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この世は勇者であふれてる  作者: 栢瀬 柚花
隠された感情

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噂話


 最近よく耳にする噂がある。

 

 当初は城に近しい者しか話していなかったが、今となっては酒場、ご婦人方の井戸端会議、職場の休憩時間など、人が集まる場所で囁かれるようになった。

 

「ラディウス陛下が変わられた」


 

 皆、最初は信じていなかった。

「きっと一時的に機嫌が良いだけだろう」

「何かと楯突いていたアザルス王国との戦争に勝利し、その余韻に浸っているだけだ」


 その証拠に、ラディウス陛下のお屋敷から激しい光と爆音が轟いたことがあった。

「ほらみろ。またご機嫌を損なわれたんだ」

 誰もがそう言った。

 いつもならそこで終わり、噂は消えていった。

 

 しかし「まだ穏やかなラディウス様らしい」との風の噂が届くようになった。城に使える兵士や衛兵、馬丁、下女……。そう言った者達から広がった話だ。

 

「執務中もお静かだ」

「鋭い目つきではなくなった」

「たまに労いの言葉をかけてくださる」

「3ヵ国が訪問に訪れた時も、よく笑われていたらしい」


 

 だんだんと増えて重なる噂に信憑性が加わったのは、慰霊祭の時だ。

 陛下の言葉を賜れる壇上に立たれた時の事だ。

 その顔が――。

 あまりにも穏やかだった。

 

 国民だけでなく騎士や兵士さえも、目を点にしていたと聞く。

 表情だけでない。声、言葉、視線。その全てが例年と違った。

「噂は本当だったんだ――」

 誰もがそう言った。

 

 同時に別の噂も囁かれるようになった。

「慰霊祭の時、陛下に連れられ会場に来た女性がいたらしい……」

 双黒のその女性は、どう考えてもこの世界の者ではない。そんな髪色、瞳の色の者はこの世界にいない。

「アザルスから連れてきた召喚者らしい」

「あの薬を作った?」

「いろいろな容器も考案したとか……」


 人々の召喚者への関心は、ラディウス陛下の変化と同じくらい高まった。

「その異世界人が来てからなんじゃないのか?陛下が変わられたのは?」

「2人はよい仲なのか?」

「慰霊祭で共に来られたということは、そう言うことなんだろう……」


 

 皆、好き勝手に話をして盛り上がっていた。

 ただのゴシップとしての興味だけでないのは、人々の顔を見れば分かる。自国の王の喜ばしい変化に浮かれているのだ。

「この国はまた変わるのかもしれない」

「強く勇ましかった陛下に慈愛が加われば、よりよい国になるだろう」 


  

 多くの人が喜びをもって変化を受け入れる中、そうでない者たちもいた。

 彼らは深く眉間にシワを寄せてその噂を聞いていた。


  

 異世界人とラディウス陛下との正式な通達は、城から何もない。きっと揶揄され広まった話に、尾ひれがついているに過ぎない。

「庶民たちの勝手な希望と願望が付け加えられた話に過ぎないのだろう――」

 そう考えていた。 

 しかし状況は突如として変わった。


  

「あのグラータが、ついに薬剤情報を開示した。それもソルセリルだけに」

 

 この事実は驚きをもって裏社会や政界に広がった。実際に交渉したのは召喚者だが、ラディウス陛下も自らグラータへ赴いたと、もっぱらの噂になった。

 

「しかもグラータでは常に行動を共にし、夜会ではすこぶるよい笑顔を見せられていたとか」

「アリウェ陛下と3人で、それはそれは楽しそうに歓談されていたとか」

「踊られた時も、なんとも微笑ましい2人だったと聞く」

「しかも双黒の召喚者は、ソルセリルの国旗の色の衣装を身にまとっていたとか……」

「そうなれば、いよいよお二人は恋仲なのか?」

「召喚者がラディウス陛下に与える影響は際限がなさそうだ……」


  

 ソルセリル国内のみであればまだ良かったが、国外からもそんな声が届き始めると、いよいよ噂ではすまなくなった。実際に国政に影響が出たので尚の事だ。

 こうなると、表向き良い影響であっても、裏では快く思わない輩が出てくる。


  

「――これはいよいよ、考えねばならないのではないか?」

 誰かがそう言った。

 噂だと見過ごし、傍観してる場合ではないのかもしれない。

 

 ソルセリルがこれ以上力をつけるの面白くない。

 ただでさえ、大国であったアザルス王国を滅ぼしたのだ。

 その勢いに加え、心の支えという盾を更に与えては、抑えが利かなくなるのではないか?

 

「まずは、支えとなる者を消してしまおうか?」 

 そうなれば、心弱くなったラディウスを砕く事も容易になるのでは?

 

 その言葉を皮切りに、次々と言葉が出てくる。

「すでにアリシャ、リリナ、ネイブル、ユタルの訪問も終わっているぞ……」

「各国との面識があるのなら、これ以上ラディウスとの関係が深まる前に動いた方が良くはないか?」 

「しかし双黒の居場所は公の場を除き、ようとして知れないと聞くが?」 

「護りを固められているのだろう……」

「ならどうする?」

 

 皆が頭を抱える中、1人が言った。

「草の者から、双黒は時折街に出ると聞くが……」

「おおっ、そう言えば……!」

「双黒には兄がいると聞いたな……」

「美しくも兄妹仲はよいとか……」

「そこが好機か?」

「これ以外でも、時折討伐に赴くらしいぞ。ラディウスの手の届かぬ場所へ」 

「その時も狙い目か?」

然り(しかり)然り」

  

 

 ならば策を練ろう。

 準備が出来ないと手をこまねいてる時は終わった。

 

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