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この世は勇者であふれてる  作者: 栢瀬 柚花
それぞれの思惑

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34/68

交渉


 国王同士の謁見が終わると、あたしは別室で待機した。やや興奮した気持ちで、体がじんじんと痺れるように疼く。

 毒と麻酔の話が聞ける機会が巡ってくるとは、思ってもみなかった。先ほどの和ごんだ雰囲気のまま話が続けられるのもありがたい。場の空気が暖まっているから、話も切り出しやすいと言うものだ。

 

 一人で待っていると、先にヘルムートが入って来た。

「ラディウス陛下には、話したい内容を伝えています。医療体制案の件だとお伝えしましたが、合っていますか?」

 さすがヘルムート!何も言っていないのに全てを察して手を回してくれた。さすが王佐、シゴデキ!

「ええ、それで合ってます。麻酔と毒の話を伺いたかったので」

「グラータは毒虫による死亡件数が多い国ですからね。それを知った上で薬の事を聞きたいのでしょう?」

「そのとおりです」

 ヘルムートは私の横に掛けると、引き締まった仕事モードの顔であたしを見た。

「禁書庫で色々と調べましたが、やはり麻酔に該当するような毒は、単体の薬草では作れそうにありませんでした。催眠作用の薬草、痺れ効果の薬草、一時的な麻痺作用がある薬草……。それらを組み合わせて配合する必要がありそうです。しかし、そうなると開発はかなり難航するでしょう。人体実験も繰り返す必要がある……」

 

 やはりそうなのか……。

 薬となれば体格、年齢でも投与量が変わってくる。ましてやソルセリルは多種族国家。

 各種族での適正量を見つけるとなると……相当に時間がかかる。

 

「グラータは森林が多いという特性上、毒虫や害虫被害が絶えない。そのため長きにわたり、国を上げて薬の開発・研究を行ってきました。しかしその知識も情報も、国外に出すことは決してなかった。独占し続けています」

「そ、そうなんですか……」

「一番の理由は悪用を危惧しているからです。薬は毒と紙一重。それを重々承知しているからこそ、独占し続けている。助けるための知識で、誰かを殺めてほしくないからでしょう」

「……それは分かります」

「そんな頑なグラータを、ヒカリがどう説得するのか。かなり見ものです」


 あたしはそう言われ、一気に緊張した。場の雰囲気のまま話ができそうと高揚していたのに……。

 プレッシャーがズドン、と両肩に乗るのが分かる。胃が重くなった。


「あんまりハードルを上げないで下さい……」

「ハードル?」

「難易度を上げないで、って事です」

「ああ、なるほど」

「さっきまでかなり軽く考えてました……。完全に国同士の交渉じゃないですか……。あたし、そういうの、した事ありませんよ?」

「おや、随分と弱気になりましたね?ヒカリ」

「そんな話を聞かされたら、誰でもこうなりますよ!国外不出の情報を聞き出すとか……考えただけですでに吐きそうです……」


 高揚が一転して吐き気に変わり、あたしは唸った。

 すこぶるプレッシャーに弱いから、きっと青ざめてるんだろうな……。 


 そんなあたしにヘルムートは、

「大丈夫ですよ」

 と微笑を浮かべた。

 彼もラディウスと同じで、滅多に笑わないから貴重な笑顔だ。

「ヒカリは自分の野望を話すだけでいい。私に薬や容器の説明をした時の事を覚えていますか?あれと同じです」

「あれは細々と考えずに、質問されたことに答えただけですよ?門外不出の知識を聞き出すのとは、全然違います……」

 弱腰な声でそう言ったが、ヘルムートは強く「いいえ、同じです」と否定した。

「私は最初、全く興味を示していなかった。しかし数々の覚え書きの内容、ヒカリの発想に強く感銘を受けました。奇抜で独創的な着想もそうですが、何より惹かれたのは、ヒカリの真剣な顔です。あれと同じ事をすれば良いだけです」


 決して慰めで言ってるわけではないと分かる、真剣な眼差し。

 成功の実績があるから、不安を抱かなくていい。

 そう言っている。

 あたしはその瞳にかなり背中を押された。


「この私を説得できたのです。自信を持ってください」




 アリウェ陛下とその側近、そして初めて顔を見る中年男性。彼ら3人は静かに部屋に入って来た。

「突然の話し合いの申し出を受けて頂き、ありがとうございます、アリウェ陛下」

 あたしは立ち上がると、ドレスの裾を持って会釈した。

 交渉はすでに始まっている。あたしの一挙手一投足が全ての鍵を握っている。ミスは出来ない。

 

「いえいえ。先ほどはかなり楽しい話ができましたので、私ももう少しヒカリ殿とお話がしたいと思っていました」

 アリウェ陛下は破顔してそう言うと、向かいのソファに掛けた。それを合図に中年男性も腰を掛け、あたしとヘルムートも座る。

 あたしは緊張して手に汗を感じた。

 この笑顔がいつまで続くか……。

「それで?お話と言うのは?」

 あたしは政治的手腕もなく、交渉術も知らない。ただのしがない一般市民だ。

 だから、単刀直入にいきなり本題を切り出した。

「グラータに伝わる毒と薬の情報が欲しいのです」

 

 場の空気は一気に変わった。目に見えるかのようにピリッと引き締まり、温度が下がる。

「――それはどういうことでしょう」

 アリウェ陛下は変わらず笑っているが、目の奥は氷のように冷たく光がない。口だけを歪めて笑みの形を作っているのが不気味で、あたしは思わず息を呑んだ。

「言葉通りの意味です。わたしは今、麻酔の開発に取り組んでいます」

「麻酔……」

「様々な書物を調べましたが、催眠作用の薬草、痺れる効果の薬草、一時的な麻痺作用がある薬草……そう言った知識は載っていますが、麻酔と言えるものはありませんでした。麻酔はそれらを組み合わせて配合しなくてはいけない。適正量を見つけるには、相当な時間がかかるでしょう」

「……それで?」

「すでにグラータは、その研究結果をお持ちなのでは、と思ったのです。もしかすると麻薬についても……。それを教えて頂きたいのです」

 

 説明を続けるにつれ、アリウェ陛下の笑みは崩れていった。今は口を真一文字に固く結んでいる。

「……すでに調べているのなら、それらの薬草を配合してみればいい。アザルス王国との小競り合いが終わった今、近々に迫った戦があるわけでもないのです。時間をかけてゆっくりと研究をされればいい。召喚者は寿命が長いのでしょう?魔族の方々も同じだ。我々人間と違い、時間はたっぷりとあるのだから」

 

 それはそうなんだけど……。そうじゃない。

 

「そう言うわけにはいきません。麻酔の最適量を見つけ出すまでに、相当な時間が必要になります。それにソルセリルは多民族国家。各種族の体質や特性、更には年齢、体格、過敏症の有無……それら全てを考慮していたら、時間がいくらあっても足りません。人体実験も相当必要になる」

「新薬開発とはそう言うものです。我が国でも同様だ。犠牲なくして得られた薬は一つもなかった。その命も時間も費用も、我が国が払って得た知識であり、情報だ。おいそれと他国に開示する必要はない」

「それはごもっともですが……」

「ならば、諦めて頂きたい。第一、薬は人間用です。魔族の方々に合うか分かりませんよ?お教えしたところで、どのみち人体実験は必要になる」

「それでも実用化に至るまでの時間に、雲泥の差が出ます。人体実験の回数も大幅に減らせる」

「ですから、ソルセリルにそこまで手を貸す義理はないと言っている」 

 ハッキリとした口調は有無を言わせない迫力があった。

 気詰まりになった空気を更に息苦しい物に変えたその声は、あたしから言葉を奪い、喉に蓋をした。

「ラディウス陛下に関しては共感するものがあったが、あれは飽くまで私的な話。仕事とは切って考える」

 今や睨むような批判的な目をしたアリウェ陛下は、あたしにさらなる追い討ちをかけてきた。 

「貴方は、ソルセリルの各種族が人間に対して何を行ってきたか、理解した上で助けようとしているのですか?」

 

 ――なに、それ?

 人間と魔族達との間に、何かあるの?

 

「い、いいえ……」

「なぜ魔族の国がこれまで出来なかったのか、ドワーフ、エルフ、獣人族がここまで人口減少した理由は?多民族国家であるソルセリルに、人間がほとんど暮らしていない理由をご存知か?」

「………………いいえ」

「何も知らず、なぜ手を貸すのです?ますばそれを知ってから発言されよ。人間のために開発をすると言うなら手を貸したかも知れないが……。残念です」

 

 決定的に話を打ち切る言い方だった。

 空気もアリウェ陛下の顔も、隣に座る中年男性の表情も、これ以上話し合う事はない、と暗に告げていた。


 でもここで引き下がるわけにはいかない。

 

 ヘルムートがさっき言ってくれた事を思い出し、あたしは折れそうな心を何とか立て直した。

「生憎と異世界から来た私は、各種族と人間のいざこざについては一切知りません。知っておく必要はあると、今のアリウェ陛下のお顔を見て思いましたが……。それでも、過去の蟠り《わだかまり》の話は関係ない」

「――関係ない?」

「わたしは『今』の話をしているのです」

 

 知らずのうちに、あたしは体を乗り出していた。緊張で冷えた指先に力を入れて、決意が揺るがないように固く握る。

 

「陛下は、目の前で獣人族が血だらけで助けを求めてきた時、同じ事を言えますか?『獣人族とは過去に諍い《いさかい》があったから、助けてやらない。獣人族が過去に人間に酷い仕打ちをしたから、むざむざと死ね』と言うのですか?」

「それは――」

「アリウェ陛下が先ほどおっしゃたのはそう言う事です。過去の事なんて関係ない。かつて犯した罪は消えない。無かった事にも出来ない。だからといって、それに囚われて何もかも閉ざしてしまうのは違う。何も進まない。これから生まれてくる命のためにならない」


 アリウェ陛下はわずかに唇を噛みしめると、強く言い返してきた。

「それでも、薬の情報を開示する理由にはならない。大体、ヒカリ殿は何のために麻酔を開発したいのです?」

 あたしは話して良いのかヘルムートに確認しなかった。ここで渋っても仕方ない。

「外科的医療体制を広めるためです。回復魔法師なしでも治療が受けられる医療体制を根付かせることが目標です」

 

 これにはグラータの3人とも、大きく目を見開いて愕然としていた。

「そんな事を?」「あり得ない」 

 しかしアリウェ陛下だけは何も言わなかった。驚愕しているが、否定しない。

 

「ヒカリ殿とは今日が初対面ですが、色々と驚かされる。貴方はどこまでも未知な人だ」

 決して褒めているわけではないと分かったが、あたしに興味があるのは確かだろう。

 睨みつける目から好奇の目に変わったのが分かる。

 

「なぜヒカリ殿はそこまで考えているのです?魔法が根付いたこの世界で、外科的治療をするなど、賛同者がいるとは思えない。ラディウス陛下もヘルムート殿も、それを重々承知しているはず。にも関わらず、止めない」

 

 アリウェ陛下は横に座っているヘルムートを見た。

 この話し合いが始まって一度も口を開いていない彼は、説明を求める強い眼差しを向けられても、頑なに発言しなかった。

 あたしに一任している、と言うように。

 

 しばらく待ってもヘルムートが口を開かないので、アリウェ陛下は諦めて再びあたしを見る。

「ヒカリ殿。貴方は召喚者だ。この国にもこの世界にも、愛着や執着があるとは思えない。なぜ外科処置や麻酔、回復魔法師なしの医療体制の確立など、途方もない道を歩もうとされる?せっかく得た友人を不快にさせ、あまつさえ繋がりかけた縁を切ろうとしてまで?」


 つい最近、ヘルムートにも同じ事を言われた。

 あの時は「なんとなく」と答えたが、その後、自分に自問自答してみた。

 明確な答えは見えなかったが、頭に浮かんだことはある――。

 

「私には前の世界で亡くした家族がいます」

 急な告白に、グラータの3人はわずかに目を細めた。かすかな痛みを孕んだ目はしかし、すぐに元に戻り、あたしの言葉の続きを待つ。

「その人達は、いつも笑ってあたしの心の中にいる。目を閉じればいつでも会える。命尽きても、あたしの中で生き続けています。だから、本当の意味で死んではいない――。

 それでも、時間が経ては経つほど遠くなる……。まだ10年しか経っていないけど、細かなクセを忘れてきています……。きっと時間の流れとともに、もっともっと忘れていくのでしょう……。

 アリウェ陛下の言う通り、わたしには召喚と引き換えに得た長い寿命があります。そのせいで、やがては家族の声も顔も、どんどん薄れていくのでしょう……。でもどんなに霞になろうとも、決して消える事はない」


 今だって目を閉じなくてもそこにいる。

 あたしを見ていてくれる。


「例え志し半ばで倒れたとしても、やるだけの事を精一杯やって頑張っていれば、『お前はよくやった。頑張った』と最後に笑ってあたしを迎えに来てくれる……。

 でも、あたしが出来ることをせず、諦めて、助けられる人を見逃したり、見捨てたりしたら、家族はもう笑ってくれなくなる……。目を閉じても、支えて欲しい時も、励まして欲しい時も、最後の時になっても、笑ってはくれない――。それが嫌なのです」


 笑顔を向けてくれない家族。

 あたしは支えを無くしてしまう。

 想像しただけで涙が出てくる。

 田岸さんがかなりその穴を埋めてくれているけど、決して塞がる事はない。

 血縁の家族しか住めない心の場所があるから。


 あたしは涙がぐっとこみ上げてきて、声を詰まらせた。

 でも、話さないと。

 感傷に浸っている時じゃない。

 顔を上げて、滲んだ視界でグラータの人たちを見た。


「ソルセリルのためでも、この世界のためでもない――。私自身のためです」


 そこに崇高な理由も、高い志しもない。

 プライドでもなく、ただの自分の心の支えのため。


「どこまでも利己的な理由しかありません……」


 目が完全に涙で埋まり溢れ出しそうだったので、あたしは俯いた。

 こんな風に泣くつもりはなかった。だから声を出さず、肩を細かく震わせて静かに耐えた。

 もう遅いと分かっているが、泣いていると気が付かれたくなかった。だって、泣き落としのように説得したと思われたくない。

 必死に心を落ち着こうと思えば思うほど、嗚咽が漏れそうになる。だから手の甲を爪を立ててつねった。気を紛らわせ、深呼吸して、涙が尽きるのを待つ。


「そうですか……」

 アリウェ陛下の声が静かに部屋に響く。

「確かに自分勝手で自己中心的。そして純粋で真っ直ぐな理由だ」

 静かな同情を孕んだ声に、あたしは顔を上げた。

 酷い泣きべそ顔だったと思うから、伝う涙を拭って痕跡を消す。少しはマシな顔になるように。

 

 アリウェ陛下もグラータの幹部の人達も、静かにあたしを見ていた。

 その目には寄り添うような温かみが見て取れる。

「『魔力があるものを殺す力』……。きっとヒカリ殿だからその力を授かったのでしょう。他の誰でもない、貴方が選ばれて良かったと思います」

 アリウェ陛下はそっとハンカチを差し出してくれた。

「貴方の志はよく分かりました。他の誰のためでもなく、自分を支えるためだというのなら、逆用したり乱用したりはしないでしょう」

 この部屋に入ってきて一番温かい眼差しを見せると、 

「薬情報の開示を検討しましょう」

 アリウェ陛下はそう言った。

 

 あたしは自分の耳を疑った。

 ほとんど理由とは言えない理由だったのに。

 

「――よろしいんですか?」

「ええ。これはソルセリルへの貸しになる。今後、ラディウス陛下と交渉する時に優位に立てる。悪くない」

 あたしは差し出されたハンカチを受け取った。化粧が付かないようにそっと使わせてもらう。

「どうぞ、ゆっくり心を落ち着けて下さい」

 

 アリウェ陛下にそう言われ、あたしはゆっくり目を閉じると深呼吸を繰り返した。 

 肺に新しい空気を送り込み、思いもよらず泣いてしまった後悔や羞恥心を、吐く息とともに押し出す。

 説得しなきゃ、説明しなきゃ、という尖った気持ちが溶けて形を無くしていく。

 さっきつねった手の甲の痛みが、今になって脳に届いて、僅かな疼きを呼ぶ。その痛みは心の静かさを取り戻させ、あたしの中の家族が小さく「よくやった」と褒めてくれた。


 うん。頑張ったよ。


 あたしが手を振り返すと、みんなも振り返してくれる。

 それを確認すると、ゆっくり瞼を開けた。

 


 アリウェ陛下と目が合うと、少しだけ微笑んだ。彼は小さく頷くと、「お茶でも飲みましょう」と隣に立つ臣下に目配りする。合図を受けた男性はメイドさんを呼んでくれた。


 

 新しくお茶が入れられ、あたしが半分を飲み終わる頃には、涙もすっかり乾いていた。

「取り乱して申し訳ありませんでした……」

 小さくなって謝罪する。 

「いいえ。こちらとしても、泣かせるつもりはありませんでしたから……。申し訳ない」

「いえ……。あたしが勝手に気持ちが昂ぶってしまっただけなので」

 アリウェ陛下は困ったように笑うと、

「それにしても、ヒカリ殿は自分の功績を一切駆け引きに出されませんでしたね?」

 足を組み、意地悪く笑った。

「功績?」

「ヒカリが作った非魔法付与薬のことです。それに数々の容器。あれらは我が国にも輸入されているのですよ?」

「え?」

 そうなの?知らなかった……。

「かなり重宝しています。国民からの受けも入れもいい。十分な実績と功績です。それを交渉材料にすればよかったのに……。全く持ち出して来ず、我々を納得させてしまった」

 

 相当大きなカードを握っていたという事か。

 でも輸出してるなんて知らないから、手札にはなり得なかった。

 

「ヒカリ殿はなかなか恐ろしい人ですね。あのラディウス陛下が変わるのも分かる気がする。ヘルムート殿」

 アリウェ陛下はこの国の王佐を見ると、困ったように顔を歪めた。

「貴方も人が悪い。こんな大事を彼女一人に任せ、助け舟も出さないとは……」

「しかし、それが良かったでしょう?」

 ヘルムートはやっと声を出した。

「私がいらぬ横槍を入れる必要なんてありません。ヒカリ一人でやってのけると思いました。そして見事、その通りになった」 

 ヘルムートに会って初めて見る、満面の笑み。

 写真を撮れないのが恨めしいくらいの眩しくて美しい笑顔だった。

「……あなたがそこまで評価するとは……。本当に末恐ろしい人ですね、ヒカリ殿は」 

 アリウェ陛下は重かった空気を一掃するように笑うと、あたしに手を差し伸ばした。

「これから長い付き合いになりそうだ。どうか、良い縁が続くようにお願いしたい」

 あたしはゆっくりとその手を取った。


 何とか成功した。

 また一歩前に進めた。

 あたしは熱が冷めやらない頬を何とか持ち上げて微笑んだ。多少不細工でも許してほしい、と思いながら。

 

「ありがとうございます、アリウェ陛下。どうぞよろしお願いします」

  

 

読んでいただきありがとうございます!とても励みになっています。

誤字・脱字報告もありがとうございます。助かっております。

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