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この世は勇者であふれてる  作者: 栢瀬 柚花
戦の残響

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79/86

甥と叔父


 王都よりは気温が高いとはいっても季節は冬。スカートでは風が吹き込んで寒かったので、さっさとお屋敷に入れるのは助かった。

 あのまま屋外ホールで話が続かなくてよかった……。

 

 

 邸宅は温かく、昼食のために通された部屋は暖房となる薪が轟々と燃えていた。それにホッとして、執事に促されるまま席に着く。


 

 ラディウス、ヘルムート含めた全員が席に着くと、エーナンテイトもあたしの前に腰を下ろす。

 肩幅はあたしの3倍はありそうで、座ると大岩が置かれたような圧迫感が出る。

 

「俺はラディウスの父の弟だ。ラディウスは甥っ子になる」

 いきなりの自己紹介。

 まさかの身内!だから呼び捨てなのか……。

 

 なんだか急に緊張が増して、

「召喚者のイセ・ヒカリです」

 座したままだけど、軽く会釈した。

「もちろん知っとるとも!色々と噂は聞いとるからな!」

 噂、ね……。

「あの……それって黒の創薬師の件ですか?」

 まだ鍋を回してると思われてるのかな……。

「それもあるが、魔法力が少ない者への救済処置に焦点を向けさせた話題が多いな。最近はラディウスとの仲に関するものの方が多いが」

 

 ラディウスと仲の噂?

 それって――。

 

「城内でもよく一緒にいるとか、家路を共にしているとか……」

 情報アップデートが早いな!城で一緒にいるのはここ半月くらいなのに!

 

 それにしてもネットもSNSもないのに、噂の広まり方が早い……。

 アナログ恐るべし……。


 言葉を無くしたあたしにラディウスは、

「まったく……。侍女や女中が好き勝手に話を広めているんだろう」

 腕組みしてぼやく。

 内容としては合ってるから否定はしない。それに気がついたんだろう、エーナンテイトは、

「よい仲、という点は否定せんのだな?」

 鋭く尋ねた。

 ラディウスはしかめっ面をして、

「そう言う話が聞きたくて、視察を口実に呼びつけたのか?」

「身内なら知っておきたいことだろう?」

「――そう言うことなら帰るぞ?」

 立ち上がりかけた。

 エーナンテイトの側近は慌て、執事や女中もドキリと顔を強張らせていたが、エーナンテイトは慣れたもので、

「いいぞ。ワシはヒカリ様に話が聞ければそれでいい。1人で先に帰れ帰れ」

 なんて言う。

 

 ヘルムートは笑いを堪えるように咳ばらいをし、ラディウスはめちゃくちゃ渋い顔をしていた。

 エーナンテイトは「ヒカリ様、噂は真実ですかな?」とあたしに体を向けて話しかけてくる。

 

「知っておるとは思いますが、ラディウスはああいう性格ですからな。おなごとの噂なぞ、一度もなかった。見合いを勧めたこともあったが、話を切り出した途端、屋敷を燃やされそうになりましてな……」

 それは容易に想像く。

「そうでしょうね…」

「そんな甥っ子が、ヒカリ様と噂になっている。初めて耳にした時は仰天しました!何かの間違いと思いましたからな。しかし噂はどんどんと更新され、今やはっきりと恋仲と皆が言っている!兄が生きておれば、さぞ喜んだでしょう!」

 

 あまりにも興奮して話すもんだから、エーナンテイトはどんどんと身を乗り出してくる。大岩が迫ってくるような圧迫感に、思わず体を仰け反らせた。近くにいると皮膚がピリピリする気もして、落ち着かない。

 

「おい、エーナンテイト。近いぞ」

 ラディウスに言われたエーナンテイトは聞こえないふりをして、 

「して、真相はどうなのですか?」

 さらに詰め寄ってきた。

「エーナンテイト、なぜ俺に直接聞かない?」

 まだ立ち上がったままのラディウスが叔父に尋ねたが、

「お前は帰るのだろう?ほれ、さっさと行け」

 しっしっ、と手を払う仕草をした。

「……ヒカリが帰らないのに、俺だけ去れるか――」

 小声で呟いている声は、あたしとヘルムートくらいしか聞こえないだろう。

 

 一方で、叔父とは言え国主に対してあまりの発言をしたことに顔色を変えたのは、エーナンテイトの側近だ。

「陛下に言葉が過ぎます!」

 と青い顔をして嗜め《たしなめ》ている。 

 しかし当の本人は全く意に介しておらず、

「お前がいてはヒカリ様とゆっくり話ができん。帰るならさっさと行け」

 邪険に扱うだけだった。

 

 視線をあたしに戻すと、

「ヒカリ様は甥のどこがいいので?つっけんどんで愛想もなく、口下手で笑いもしない。気の利いたことも言えず、優しい言葉をかけることもない。おなごには到底好かれない性格でしょう?取り柄と言えば魔力と容姿くらいか?」

 

 率直過ぎる物言いに、あたしは思わず吹きそうなる。

 さすが身内、ストレートな意見だ。

 笑いはしばらく引っ込まず小さく肩を震わせていると、

「――ヒカリ、笑いすぎだぞ?」

 ラディウスに叱られた。

 あたしは「そう?」と笑うと、

「面白すぎて……」

 目元を拭った。

「で?ラディウスはいつまで立ったままなの?」

 すっかり座るタイミングを失っているので、きっかけをあげた。

 ラディウスは不機嫌な顔のままドサッと椅子に戻ると、足を組んでふんぞり返る。

 

 それを見届けると、

「随分と陛下と親しいですね?さすが親戚です」

 エーナンテイトに話かけた。

「幼い自分から知っているからな、昔からの扱いがどうしても抜けん」

 

 ラディウスが小さい頃かぁ……。想像つかない。

 目つきが悪いことだけは分かるけど。

 

「甥への言葉遣いが気になるか?」

「いえ。ラディウスに対して気安い方はアリウェ陛下しかお会いしたことがないので、少数派だと思っただけです」

「そういうヒカリ様も、甥を呼び捨てるのだな」

「そうですね。すっかり定着してしまいました」

「俺は許可した覚えはない」

 ラディウスが会話の合間に割り込んでくる。 

「でも止めろ、って言われたことはないけどね」

 言うと「今から改めてくれるのか?」なんて言う。

「改めて欲しいの?」

 そう返すとラディウスは肩をすくめる。

「今更『陛下』なんて呼ばれても違和感しかない」

 眉間にシワを寄せてるけど、嫌そうな顔じゃない。

「ラディウス、またそんな顔をして……。母親譲りのいい顔が台無しだぞ?せっかく見目はいいんだから、せめて顔をしかめるな。いよいよ眉間に刻まれるぞ、深いシワが」

 エーナンテイトの小言に、

「リリナと同じことを言うな!」

 ラディウスが吠えたところで、

「御三方。料理長がずっと皿を持って待っていますよ?」

 ヘルムートが言う。

 確かに、コックらしき人が困った顔でじっとこちらを見ていた。


 

 3人で雑談をしつつ昼食を済ませると、視察のため外へ出た。

 移動のため魔獣車に乗り込む準備が終わるのを待っている時、

「なんで防御魔法を張れってあんなに忠告したの?」

 ラディウスに尋ねた。

 

 ここに視察に来ると決まってから何度か忠告されていたから、もっと危ない人なのかと思っていたのに。

 

「エーナンテイトは純粋な鬼人だ。イリサと違って成人の鬼人は魔力の覇気がすごい。当てられるとしばらく体調を崩すぞ」

「あぁ、なるほど……」

 

 魔力量が少ないあたしは影響を受けやすいのか。

 そこを心配してくらたらしい。

 

「今のところ平気か?」

「うん。ちょっとピリピリするくらい」

 ラディウスは顔を覗き込み、

「嘘じゃなさそうだな……」

 顔色を確認して呟く。

「嘘なんてつかないよ」 

「ヒカリのことだ。俺の身内だからと、気を使うだろうが」

 その可能性は全くないわけじゃないけど、今は本当に平気だった。

「本当に平気だよ」

「辛かったら言え。帰りは魔獣車より次元魔法が良ければ送ってやる」

 そんなことまで言い出す。

「心配しすぎだって……」

 嬉しいような照れくさいような気持ちが芽生えたことろで、

「おい、いちゃこらしてないでさっさと乗らんか」

 エーナンテイトに言われた。


 

 

 魔獣車の中では視察の内容を話していたけど、それも最初だけだった。

 会話はいつの間にかラディウスの幼少期のエピソードになり、

「叱られたらよく兄貴に怯えてワシのところに逃げてきてな。体が小さくて細っこかったから、『タンスの中でいいから匿ってくれ』と勝手に家に入ってきとった」

「何そのエピソード!今のラディウスからは想像つきませんよ!」

「あと雷も苦手で、雷雨の時は兄貴の後ろに隠れて縮こまってた」

「かわいー!今は平気そうですけど」

「母親には甘えとったが、見られるのが恥ずかしいようでな。ワシや兄貴の前ではそんな素振りは見せんようなしとった」

「男の子っぽい!」

「好き嫌いも多くてな。野菜は食うくせに、骨の多い魚も肉も嫌いでよく兄貴やオレの皿に移すんだ。母親から叱られると渋々口にしとったが、兄貴が言うと突っぱねる。唯一素直に言うことを聞くのが母親の言葉だったな」

「あー、あるあるですね」

 好き勝手に話すあたし達に、

「おい!何十年前の話をしてる!」

 怒っていた。でもそんな程度で親戚の話が止まるわけがない。 

「お前、今だに肉は食わんのか?」

「よく残してますよ」

「だから太くならんのだろう?体格は母親譲りの部分は大きいんだろうが、もう少し肥えろ」

「余計な世話だ」

「兄貴の要素は魔力と魔法だけだな」

「それで困ったことはない」

 素っ気なく返すので、

「全く可愛げがなくなったな……」

 遠い日のラディウスを思い出している目で甥を眺めている。

「ヒカリ様、あまりにも愛想をつかせたらワシに言ってくれ。一応、言うことを聞かす切り札はあるんでな」

「エーナンテイト!」

 遮るようにラディウスが大きな声を上げる。

 

 きっと詳細を言われるとバツが悪いのだろう。そんな顔をしているもの。

 

「ほら、落ち着いてよ。スコーンあげるから」

 あたしは布に包んだ三角スコーンを渡した。

「あと温かいお茶もあるよ」

「菓子でご機嫌取りか?」

 小さい子供のあやし方のようだと思ったのだろう、ラディウスはまた納得いかなそうにブスッとしていた。

「良かったらエーナンテイトさんもヘルムートもどうぞ。ラディウスが甘い物苦手だから、小さく切った果物を入れてます」

「ヒカリ様はよく作るのか?」

「ええ。お菓子が食べたい時に」

「城でよく差し入れてくれるのですよ」

 ヘルムートが言う横で、ラディウスはすでに食べ始めてる。

「そうか……。全く、ラディウスにはもったいなさすぎるおなごだな」 


 

 魔獣車を降りた所は大きな河の前だった。 

 長い土手が整備されていて、橋もいくつか掛けられている。エーナンテイトはそのうちの1本を指しながら、

「あの橋の基盤が老朽化してきてる。春までに直さんと、雪解け水で水位が上がればひとたまりもないぞ」

 2人は「見てくるか……」と歩きだした。ラディウスは、

「ヒカリはエーナンテイトと一緒にいろ。エーナンテイト、余計なことをペラペラと話すなよ」

 しっかりと睨んで釘を刺して行った。


 

「本当に可愛げないな……」

 エーナンテイトは背中を見送りながら呟いている。

「昔はちっこくて、その上あの容姿だから可愛かったんだが……。今でも黙って睨まなければいけそうなんだろうが、無理だろうな」

「プッ……。確かに黙っていれば可愛いでしょうね」

 また肩を震わすあたしを見て、

「ヒカリ様は本当にラディウスを好いているな。ラディウスを『可愛い』と言って賛同を得たのは初めてだ」

 感心したように言う。

「それも同意します。アリウェ陛下にも共感は得られない部分でしょうし」

 男友達から『可愛い』なんて言われる男子は少ないよね。 

「ラディウスは魔力や魔法だけに注目されがちだ。あいつの根本を見てくれる奴は少ない。畏怖され距離を置かれるのが常だ」

「まぁ……そうかもしれませんね。あたしも最初はそうだったので――」

 

 色んなラディウスを見て、話しをして、今はそれが心のままのラディウスじゃないと知ってる。

 

「ラディウスは気持ちを隠して生きてきたので、横暴で強気、傲慢なのが本来の彼だと思われるんですよね。本当は違うのに……」

 独り言ともいえる呟きが漏れた。胸の中から空気を吐き出すようにこぼれた言葉に、エーナンテイトは数秒口を噤むと、 

「ヒカリ様は本当にラディウスを『見て』くれてるんだな――。あいつの外見や上っ面じゃなく、根本を……」

 

 エーナンテイトはあたしに向き直ると、至極真面目に尋ねた。

「ヒカリ様はラディウスのどこに惹かれた?さっきも言ったが、性格としは難ありのラディウスだ。地位や金、容姿に目が眩むことはあっても、中身に惹かれる奴は少ない」

 今日会って何度目かの質問をした。

「ラディウスの身内はワシだけだ。兄貴の忘れ形見の幸せを見届ける義務がある。答えちゃくれないか」

 

 家族としての真摯な言葉は、真に甥の未来を憂いたものだった。

 

 それが汲み取れたからあたしも真面目に答える。

 

「ひと言では言えません。ラディウスは粗雑で、言葉も荒っぽいし目つきも悪いから、怖がられる事が多いけど――。でも、時々優しい言葉をくれます。慰めたり心配したり、褒めてくれたり……」

「褒める?あのラディウスが?」

 目を点にしているエーナンテイトに「はい」と明確な返事をした。

「たまにくれる言葉や表情が、あたしを惹きつけるんだと思います――」

 

 今日も色々と言ってたな、と微笑んでしまう。最近はのろけっぽい事も口走るから、思わずにやけてしまう。


 あたしの表情を見たエーナンテイトは「そうか……」と呟いた。

「噂通り、ラディウスが変わったというのは本当らしい――」

 心安らいだ顔をすると、 

「相手がヒカリ様なら、ラディウスはもう大丈夫だろう……。兄貴と義姉の墓前にもそう報告しよう」

  

 やっぱり身内なんだ。なんだかんだいっても甥っ子が可愛いんだと思え、思わず笑顔になった。

 

 ほっこりとしていると、

「……――一つ懸念がある」

 唐突な沈んだ声に、あたしは首を傾げた。

「懸念?」

「そうだ。ヒカリ様がラディウス近くにいると決めたなら……伝えておきてぇ事がある」

 どうも良くない話に思え、今までの和やかな気持ちが急に揺さぶられて、くらくらした。

「……なんでしょう」

「尋ねたいんだが……。ラディウスはまだ『声』を聞いているのか?」

 案じ顔でそう言った。

 

『声』? 

 まるで心当たりがなくて、キョトンとした。

 事の深刻さがわからず、エーナンテイトの暗く真剣な表情とあたしの心は離れていて、追いつくのが難しかった。

 

「『声』?ですか?」

「ラディウスは何も言わないか?」

「……はい」

「ヘルムートは?」

「特に……」

 エーナンテイトはしばしあたしをじっと見つめると、

「――まだヒカリ様は遭遇してねぇ、という事だな……」

 かなり意味深に零す。

 

 この日見てきた明るい顔とかけ離れた表情に、胸中には薄雲がかかる。

 

 ラディウスに何か良くないことがあるの?

 

 

「それはいずれ目にする、ということですか?」

「……恐らくな。治ったとはヘルムートから聞かねぇ」

 

 治った、ってことは病の類?

 ヘルムートからは何も聞いてないから、持病とかではいのだろう。

 エーナンテイトの表情から察するに、深刻な事なんだと察しはついた。

 

「もし『あの』ラディウスを目の当たりにしても、逃げないでやって欲しい」

「逃げる……。逃げ出したくなるような事なんですか?」

 ゆっくりと頷く目は病人の横に座る見舞客のような陰りがある。 

 どういった懸念をしているのか分からないけど、エーナンテイトの念を押す言い方に、

「逃げはしません。動揺はするかもしれませんけど」

 あたしはすぐさま答えた。

 

 エーナンテイトはこちらを見据えたまま、

「その頼もしい言葉を信じるぜ」

「はい」


 

 ラディウスには何か抱えてるものがある。

 聞いたら答えてくれるだろうか?

 それともはぐらかされるかな……。

 

 いなされるのは流石に寂しいし、辛い。

 あたしを信じてないってことだから。

 

 本人がダメならヘルムートに訪ねてもいいけど、出来ればラディウス本人の口から聞きたかった。今はだいぶ信頼関係があると思ってるから――。


 ………………。

 そう考えてるのがあたしだけ、なんてことはないよね……?


 

 そんな悲観的な事が浮かんだところで、

「戻ったぞ」

 視察を終えたラディウスとヘルムートが帰ってきた。

「早かったな」

 エーナンテイトが声をかけるが、ラディウスはあたしの顔を見るとすぐに違和感に気がついたようで、

「エーナンテイト、ヒカリに何かしたか?随分と暗い顔をしてるが……」

 キッと叔父に刺すような視線を向けた。

「そんなわけないだろう?どれだけワシを信用してないんだ?」

 結構傷ついた顔で甥を見ていた。

「ヒカリと一緒にいたのはエーナンテイトだけだ。他に誰もいないんだから、疑いをかけられても仕方ないだらう」

 真っ当な意見ではあるが、流石に落胆したのかエーナンテイトは「はぁ……」と盛大なため息をつく。肩を落とした様子に、

「なんだ?違うならちゃんとそう言えばいいだろう?」

「ワシはヒカリ様に何もしてない」 

「本当だよ。ちょっと話をしただけ」

「なら、帰りの車で話の内容を教えくれ」

「それはいいけど……」

「ならこの件は終いだ」

 あっさりと言ってのけるので、エーナンテイトは、

「お前は唯一の身内に厳しすぎやしないか?」

 と苦い顔をしている。

「ワシはラディウスの中でそこまで信用がないのか……」

 肩を落とした叔父にラディウスは、

「そんなことはない。信用がないならヒカリを預けたりしていない」  

 急な肯定的な言葉を投げた。

 エーナンテイトは呆然とし「そ、そうか……」と意表を突かれている。

「エーナンテイトの鬼人としての力は本物だからな。純血らしい強さと覇気がある。そこは買っているぞ」

 驚きすぎたのか、エーナンテイトはポカンと口を開けたままだった。甥の変わりように何も言えなかったんだろう。


 見かねたヘルムートが、 

「ラディウス様、直に日が暮れます。その前にヒカリと共に青颯華せいそうかを見に行かれては?私はしばらくここでロドルガッツ殿と工程の話をしますので」

 進言した。

「ああ、そんなことも言っていたな……。ヒカリは青颯華、見たいのか?」

「見たことないから、見てみたいけど……。ここから遠いの?」

 ラディウスは日没までの時間を確認するためか、西の空に目を向けた。

「短時間でいいなら行けるぞ。飛べばすぐだからな」

「なら、行きたい」

 返事をするとラディウスは羽根を広げ、

「すぐに戻る」

 ヘルムートに言うや否や、あたしを抱えて飛び上がった。

 

 

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