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14ブランコが完成したので折り紙を折る

 アランが材料を選び、設計図を描く。ルミナがブランコに乗る孫の姿を想像しながら、座面のクッションを縫い始める。二人の作業を見守りながら待つ。


 完成したブランコが孫の笑顔と共に、庭に新しい風を吹き込んでくれる日が今から待ち遠しくてたまらない。

 工房からは連日、木を削る心地よい音が響いていて彼は、描いたスケッチと孫の安全への強い思いを胸に最高のブランコを作り上げてくれる。

 ルミナも陽光の実の黄色と新緑の緑を基調とした、肌触りの良いふかふかのクッションを仕上げた。早業だ。


 週末。家族皆で庭にブランコを設置。選んだのは庭の奥にある高く枝を広げた丈夫な老木。太い枝にしっかりとロープを結びつけ、アランが自作した精密な金具で座面を固定していく。


「もう少し右かしら?」


「お母様、こっちのら金具で本当に大丈夫なの?」


 ルミナが心配そうに声をかけてきた。アランの作業を見守り、アランは汗を拭うと力強く頷く。


「もちろん。セレスティーナとルミナ、君たちの愛が詰まっているんだからどんな嵐にも耐えられるさ」


 ブランコが完成するとアランが自ら乗り込み、強度を確かめ、彼が大きく揺れるたびにロープが軋む音がしたがびくともしない。


「よし、これで大丈夫だ!」


 孫は目を輝かせ、小さな体をブランコに預け、そっと背中を押すとブランコはゆっくりと段々と高く揺れ始める。


「わーい! 空だ! 空、飛んでるー!」


 孫の甲高い、無邪気な歓声が庭いっぱいに響き渡る。風になびく髪、大きく広がる笑顔。ルミナもカインも生まれたばかりの末娘も、みんなで孫の楽しそうな姿を見上げて笑顔を浮かべる。


 遊具は子供を育てるものになるはず。孫のブランコはあっという間に近所でも評判となり、子供たちが遊びにやってくるようになった。

 庭は子供たちの賑やかな声で満たされ、ブランコが揺れるたびに楽しそうな笑い声が響き渡る。


「セレスティーナ様、このブランコは本当に素晴らしいですね! 我が家にもぜひ!」


 近所の親たちがアランに制作を依頼するようになり、工房はさらに忙しくなった。アランは子供たちの安全を第一に考え、一つ一つ丁寧にブランコを作り続ける。


 陽光の実のケーキやどら焼き、魔導映画、ブランコ。この地にもたらしたものは暮らしを豊かにし、笑顔と喜びを増やすための幸福そのもの。


(ブランコは完成したから、他のものにも挑戦したい)


 孫のためのブランコが完成し、庭には子供たちの賑やかな声が響き渡る穏やかな午後。庭のベンチに座って、ふと懐かしい衝動に駆られ、手元にあった紙切れを折り始めた。


 幼い頃から親しんでいた折り紙だ。鶴、舟、小さな箱。指先が記憶している動きのままに、一枚の紙がみるみるうちに立体的な形へと変わっていく。

 祖母が得意でよく折っていた。無心で折っていると背後から突然、興奮したルミナの声が聞こえて、驚く。


「何をしているのですか?紙がどうしてそんな形に?」


 ルミナは作っていた小さな鶴を食い入るように見つめ、彼女の瞳は新しい魔導具を発見したかのように、キラキラと輝く。笑う。特有の文化だから、恐らく海外の人が転移しても折り紙を思い出せるかは確率的に低いかもしれない。


「これはね折り紙というの。一枚の紙を、道具を使わずに折っていくだけで色々な形が作れてしまう」


 説明すると興奮を抑えきれない様子で、隣に飛び込んでくる。母親になってもいつまでも子供みたいで愛おしい。


「道具を使わずに!?紙を折るだけで、こんなにも美しい立体が生まれるなんて。 魔法みたい」


 熱い視線を感じる。ルミナは折った鶴をそっと手に取り、様々な角度から眺める。観察眼は魔導映画の制作で培われたものだからか、非常に鋭いもの。


「翼のカーブ。足の安定感! 全てが紙でできているなんて信じられない」


 とっても楽しげに見つめる。次に折った小さな舟を水を入れた皿に浮かべてみせる。


「こういうのもあるの」


 舟が水面にぷかぷかと浮かぶのを見て、ルミナはさらに目を輝かる。


「浮いた。本当に浮いたわ、これなら子供たちの遊びにも使えるわ。それだけじゃない」


 突然立ち上がって興奮気味に腕を振り始めた。


「これって新しい立体造形の技術になるんじゃないかしら。紙を折るだけでこれほど複雑で美しい形を作れるのなら他の素材、例えば薄い金属や特殊な魔導繊維でも応用できるかも」


 素朴な趣味だった折り紙がルミナの目には、全く新しい技術の可能性として映ったようだ。新たな道がひらいたらしい。


「お母様、ぜひ折り紙の技術を私に教えてください。この素晴らしい技術をもっと多くの人に伝えたい」


「いいわよ」


 ルミナの熱意に押され、折り紙の基本を教え始めた。最初は戸惑っていたものの、一度コツを掴むとあっという間に様々な形に折れるようになった。やはり才能。

 指先は魔法を使うかのように紙を操っていく。世代を超えて互いに学び合い、高め合っていく循環。楽しさに微笑んだ。


「お母様、折り紙の技法をもっと多くの子供たちに教えたい。彼らの創造力を育むのにきっと役立つはずなの」


 ルミナの瞳にはすでに折り紙がこの国にもたらすであろう、無限の可能性が映し出されているよう。

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