シルフィの頭痛4
シルフィに対して今はできる事は無いという事が分かった。
「シルフィがこの様子じゃ、俺はまた魔法を使えないな」
俺の指示をシルフィが聞いてくれそうにないので、魔法が使えなくなった。さらに言えば、お願いすらも聞いてくれないという事なので、単純に戦力が低下した。今のところ、屋敷にいるだけなので問題は無いが、旅に出る時には困る事になる。
「何か解決方って無いのか?」
「街にある図書館で調べてみてはどうですの? わたくしも一緒に行けば、大抵の図書は閲覧できますわ」
「本当なら、ワープポイントを設置するのを優先したいけれど、シルフィがこんな状態じゃそれどころじゃないわね。手分けして調べてみましょう」
珍しくルゥナが他者を優先するなんて。それほどシルフィの様子がおかしいという事でもあるが。
「拙者も行くぞ。精霊について新たな知見を得られるかもしれぬしな」
精霊魔法使いを目指すルビーも乗り気だ。
「本来なら、もうすぐ閉館の時間ですけれど、無理を言って融通してもらいましょう。では、馬車で移動しますわ」
さすがに街の中はワープポイントを設置していないのか、目立つからしないのか分からないが普通に馬車で移動するようだ。
俺はベビーベッドを頭の上へと移動させ、馬車に乗る準備をする。俺たちは馬小屋へ行き、ストレージから出した馬車と馬が繋がれるのを待つ。もう何日も同じことをしているからか、ルゥナだけではなくライラも手伝えるようになっていたのですぐに準備が終わった。
馬車に乗って10分ほどで図書館へと到着した。すでに閉館を迎えていて扉には「閉館」と書かれていたが、建物内にはまだ明かりがついているので人は居るようだ。ライラは扉を開け、中へと入る。
「お客様、本日はもう閉館・・・ライラお嬢様!」
入ってきた俺達をお客さんだと思って止めようとしていた職員らしき女性が、ライラをみて驚く。そりゃ、貴族がいきなり来たらびっくりするか。
「閉館の作業中みたいですけれど、失礼しますわ。急遽調べなければならない事がありますの。悪いけれど、残業して手伝ってもらえないかしら?」
「は、はい。かしこまりました」
さすがに領主の娘さんのお願いを断れなかったのか、職員の女性は協力してくれる事になった。他にも残っていた2人の女性職員が同様に手伝ってくれることになる。館長である男性は、閉館と同時にすでに帰宅したらしく、もう居ないようだ。
「では、精霊に関する書物をこのテーブルにすべて用意してくださる?」
「かしこまりました」
職員3名は、手分けして館内から書物を集める。日本の図書館みたいにきちんと整列されていなくて、どこに何があるのか分からない状態だ。これは一人で探したら時間がかかるだろうな。ある程度の本が集まるまでは俺も本を集める方を手伝う事にした。と言っても、知識が無いから題名から中身を推測するしかないが。
「『精霊と僕の楽園』、『精霊様おいでませ』、『せいれーなのよ』・・・なんかどれも中を読むまでもなく関係なさそうだが、一応持っていくか」
精霊に関する力を持つ人は少ないので、必然的に関係する書籍も少ない。なので、ポエムや創造物みたいなものも多そうだ。ジャンル別にもなっていないから、どれが必要なものか分からないしな。だが、真面目そうな題名なものの方がいいと思う。
「『精霊魔法について』、『精霊とは?』、『精霊の特性と能力』・・・どっかこの辺は有用そうだな」
俺はとりあえず精霊と名の付く書物を集め、テーブルへと持っていく。すでに数十冊集まり、ルゥナが先んじて調べている。さっそく中をぱらぱらとめくり、関係なさそうなものを別のテーブルへと移動させるようルビーに指示していた。
「やっぱり、そう簡単には見つからないわね。そもそも、精霊がこんな状態になるなんて聞いたこともないし、原因の予想すらつかないもの」
「せめてシルフィが話せるなら本人に聞けばいいんだけどな」
俺はテーブルの端に置いておいたシルフィを見る。シルフィは座ったまま微動だにしない。もしかしたら精霊魔法使いのギルドマスターなら知っているかもしれないが、そこまで行くのに時間がかかるしな。他の精霊も見たことないし、やっぱり精霊に会うのは難しいのだろう。
精霊と名の付く本がすべて集め終わったと思われた時、職員の一人がライラに話しかけに来た。
「あの、お嬢様。館長しか開けてはならない部屋があるのですけれど、いかがいたしましょうか」
「わたくしが許可します。開けてくださいませ」
「かしこまりました」
職員は、館長の部屋へ入ると、大きくて重そうな黒い鍵を持ってきた。
「それでは、開けます」
部屋の奥にあった大きな扉が開かれる。中は思ったよりも狭く、本もそこまで多くなかった。
「置いてあるのはすでに販売が禁止されたもの、重要な原本、珍しい図書などみたいですわね」
ライラの言う通り、思想に関するものや他国に渡ると不味そうな自国の情報書なんかが置いてあるみたいだ。その中で、精霊に関するものを探す。
「これは・・・。題名に精霊とは書いてありませんが」
ライラが手に取った本は『世界樹ユグドラシル』という題名の本だった。




