人質
今日はルビーの訓練は休みだ。さらに、ライラとルゥナは転移ポイントの設置でいない。俺は何もやることが無いので散歩する事にした。
「ちょっと出かけてくるよ」
「拙者はやることがあるので屋敷に留まるが、気を付けて行ってくると良い」
「ああ、いってくるよ」
俺はルビーにそう伝えると、ユラとシルフィを連れて街へと出る。
「シルフィ、ユラ、どっか見てみたい所はあるか?」
「あたしはご主人ちゃまの行きたいところが見てみたいでしゅ」
「僕は、アキラが普通に行動してるだけで面白いことが起きると思うから、アキラの好きにしてていいですよー」
「なんだそれは。それじゃあ、俺が好きに行動するけど、いいな」
ユラもシルフィも特に意見が無かったので、俺が自由に行先を決める事にする。なんだかんだでこうして買い物をするのも久しぶりだ。
「おい、お前。ちょっとこい」
「え、あの、ぼくが何か・・・?」
「俺達、ちょっとサイフを落としてしまってな、金を貸してほしいんだよ。ここじゃ目立つから、ほら、こっちこいよ」
・・・俺が一人で行動すると、どうしてこう絡まれるのだろうか。他にも人はいっぱいいるのに、ピンポイントで俺が狙われるのは何故だろうか。
「ほら、面白そうな事になりましたよー」
「ご主人様、大丈夫でちゅか?」
「正直、助けてほしいんだけど・・・」
「僕は手を出しませんよー」
「あたしはご主人様が怪我したらすぐに世界樹の雫を使いまちゅ!」
「何ぶつぶつと言ってやがる。ほら、こっちについてこいよ」
「あ、はい・・・」
俺は恐らくこの2人組の男たちに攻撃されても、エーテルという無敵の鎧があるため無傷で済むだろう。けれど、なぜかこういうタイプのやからに命令されると逆らえない。今の俺なら、多分簡単に2人を倒すことが出来るほど強くなっていると思うが、体がすくむのだ。
「あの、どこまで行くんでしょうか・・・」
「俺達、知ってんだぞ。お前があのでかい屋敷を出入りしてるってことをよ」
ということは、最初から俺にたかるつもりだったのか。そりゃ、俺が一人で行動してたら狙われるのも分かる。くっ、こんなことならルビーにお願いしてついてきてもらえばよかった。というか、シルフィが助けてくれればいいのに。
「ここまでくれば、誰も邪魔しないだろう。で、お前、いくらもってんの?」
「えっと、銀貨3枚です・・・」
「嘘つくなよ。ほら、財布をだせや」
「はい・・・」
俺はいつもの流れで銀貨を入れている布袋を男に渡す。
「マジで銀貨3枚しか入ってねぇ・・・。ちっ、しけてやがる。こうなったら、こいつを人質にして直接身代金を要求するか」
「あの、僕はあの屋敷とはほぼ無関係なので、多分応じて貰えないと思いますけど・・・」
「無関係な奴が屋敷に入れるわけないだろ。お前は金を手に入れるまで人質だ。暴れたりしなきゃ、無事に返してやるからよ」
「・・・いくらくらい必要なんですか?」
「んなもん、多けりゃ多いほどいいに決まっているだろ」
実は金貨数枚なら靴の中や隠しポケットに入れているんだけど、この様子だとそれを渡してもダメそうだ。もし、俺が人質となり侯爵様の屋敷へ身代金を要求された場合、どうなるかを予想する。
1,こいつらの言うとおりに身代金が払われ、俺は解放される。
2,そもそも俺が人質に取られたことが信用されず、俺が殺される。
3,このことを知ったルゥナがこいつらを殺す。
うん、この中で一番確率が高そうなのが3なんだが。そもそも2は無いな、俺を傷つけることは不可能だろうし。
「なあ、シルフィ。そろそろ助けてくれよ」
「えー、どうしようかなー。もう少し面白い展開になるのを期待してるんですがー」
「多分、ルゥナに知れた時点で終わるぞ」
「それもそうですねー。じゃあ、僕が―――」
そういった瞬間、シルフィが落下した。俺はシルフィが地面に落ちる寸前で受け止める事に成功したが、シルフィの意識が無いようだ。
「おい、変な動きをするな。逃げようとするなら、足を切り落とすぞ」
男はそう俺に脅しをかけるが、そんな事よりもシルフィの方が心配だ。一体、何が起きたんだ?




