10これでお母様とママ友になれるわね!
翌日、ルミナにもこのことを伝えたら、最初こそ驚いたものの、すぐに満面の笑みを浮かべてセレスティーナのお腹にゆったり手を当てる。
「お母様おめでとう! 私もお兄ちゃん、お姉ちゃんになるのね!」
孫もまだ幼いながらもお腹を撫でて「赤ちゃん、いるの?」と無邪気に問いかけてくる。
家族みんなが新しい命の誕生を心から喜んでくれていることを目にして、心は温かくなり続けた。
「これでお母様とママ友になれるわね!」
ルミナの熱烈なママ友宣言とそれに伴う、毎日の押しかけ訪問は妊娠中の日常をすっかり賑やかなものに変えていく。
熱意は時にこっちの許容量を超えることもあったが根底にある深い愛情は、ひしひしと伝わってくる。
そんなルミナを夫であるカイン侯爵は、いつも優しく見守っていた。
夕方になり、ルミナを迎えに我が家へやって来るカインは玄関先でルミナが。
「明日も朝から伺いますからね!」
宣言しているのを耳にすると、苦笑しながらも温かい眼差しで見つめて優しい笑顔を向けてくれる。
笑顔には「私の妻がご迷惑をおかけしてすみません」という申し訳なさと「セレスティーナ様、どうぞ妻の愛を受け止めてあげてください」という信頼。
それと「ルミナがこんなにもあなたを慕っているのが嬉しい」という、深い愛情が込められているように感じられた。カインがルミナを連れて帰った後、アランと顔を見合わせて小さく笑い合う。
「ルミナも、本当にセレスティーナのことが大好きなんだね」
穏やかな声でそう言いえば頷き、彼の手を握る。
「ええ。こんなに愛されているなんて、本当に幸せなことだわね」
ルミナは出産予定日が近づくにつれて、さらにママ友としての熱量を上げていく。
母のために手編みのベビー服を何着も作ってくれたり、お腹の赤ちゃんに話しかけるための絵本を自作したり。
愛情と新しい家族への期待は、見る者の心を温かくするほどで嬉しくなる。全てをカインは優しく、時には面白そうに笑いながら見守ってくれた。
彼の存在はルミナのまっすぐな愛情を包み込んで、家族の繋がりをより一層確かなものにしてくれた。
日々大きくなるお腹を撫でながら、もうすぐ生まれてくる新しい命や温かい家族の未来に思いを馳せる。
妊娠生活はルミナの猛烈なママ友ぶりと、見守るアランとカインのおかげで、賑やかで楽しいものになっていた。週に何度も我が家にやってきては、食べやすい料理を作ってくれたりする。
お腹の子に話しかけてくれたり、その度にカインも優しい笑顔でルミナを迎えに来てくれた。
ある日、ルミナがお腹に耳を当てて「ねぇ、今動いたわ!」と興奮した声で言う。胎動をルミナが一番最初に感じ取った。
その時のルミナの嬉しそうな顔を見たらこっちこそ、心から感動した。兄弟姉妹を喜んでくれているのだから。季節が巡り、柔らかな春の陽光に包まれた頃、無事に元気な女の子を出産した。
「セレスティーナ、よく頑張ったね」
アランが手を握り、涙ぐんでくれた。隣ではルミナが目を輝かせながら、生まれたばかりの妹を抱き上げている。
「可愛い。 小さくてお人形さんみたいだわ」
皆が囲んでいた。ルミナの息子、つまりは孫も目をきょとんとさせながら新しい赤ちゃんを見つめている。
家族が増える喜びは何物にも代えがたいものなのだな。
出産を終え、しばらくして体調が回復してくるとルミナが新たなアイデアを持ってきた。
「お母様、わたくし子育てをテーマにした魔導映画を作りたいのです!」
元気に告げた。ルミナは出産や育児を通して、新しい発見や感動がたくさんあったと言い始める。
子育てに奮闘する姿や、家族が増える気持ちを多くの人たちと分かち合いたいと願っていたからこそ、頷き合う。
ルミナの提案に賛成した。家族の物語を紡ぐ映画を作る。世代を超えて受け継がれる、新しい挑戦となるだろう。
ルミナは赤ちゃんが泣き止まない時の工夫や、初めてハイハイした瞬間。家族みんなで笑い合った日常のささやかな出来事を、丁寧に映像として記録していく。
セレスティーナも自分の育児経験や、この国の文化に合わせた子育ての知恵をルミナに惜しみなく伝えた。
アランも家族の温かい日常を、美しい映像として残す手伝いをしてくれる。
完成した映画はルミナらしい温かさと、細やかな愛情に満ちたもので観客たちは、赤ちゃんの愛らしい仕草に顔をほころばせて育児の苦労に共感し、家族の温かさに心を打たれていた。
映画は多くの新米親たちにとっての指南書となり、家族の絆を再認識させるきっかけとなる。
新しい娘が生まれてルミナも子育てをテーマにした魔導映画を成功させて。日常は幸福に満ち溢れて、夫アランは相変わらず優しくルミナ家族も頻繁に訪れては家中に笑い声を響かせた。
アランと二人で、新しい商品の材料を探しに郊外の農園を訪れていた。日差しが強く、少し汗ばむ陽気。喉が渇き、何かさっぱりとしたものが飲みたいと思っていたその時、農園の片隅で目に飛び込んできたのは夢のような光景。
木々の間に見慣れない、懐かしい鮮やかな黄色の果実が鈴なりになっていた。レモンに寸分違わずそっくりであったのだ。




