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転移して奴隷にされたけど、見えない塊を拾ったので逃げる事が出来ました  作者: 斉藤一


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シルフィの頭痛3

 しばらくすると、ルゥナがライラお嬢様と一緒に帰ってきた。2人は順調に転移できる距離を伸ばしているようで、雰囲気は柔らかい。今なら、シルフィの話も快く聞いてくれるだろう。機嫌が悪いときは、俺の話なんて聞いてくれないからな。


「ルゥナ、ライラ、お帰り。ちょっとシルフィの様子がおかしいんだ。少し話をしてもいいか?」


「いいわよ。シルフィが静かなのもそのせいかしら?」


「分かりましたわ。では、飲み物を用意させるので部屋へ移動しましょうか」


 ルゥナ達が出てきた部屋はライラお嬢様の部屋だ。ワープの拠点場所がそこになっている。お嬢様の部屋で話すのも恥ずかしいので、普通にサロンへ移動する。俺は貴族じゃないから飲み物を飲む場所なんて気にしないんだけど、ライラお嬢様にとっては部屋の移動は当然の事の様だ。


「それで、何があったのかしら」


「先にルビーには話したんだけど、俺が街へ行ったときに――――」


 俺はルビーにしたのと同じ話を2人にもした。俺がチンピラにからまれたところでライラお嬢様の表情が曇ったけど、今はそこは重要じゃないので流すことにしたらしい。そして、シルフィが急におかしなことを言いだしたことを話す。


「なるほどね。それでシルフィ。会話は可能かしら?」


 ルゥナが俺の頭上へ飛び乗る。俺からは2人が見えなくなったな。俺が上を見上げると2人が落ちるので、大人しくライラお嬢様の方を見る。ライラお嬢様も俺の視線の少し上、シルフィの方を見ているようだ。


「駄目ね。目の前で手を振っても反応なし。目は開けているけど、これは何も見えていないわね」


「拙者もためしてみよう。すぅ―――シルフィ殿!!」


「うわっ、急に耳元で大きな声を出すなよ!」


「す、すまん。けれど、拙者の声にも無反応のようだ。当然、触れもせん」


 ルビーはシルフィに触れようと手を出すが、透過するだけのようだ。というか、今のシルフィは俺のエーテル以外を貫通するから、地面にすら置けないんだよな。いつもなら自力で飛んでるのに、今はボーッと座ってるだけだし。


「もう一度、ユラの世界樹の雫を飲ませてみるのはどう?」


「たぶん、いみないでちゅ。もともと肉体をもってないわたちたちには魔力の補充くらいにしかなりませんち、この状態じゃ飲み込むかどうかもわかりまちぇん」


「それでも、やってみるだけやってみるか。ユラ、頼む」


「わかりまちた。世界中の雫」


 ユラにお願いして世界樹の雫を使ってもらう。これでこの辺り一帯の魔力は使い尽くしてしまうだろうが、シルフィのためだ、仕方がない。


「じゃあ、少し上をむいてくだちゃい」


 ユラがシルフィの顔を少し上に向けたようだ。さすがに同じ精霊のユラはシルフィに触れられるらしい。


「あっ、こぼれる! 勿体ないから回収するわよ」


 ルゥナの慌てた声が聞こえる。どうやらシルフィは雫を飲み込めずにこぼしたようだ。・・・ところで、そのこぼしかけた雫はどうするんだ? 一度シルフィの口に入ったものを使うのはちょっとな・・・。まあ、精霊の口内に菌とかは居ないだろうけど、気分的に間接キスみたいな感じになりそうだし。


「これはしばらく様子を見るしかないんじゃないかしら。シルフィが意識を取り戻すまで、アキラがきちんと見ているのよ」


「えっ、俺の頭の上でこのままかよ。これじゃあ、俺が寝ることもできないじゃないか」


「馬鹿ね。別に頭の上に固定する必要は無いでしょう? エーテルを使ってベッドでもなんでも作ればいいじゃない」


「ああ、そうだな」


 ルゥナに言われて俺はベビーベッドをイメージしてエーテルを変化させる。これなら、シルフィが少し動いたとしても地面に落ちることは無い。現状、誰も触れられないから誘拐とかもされないだろうし。


「こうしてみると、本当に人形のようだな」


 シルフィは目を開けたまま微動だにせずに座り続けている。あまりにも動かなさすぎて、死んでるんじゃないかと思ったが、精霊が死んだときは完全に粒子になるらしいので生きているはずだ。

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