葉を聞きながら何かをメモし始める。
「私の話はどう?」
彼のことだから、きっとパンケーキを焼くための最適な平たい焼き器でも考えているのでしょう。
「いいね!セレスティーナ! 君がそんなに楽しそうに話すなら、きっと素晴らしいものができるだろう」
アランが優しく微笑んでくれて、安堵する。ふわふわを求めて、いざ。試行錯誤は朝から始まる。朝に提案したから当然だけれど。
「白い粉、小麦粉。卵、牛乳、混ぜてみたのだけど、なんだか重たすぎる。全然ふわふわにならない〜」
ルミナが混ぜ合わせたばかりの生地が入ったボウルを掲げ、不満そうに言い出す。キッチンには思い描くパンケーキの生地とはかけ離れた、ねっとりとした塊が。スライムみたい。
「そうね、白い粉は少し粘り気が強いみたい。それに、ふわふわにするには膨らませる力が必要」
ルミナは首を傾げる。
「膨らませる力?魔力を使うのですか?」
「うーん、魔力とは少し違うかもしれない。ベーキングパウダーという、粉を混ぜるだけで生地を膨らませる魔法の粉があったから。代わるものを見つけなくちゃ」
アランが話を聞きながら、何かをメモし始めた。




