シルフィの頭痛
「おい、シルフィ! シルフィ!」
「うるさいぞ! 何を叫んでやがる! この近くには誰もきやしねぇよ!」
俺が誰かに助けを呼んでいると勘違いしたのか、チンピラがそう言った。だが、俺は今それどころじゃない。いつもお気楽なシルフィが、突然異常を起こしたのだ。
「頭が、痛いっ」
シルフィは自分の頭を抱えてうずくまっている。飛ぶ余裕もなさそうだ。
「ユラ、雫はシルフィにも効くのか?」
「世界樹の雫は魔力で体を治す様なものでちゅから、効果はあると思いましゅ」
「だったら、雫をシルフィに」
「分かりまちた。世界樹の雫!」
ユラは世界樹の雫を作り出す。俺はシルフィを手のひらの上で上向きにさせる。しかし、シルフィは痛みからか歯を食いしばっていた。俺は飲ませるために、無理やりシルフィの口を開かせ、雫を流し込む。
「あ・・・」
シルフィが雫を飲むと、目を見開く。
「僕、シルフィじゃない」
「は? 何を言っているんだ? お前はシルフィだろ」
「ううん、僕はシルフィじゃない。シルフィは、僕の友達の名前。僕の名前は・・・うっ、思い出せない」
「大丈夫か?」
いきなりシルフィが自分がシルフィじゃないと言うし、本当の名前も分からないようだ。一体、シルフィの身に何が起きているのか分からないが、どうやら混乱しているようだ。
「落ち着け。とりあえず、休め」
「うん・・・」
幸い、痛みがひいたのか、飛ぶことが出来るようになったみたいだが、ふらふらしている。
「俺の頭の上で休んでていいぞ」
「うん、ありがと・・・」
俺は頭の上のエーテルをクッションの様に変化させ、シルフィを休ませる。今は動かないほうがいいだろう。どうせ見張りのチンピラが居るから、下手に動くことはできないんだけど、必要ならこいつを倒してでも移動するつもりだ。
ユラが俺から離れることが出来れば、誰か呼んでくることも出来るのだが、あいにくユラは世界樹の杖からそれほど離れられないからな。
「まあ、俺が帰らなかったらルゥナあたりが探しに来るだろ」
俺は近くの木に背中をあずけ、できる限り頭を動かさないように努力する。
しばらくすると、もう一人のチンピラが戻ってきた。
「屋敷の門番に身代金を要求してきたぜ!」
「おお、じゃあ、もう少ししたら金が手に入るな!」
こいつは馬鹿なのか? 門番に伝えただけで金が用意されるわけないだろ。というか、もしかしたら門番の人が本気にしてない可能性もあるぞ。本気にしてたら、普通にその場でチンピラを捕まえてそうな気もするし。
「あの、ちなみにいくら要求したんですか?」
「そんなもん、できる限り用意しろって伝えたに決まってるだろ。これで、大金持ちだぜ」
「・・・・・・」
具体的な金額はおろか、口頭で伝えたのか。こいつ、さては字が書けないんだな。いきあたりばったりすぎるし、バックに大きな組織がついてるとかもなさそうだ。シルフィの事も心配だし、もう少ししたらこいつらを倒して戻るとするか。




