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この世は勇者であふれてる  作者: 栢瀬 柚花
紛争と敵意

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102/131

誘拐


 大柄の男と目つきが鋭い女は、ラディウスの殺意のこもった視線をものともせず、平然とした顔で歩み寄ってきた。

 騎士達の屍を石のように踏みつけ、蹴り飛ばし、真っ直ぐに歩いてくる。


 エッダが弓を放つも、防御魔法に弾かれて明後日の方角に飛んでいった。何度か威力を上げて放っていたが、ことごとく弾かれ舌打ちしている。

 グスタフは剣を握る手に力を込め、遠距離からの斬撃を放つ。属性魔法と組み合わせ、雷、風をのせて数回挑むが、複数枚の防御結界を砕くだけで、すぐに再生する結界に阻まれ傷を負わせることは叶わなかった。

 相手も魔法の熟練らしい。

 エッダ、グスタフは眼光鋭く向かってくる2人を睨んでいる。


「やっとお目にかかれたな」


 ラディウスが周りの戦闘音に負けないくらい声を張り上げて言う。

「会えて嬉しい」

「それは光栄なことね」

 女の声は思ったよりも妖艶で、綺麗だった。

 冷たい氷を連想させる声はうるさい戦場に場違いなほど響き、よく通った。

 

「男からそんな言葉をかけられるなんて、結構疼いちゃうわ」

 冷たく微笑む女は両手に剣を持ち構えたが、まるで戦う意思がないかのような、リラックスした姿勢だった。


「しかも魔王って結構いい男ね……。いい男は殺しがいがある……」

 ペロリと舌なめずりし、嬉しそうに笑む。

 その顔にゾクリと悪寒が走った。


 なんの前触れもなしに、大柄の男と女は走り出した。

 すかさずグスタフが迎え撃ち、大柄の男を足止めする。剣と剣がぶつかり火花が散るが、女はその横を一直線に疾風のごとく駆ける。

 エッダが剣を取り出し女と激突するも、華麗に薙ぎ払って素早く体勢を変え、エッダの腕を切り裂いた。

 まるでダンスを踊るかのような華麗な身のこなし。ターンすると髪が揺れ、服の裾がふわりと舞う。そして楽しそうに笑う。

 エッダは血を出しながらも戦意を落とさず、慣れないであろう剣を構え続けた。

「あたし、女との殺し合いは好きじゃないの。疼かないから」

 ラディウスに話しかけた時とは全く違う声音。氷の刃のようだった。

 女は楽しげな表情から一転し、

「どきなさい」

 次の瞬間、素早く両刀の刃が振り下ろされ、エッダを深々と貫き、割いた。

 大量の血飛沫を上げながら崩折れると、それに目もくれず、女はこちら目掛けて走る。

 あたしは声も出せず、ぐったりと動かないエッダを見た。


 女はラディウスに近寄ると、両刀をまた振り下ろす。

 ラディウスは剣を構えることもせず、指を鳴らした。

 すると女が手にしていた剣が弾け飛び、本陣より遥か遠くまで飛んでいく。

 

「あらあら……武装解除?しかもあんなに遠くまで――」

 まるで帽子が風に飛ばされたかのように、のんきな言葉。

「魔力抑制がかかった中でもこんな簡単に武装解除するなんて……相当な魔力なのね?素敵」

 武器を失ったとは思えない程、余裕がある表情をしている。それでも糸を張ったような緊迫感はあり、ラディウスと女は互いから目を離さない。


 武器のない女は構え直すと、なんと素手で挑んできた。

 華麗に蹴り、打拳、指頭術を繰り出し、体の向きをくるりと変え、腰を捻り柔軟な女の体を最大に活かして体術を仕掛けてくる。

 あまりにも優雅な動きで、平時であれば魅入っていただろう。それほどに見事な身のこなしだった。


 ラディウスは動じることなく剣で動きを弾き、魔法攻撃を繰り出している。

 あたしは五重に防御魔法を展開させ、せめてラディウスの邪魔にはならないように、少し後ろで耐えていた。


 どうか怪我をしませんように……

 そしてエッダ――どうか無事でいて…………

 グスタフも……


 人の心配ばかりで、自分の事が疎かになっていた。

 

 だから気が付かなかった。

 足元に仕掛けられた罠に。


 ジリジリと女とラディウスが戦闘しつつ場所を移動する中、あたしも邪魔にならない所へ足を進めていると、地面に違和感を感じた。

 明らかに感触が異なる部分。

 嫌な予感がして下を見ようと視線を下げた瞬間、防御魔法の結界内で空気が弾けた。


 何が起こったのか分からなかった。

 ちょうど雷のように、光と音がほんの少し違和感をなしてずれたような感じだった。

 花火のように散る火花。

 熱気と焦げた匂い。血の匂い。

 あちこちの焼けるような体の痛み。 

 それから意識は暗転して、分からなくなった。


 


 

「ヒカリ!!ヒカリッ!!」


 

 大声に目を開けると、ラディウスの焦燥感ある声が耳に飛び込んできた。

 冷たい地面、剣が交わる音、野太い怒鳴り声……。

 そしてラディウスと女が変わらず対峙している。

 

 ボッーとしながらも、状況が変わっていないことから、倒れてからさほど時間が経っていないと分かった。


「ヒカリっ!返事しろっ!!!」

 悲痛なラディウスの声に被せて、

「あらあら……婚約者は死んでしまったの?」

 女のいやらしいくらいの甘い声が聞こえた。

「黙れっ!!」


 全身があちこち痛かった。

 さっきの罠で何をされたのか分からなかったが、とにかく何とかラディウスに生きてることを知らせないと……


 そうとしか思わなかった。

 

 あたしは風を送り、

「『愛してる《だいじょうぶ》』」

 呟いた。

 届いた日本語にラディウスは思わず振り返る。

 安堵した瞳が交差し、互いの無事を伝え合った。


 

 女はその隙を見逃さなかった。

 

 ラディウスの背後の空間が歪み、突如として剣の切っ先が煌めいた。冬の薄曇りの太陽に反射した剣は刹那にラディウス目掛けて飛び出し、彼の体を貫いた。


 

 あたしは声も出ず、目の前で苦痛に顔を歪めるラディウスしか見ていなかった。

 

「「陛下っ!!!」」

 グスタフの声と、エッダの弱々しい声が重なる。


 あたしは叫んでいたが、その自覚はなかった。まるで知らない誰かの声を聞いているようだった。


 

 大柄の男が全員の隙をついて動く。

 次元魔法で一瞬にしてあたしの前に現れると壁のように立ちはだかり、あたしに手を伸ばす。

 190センチはある大柄の男の腕は丸太のようで、手も大皿の如く大きかった。それが目にも留まらぬ速さであたしの首を掴んだ。

 

 怖いとか殺されるとか思う暇もない俊敏な動きで、しゅっと心臓が冷えるより早く、次の瞬間には体が宙に浮いていた。

 

「がはっ……!」 

 気道を塞がれ声を出すことも息をすることも出来ず、喉に食い込む太い指の感覚だけがはっきりと分かる。

 

 振りほどこうと爪を立てて男の手に食い込ませた。

 足をバタつかせて膝や太腿を蹴り、急所に当たらないかと膝を曲げてキックを食らわせたけど、全部空打ち。

 罠にかかった時あちこち怪我をしたから、動かす度に体が痛い。たまに蹴り上げてもあたしのひ弱な筋力じゃ微動だにしない。

 

 ならば……と空間魔法と水魔法で口と鼻を塞ぎ、窒息の反撃を試みるが、大柄の男は表情一つ変えなかった。

 まるでエラ呼吸ができる魚のように涼しげな様子で、あたしの首を絞めたまま殺意を込めた刺すような目を向けている。


 力任せに締め付けられ、宙に浮いている自身の体重もそこに加勢しているから、喉がとても苦しい。

 恐ろしく深く食い込む指が息を吐くことも吸うことも許さず、顔が鬱血していくのがわかった。

 

 朦朧とする……。耳鳴りがして視界が陰る……。

 これが暗転してしまったら、それは、もうすぐそこに死があるということ……。

 

 それは嫌だと、また爪を立てて全力で男の手を痛めつけようとした。爪先が食い込んで血が出ていると分かるのに、小さな棘が刺さっている程度の反応も示してくれない。

 

 足を動かす力もなくなってきた……。

 あまり動くと首にさらに自重がかかる……。

 諦めてダラン……と力を抜き、締め付ける男の手への攻撃を再開したけど、もう長くは続けられそうになかった。

 目が霞む……。

 耳が塞がれたように聞こえにくくなる……。

 指にも力が入らなくなってきた――。

  

「ヒカリッ!!!」


  

 霧がかかり始めた頭でも聴覚は生きていて、その声がラディウスであるとすぐに分かった。


 良かった……

 剣が貫いたけど、生きてた――

 

 名前を呼び返したかったが、当然そんなことは出来ない。

 目だけを動かしてなんとかラディウスの姿を捉えようと顔を動かしたかったけど、それも許されないほどに、体に力が入らなかった。


  

 最後に目に映るのがこんな大柄の男だなんて……。


  

 涙が出て目尻に溜まると、急に地面に両足がついた。力が入らなくて膝がカクンと曲がり倒れそうになるが、背中に誰かの体が添えられて転倒は免れた。そして首に食い込んでいた力が弱まる。

 

 急に楽になった喉は通り道を取り戻し、本能がすかさず呼吸を始めた。

 

「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ……」

 

 死にたくない体が懸命に酸素を求めているが、咳がそれを邪魔して喧嘩を始めた。

 ずっと空気を求めていた肺までがそこに参加し、逆流する叫びのように暴れる。

 胸も喉も気管も熱くて痛くて、まだ声帯を震わせる余裕がない喉は声を出すどころじゃなかったから、なんとか目だけを開けた。


 

 どうしてもラディウスを見たかった。

 助けてくれたのも、今背中に立っているのも彼であると信じたかった。


 

 でも現実は違って、歪む視界に映ったのは、あたしから離れた場所で剣を構えたまま立つ、ラディウスの姿だった。

 腹部から血を流しながらも立っている。

 怒りと悲しみ、憎しみが混ざった表情でこちらを睨みつけていた。

 

 そんな顔は見たことがなくて、お腹に氷を入れられたかのように背筋が冷えた。


 どうしたの?怒ったの?

 あたしがヘマをしたから?

 あたしのせいで怪我をしたから?

 


 そう聞きたかったけど、また喉に太い指が絡みついたことで問いかけるチャンスは失われた。

 さっきよりも拘束力がないけど、またいつ締め付けが再開されるか分からない空間の余裕があり、それが死への恐怖を掻き立てた。


  

「動くな」

 

 知らない野太い声が頭の上から降ってくる。

 酸欠の頭では、どうやら大柄の男が喋ったらしいと理解するまでにしばらく時間がかかった。

 

 喋れると言う事は、あたしの窒息の攻撃魔法は意識が混濁した時点で解除されたらしい。 

 決死の反撃は何の影響も与えなかった……。

 その証拠に今も捕まったままで、知らない声、岩のように固い体、丸太みたいに太い腕、嗅いだことのない汗の匂い――こんな嫌悪しか感じない男に命を握られている。

 

 男の全てをあたしの体は拒否していた。窒息死させられる以上の強い拒絶が、心を埋め尽くしている。

 

 いやだ。無理。

 触らないで。

 近くに来ないで。


 

 防衛本能が「危険」を察知して強く警鐘を鳴らし、早く逃げろ、離れろと、うるさいくらいに叫んでいた。

 でも否応なく首を掴まれ、窒息するより首を折られるんじゃないかという恐怖が足を、手を、唇を震わせて、何もできなかった。


  

 遠くに立つラディウスを見る。グスタフ、エッダの姿も見えた。

 全員が酷く焦った、痛そうな顔をしている。

 

 特にラディウスが――。

 見ていられないほどの苦しい顔をしていた。


  

 ごめん。

 ごめん。

 ごめんなさい……。

 そんな顔させたくなかった――。

 あたしがヘマをしたから…………。


  

 足枷にはならないって決めてるのに、ラディウスに辛い思いはさせないって自分に誓ったのに、何も守れていない――。


「ラディウス……」

 

 謝りたかったのか、ただ名前を呼びたかったのかは分からない。

 

 ほぼ無意識に名前を呼んでいた。

 緊張と恐怖と喉の痛みで掠れた声しか出てないはずなのに、ラディウスには届いたとはっきり分かった。 

 彼は苦悶に表情を歪め、固く唇を引き締めたのだ。

 

 そしてあたしを見て確かに言った。

 

「待っていろ。今行く」

 

 風話ではないと絶対に届かないはずの声が、心に聞こえた。

 まるですぐ隣にいるような、手を握られているような勇気が灯る。恐怖と緊張で挫けそうだった心が立ち上がり、あたしも唇を噛み締めた。

 

 泣かない。

 諦めない。

 死なない。

 こんな状況でもめげない。

 

 そんな決意がラディウスに伝わったのか、彼は小さく頷いた。


  

 大柄の男はそんな僅かな動きを見逃さなかった。ラディウスとあたしが何やら通じ合ったとわかったのだろう、首にかけた指に力を入れて圧迫を始めた。


 また酸素が奪われる。喉が閉じる。声が奪われる。

 

 でもさっきみたいな絶望的な苦しさじゃない。

 細く隙間があって、かろうじて息ができるのだ。

 でもそれは慈悲じゃなくて、わざと。

 

 背中にいる男はラディウス達にあたしの苦痛の表情を見せつけるため、あえて緩く首を絞めて、長く苦しませようとしているのだと分かる。

 本当に狡猾で卑怯だ。

 

 

「お前、何が望みだ」

 ラディウスの声が遠くから聞こえる。まるで別の世界から聞こえてくるような、小さなかすんだ声だった。

 

「知らん」 

 大柄の男は短く答えた。

「俺は目的も理由も知らん。ただ女を殺せと言われているだけだ」

 あたしは人質になりながらも、大柄の男の言葉に耳を傾けた。


  

 ただ女を殺せと言われている――。

 

 つまり指示を受けているだけ、という意味だ。

 命令した者がいると告白したことになるが、こうもあっさりと話したということは、糸を引いている者は簡単に尻尾を掴ませない自信があるのだろう。

 もしくは掴まれても構わない策がある。


 

「お前は今まさにヒカリを捕らえているが、なぜ手にかけない?」

「合図するまで殺すなと言われているからだ」


 合図――。

 それはいつ、どんな形で出されるのか……。

 

 ゴーサインが出ればあたしの命なんて呆気なく奪われるだろう。生殺与奪の権は完全に大柄の男が握っている。


「合図がないなら、このままゆっくりお喋りでもするか」

 ラディウスは一歩前に進んだ。

 軍服に染み込んだ血が痛々しい。

 ポタリと腹部から血が滴る。


 大柄の男は指に力を入れ、喉の締め付けをきつくさせる。また気道が狭くなり、呼吸が上手くできなくなった。

 あたしの顔色が赤黒く変わったのか、ラディウスはそれ以上の歩みをしなかった。


「それでいい。動くなよ」

 牽制がラディウスに効果があったと知ると、大柄の男は少し圧迫を緩めた。

 

 あたしは小さく咳をする。喉の違和感がずっと残っていて、もっと咳き込みたかったが、それをするには苦しすぎた。もっと首の圧迫を解除してくれなければ困難で、しかし大柄の男がそれを許すとは思えなかった。

 

「男と話すのは嫌いか?」

「誰とも話をするのは好かん」

「寂しいことを言うな」

 

 裏で糸を引く者からの合図を待つ間、説得でもしようというのか、ラディウスは大柄の男に話しかけ続けた。

 

「お前はずっと雇われているのか?」

「根掘り葉掘り聞き出そうと思うな。隙を窺っても無駄だ。そっちのドワーフも獣人族も、コソコソと探索魔法を使うのは止めろ」

 

 グスタフとエッダが僅かに眉を動かした。

 ラディウスが話しかけている隙に、あたしを救出する手立てを探ろうとしてたのだろう。


 

 大柄の男はぐっと腕に力を込めると、あたしの喉を掴んだまま上に持ち上げた。ラディウス達の方を見たまま両足が地面から離れ、またブランと宙に浮く。

 

 顔が苦痛に歪む。一気に呼吸ができなくなり、また耳鳴りがした。

 

「止めろ!」

 ラディウスの怒号は聞き流され、あたしはどんどんと上へと上がっていく。

 

 苦しい……。また目が霞む……。

 

 190センチもある男と同じ高さまで持ち上げられると、後頭部から野太い声がした。

 

「苦しいか?」 

 臭くて熱い息が耳にかかる。

 地獄にいる悪魔の声に聞こえた。 

「愛しい男に見せてやれ。苦しいと目で訴えろ……」

 

 あたしは足をバタつかせ、背後にいる男をまた蹴ろうとしたけど、やはり無駄だった。

 爪を立てるが、2回目の締め付けは1回目の時よりも苦しく、もはや力を入れることができなかった。早々に指は痺れ、頭がぼーっとして、ろくな反撃ができない。

 苦しさに耐えきれなくて口が開くと、どこかに残っていた僅かな息が漏れた。

  

 まるで最後の吐き出しのような空気が漏れる音――。

 動脈がドクンドクンと激しく脈打つのが分かる……。

 全身が死を拒絶しているが、脳はもう意識を手放そうとしていた――。


 

 ラディウスが焦った顔でこちらに駆けて来るのが見える――。 

 でも酷くゆっくりなスローモーションの動画を見ているようで、こちらに近づいているとは感じなかった。

 反面、男の声だけはクリアに聞こえる。


「お前、いい匂いがするな……。さぞいい暮らしをしているんだろう?国王の婚約者様だからな……。うらやましい……。うらやましくて殺してしまいそうだ――」

 

 視界が霞んでラディウスの姿が見えなくなる……。

 まだ合図はないはずなのに……。

 それともいつの間にかされたのだろうか?


 

「ほら……最後に愛しい男を見ろ……。それとももう見えないか?」


 

 大柄の男が言うとおり、ラディウスを見ているはずの目は、ほとんど何も映していなかった。

 

 焦点が合わない……

 暗い…………

 

 耳だけがまだ仕事をしていて、ラディウスがあたしを呼んでいる気がする――。


 ごめん――もう…………無理かも――



 

 かなり遠ざかった意識に、突然、別の声が響いた。

 

『その女を送れ』

 

 大柄の男に送られた風話だった。まるでタイミングを見計らっていたかのようだ。


 大柄の男は「いいのか?」確認するように尋ねた。男と顔の距離が近いから風話が耳に入ったんだ……。

 

『もう俺が司令塔だ』

「そうかい」

 

 大柄の男は何かゴソゴソしていたけど、意識を失いかけたあたしには何も分からなかった。

 ただ何かが眩しく光ったことは理解した。

 

 視界が白に染まる。

 体がふわりと浮く。

 

 ラディウスが家まで送ってくれた時の、次元魔法と同じ感覚……。

  

 そう思った次の瞬間には、ラディウスの声は聞こえなくなった。

 

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