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明奈に初依頼

 翌日明奈は自室兼事務所で書類に判を押し封筒に入れていた。明奈は26才で法学部卒業後大手法律事務所に就職したが今年の3月に独立したばかりだ。大きな訴訟の仕事はなく借金の自己破産や遺産相続の手続きと言った事務仕事ばかりだ。


トントン


「どうぞ」

ドアのノックする音に返事をすると誰かが部屋に入ってくる。

部屋に入って来たのは白い丸襟ブラウスにピンク色に裾に白いレースのスカートを履いたちづと黒スーツに胸元にレースが使われたブラウスの芳子の2人だ。

「2人揃ってどうしたの?」

ちづは芳子の方を見る。芳子は黙って頷く。

「お姉様、」

ちづは貯金箱を出す。

「これで訴訟を起こしたいの。」

「訴訟?!誰を?」

「家庭科の先生」

 ちづは昨晩の出来事を話す。家庭科の選択の授業に男の子が入ったから当初はスカートを作るようになったがズボンになった事。

「前にも言ってたわね。」

「それで昨日芳子さんに聞いてもらったの。そしたら」

芳子は姉が弁護士なら訴訟を起こしてもらえるんじゃないかと提案してきたのだ。

「そうね、残念だけどそれは無理だわ。」

「どうしてだ、君は妹が可愛くないのか?」

芳子が詰め寄る。

「可愛いわよ。だけど」

明奈は大手法律事務所にいた頃学校で起きたトラブル案件は幾度と見てきた。体育大会や学芸会で親が子供の出る競技や配役に文句があって訴えた事例はあった。しかし勝訴した物はほんのわずかだ。

「それにこのお小遣いだけでは足りないわ。」

「だったら不足分は僕がここで働いて返します。僕からもお願いします。」

芳子が頭を下げる。それに続いてちづも頭を下げる。

「2人ともやめて。気持ちは分かるけど難しいわ。」

明奈は2人に頭を上げさせると背中を押すようにして部屋から出す。




 翌週再び家庭科の授業の日が来た。授業は週に2回、月曜日と木曜日にある。

「ちづ、デザインできた?」

「うん、できたよ。」

ちづは真由にデザイン画を見せる。明奈に訴訟依頼を断られた後土日に描き上げたものだ。

「ねえ、これ本当に先生に提出するの?」

「当たり前じゃない。」

「でも先生はズボンを作るようにって言ってなかった?」

「あら、これズボンよ。」

チャイムが鳴ると教師が家庭科室にやってくる。

始業の挨拶が済むと教師はデザイン画を提出する。

テーブル毎に集め1人が代表して教師のところまで持っていく。ちづのテーブルは彼女が集める。

「先生、こちらお願いします。」

ちづは同じテーブル全員のデザイン画を渡す。

「ちょっと待ちなさい、麻川さん。」

席に戻ろうとしたところを教師が呼びとめる。

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