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この世は勇者であふれてる  作者: 栢瀬 柚花
特訓

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応接室


 あたしが目覚めたのは、訓練から2日経った昼の事。

「よく寝たぁ!」

 かなりスッキリして清々しい気分でだ目が覚めた。布団の中から窓の外を見ると快晴で、とても気持ちよさそう。

「今日もいい天気だなぁ。洗濯日和だぁ」

 そう独り言を言って起き上がり、ググっと伸びをして目を開けると、見慣れない豪華な部屋だったので、

「ん?」

 一瞬硬直してしまい、フリーズして記憶を遡った。

 

 あっ……。

 回復ポーションで傷を治した後、疲れて寝ちゃったのか……。

 と言うことは、ここはまた城……。

 

 ふと横を見ると、前回と同じメイドさんがやはりノーリアクションで静かにあたしを見ていた。

 目が合うと、すくっ、と立ち上がりスタスタと部屋を出ていってしまう。

 また全部見られて聞かれた……。

 守秘義務とかあるなら、ぜひ黙っておいて欲しい……。


 どうやらあたし担当らしいメイドさんは、朝食を乗せたワゴンを運んできてくれた。カチャカチャと紅茶を準備し、パン、果物、野菜、卵などを皿に取り分けてテーブルに置いてくれる。

「……ありがとうございます」

 前回といい今回といい、彼女は何も話してくれないが、お礼を言うと、

「いえ……」

 2文字だけ話してくれた。

 

 散々独り言だの腹の虫の音を聞かれているから、気まずくはあるけど……。あたしのこと、どう思ってるんだろう……。

 ひたすらに無言でニコリともしないから、全然分からない……。

 

 彼女は見た所、人間のように見えた。耳も普通だし尻尾もない。体格も華奢なだけで、ごく普通の人だ。

 ソルセリルでは種族を尋ねることは黒寄りのグレーって感じだから、あえて聞かないけどさ。

 そう言えば、ラディウスも鬼人なんだっけ。羽根があるのは鬼人だから?でも鬼に翼はないよね……。それともこっちの世界の鬼には普通にあるのかな……。

 それとなーく聞けるタイミングがあれば尋ねてみよう。


 朝食が終わると簡単にシャワーを浴びた。

 体もさっぱりすると、脱衣所に綺麗なワンピースが畳まれて準備されていた。普段着にしては豪華。シフォン素材で、ラベンダー色。花柄でかなりフェミニン。あたしなら絶対に選ばないヤツ。

 これを着ろ、ってことね……。


 着替えて部屋に戻ると、

「陛下とヘルムート様がお待ちです」

 とメイドさんが文章を喋った。

 おおっ!話した!

 内心で驚いていると、別室へ案内される。


 こちらは応接室なのか、机とソファしかない。すでにラディウスとヘルムートは座って待っていた。

「おはようございます。といっても、すでに昼ですが。体調はいかがですか?」

「はい、とってもいいです」

 あたしが2人の向かいに腰掛けると、

「グスタフがすまなかったな。監督不行届で今は謹慎中だ」

 処分の報告をされた。

「えっ?そうなの?」

「当然だろう。本来、サラマンダーなんてヒカリ一人で対処する魔物じゃない」

 あぁ、確か風話でもそんな事を言ってたな……。

「あの…グスタフさんは……そのー………あたしをあんまり好きじゃないんじゃ……。あたしと接触しない方がいいんじゃない?」

「好き嫌いの感情は仕事に関係ない。命の危機がある時なら尚の事だ」

「まぁ、それはそうかもしれないけど……」

「とは言っても、ヒカリがやり辛いなら今後は多少考慮する」

「うん……。ありがとう」

 

 とりあえずグスタフの話が終わると、ヘルムートが実戦訓練の結果を教えてくれた。 

「こちらが考えていたよりヒカリの戦闘力がありました。何より魔法の使い方が面白い。後日、色々と話を聞かせてください」

「面白い?」

「ええ。補助魔法や支援魔法は特に興味深い」

「あのアイデアはほとんど田岸さんからもらいました。彼に聞いた方がいいと思いますよ?」

「なら、2人に伺いましょう」

 巻き込んでしまった。

 驚かせないように、あとで手紙でお知らせしておこう。


 ヘルムートは

「それはさておき――」

 表情を変えた。

「今回の訓練で少々気になった事があります。キュクレストの出現です」

「どういう事ですか?」

「キュクレストは滅多に現れない魔物だ。俺自身も一度しか見たことがない」

「私も長く生きていますが、お目にかかったのは2回程です。それがたまたま、ヒカリの実戦訓練で姿を現した」

「……繁殖期だからじゃなくて?」

「キュクレストは滅多に繁殖期に入りません。それにキュクレストの子供の目撃例は皆無といっていいので、そもそも繁殖しないのではと言われています」

「なら、魔獣を呼び寄せる粉のせいとか?」

「魔獣にしか効果はない。キュクレストは魔物だぞ?」

「なら、集まった魔獣を食べようと呼び寄せられた、とか?」

「考えられなくはないですが、繁殖期で森には魔獣がウヨウヨいます。わざわざ開けた所へ出てきて魔獣を狩るとは思えません」

 あたしはそこまで聞いて、2人が何を考えているのか分かった気がした。

「――つまり、毒物混入事件と同じようにあたしを狙った可能性があるかも、と……?」

 ラディウスは表情を暗くして「まぁな」とだけ言った。

「まだ可能性の話です。今後も警戒はしますので、ヒカリも周囲への警戒を怠らないように」

「はい……」 

 穏やかでない可能性だ。

 こんなにも暗殺をされかけるなんて……。

 やっぱりこの力のせいなんだよね?

 一人での行動は控えて、買い食いもしないようにしよう……。


 

 どんよりとそう考えているとヘルムートが、

「次は仕事の話です」

 そう言って紙を出してきた。

「グラータから問い合わせがきています。ヒカリの話の内容から麻酔、麻薬、鎮痛剤の参考になりそうな薬の情報開示で良いのか、と……」

 あたしは頭を切り替え、紙に書かれている内容を確認した。

 確かに麻酔、麻薬、鎮痛剤があればかなり助かる。欲を言えば抗生剤も欲しいけど……。検査も出来ず目に見えない細菌やウイルスに効く抗生剤を発見するなんて、かなり無謀だ。

 そこまで考えると、ふと疑問が湧いた。

 こちらではそもそも、炎症がおきた時どうしているだろう?

「あの……炎症がおきた時って、基本的にどう対処してるんですか?」

「炎症ですか?」

「はい。傷口が膿んだり腫れたりして、熱をもって赤くなった時です」

「ポーションを使いますね」

「ポーションしかないんですか?それで困ったことは?」

 ヘルムートは口元に手を当てて考えた。

「特に感じた事はありません。過去の戦でも同じです。治癒ポーションにもレベルがあるので、軽度な傷と重度な傷で使い分けますから」

「そうですか……。ポーションがない、ってことはないんですか?」

「ありませんね。それこそ有事の際でもあり得ない。僻地にいる庶民にもゆき渡るように、製薬部門と商会で仕組みが作られていますから」

「アザルスではポーションが不足してたんですけど……」

「それはあの馬鹿王族が怠慢なだけだ。どの国でもそんな事にはなり得ない」

 ラディウスがすかさず教えてくれた。

 

 そうか……。消毒かポーションでどうにかなっているなら、抗生剤の必要性は低いかな。


「だったら麻酔、麻薬、鎮痛剤の3つで大丈夫です」

「分かりました。グラータには返事をしておきましょう」

 書類を引き取ると、

「では次ですが……」

 今度は豪勢な封筒を3つ出された。

「近々、ネイブル、ユタル、リリナから公式訪問があります。ヒカリも顔を出してください」

 また?

 立て続けに訪問があるな……。

「表だったあたしの視察ですか?」

「表向きの理由は違いますが、十中八九、そうでしょう」

「同時に3ヵ国ですか?」

「そうですね。夜会の事を考えると、まとまって来てくれた方が助かります」

 訪ねられる方はそうだよね……。

「ネイブル、ユタルは北部の寒冷地の国です。夏のこの時期でなければ雪で埋もれて身動きが取れませんから、時期としては妥当です。リリナは周囲を海に囲まれた島国ですね」

「海?リゾートですか?」

「りぞーと?」

 怪訝な顔でラディウスがこちらを見ると、

「以前から思っていたが、ヒカリはよく分からん単語を使うな……」

「英語だよ。リゾートっていうのは……ええっと………保養地?観光地?」

「あぁ、確かに行楽地としておすすめですね。常夏の国なので日差しが強いですが、青い海は綺麗ですし、鮮やかな花々は美しいですよ」

 

 きっと海水浴したり、海辺でご飯食べたりするんだろうなぁ。沖縄も行ったことないから、海のリゾート地って未経験だ。

 

「うわぁ……凄く素敵!ソルセリルも四季があるけど、常夏の国はまた違った良さがありますよね!」想像してワクワクしたテンションで言うと、

「なんだ?ヒカリは観光がしたいのか?」

 ラディウスは意外そうな顔をしていた。

「したいよ!地球とは全然違う食べ物とか風景とか見られるし!」

「そ、そうか……」 

 テンション高く言うあたしに、ラディウスは少し引いていた。旅行に興味ないのかな?

「ソルセリルも満足に観れてないけどね。王都から出たことないし」

「……そう言えば、以前にも言っていたな。世界には楽しい事、知らない事に溢れてると」

 魔獣の森の時に言ったことを覚えてるんだ。

 結構以外。適当に聞き流していると思ってた。

「見たことないもの、食べたことない物、聞いたことない物……。それを知るのが楽しいんだったか?」

「そうそう!アラシャの話は少し聞けたけど、グラータはどんな国か聞けなかったな。残念」

「グラータはすぐ隣だろう?いつでも行けばいいじゃないか」

「ラディウスが迂闊に行くな、って言ったんじゃん……」

「まぁそうだが……。俺が一緒に行けば問題ないだろう」

 

 ん?一緒に?何か訪問予定でもあるのかな?

 

「近々赴く予定でもあるの?」

「……………………そのうち出来る」

「そのうち?」

 ヘルムートは口を笑みの形にしているが、何かあるのかな?

「確かに、薬の件がありますからね。グラータを訪れる機会はありそうです。2()()でご一緒に行かれればよろしいかと」

 なんだか『2人』を強調した気がする……。

「話が逸れましたが、ネイブル、ユタル、リリナの訪問は1週間後です。しばらくは3か国について勉強しておいて下さい」 

  

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