【23】最後の援助(1/2)
最終章です。
離婚劇から十一ヶ月が経過した。
五条は、英美と美香を事務所に呼んだ。進から手紙を託されたからだ。条件付きでお金を渡す旨を伝えたところ、次の日には事務所を訪れた。美香は制服で、英美は普段着。髪が乱れているところから、だいぶ話し合ったらしい。
二人が着いて、概要を伝えた。
「中原進氏は、五百万円の預金と動画を託されました。差し上げる条件は、誓約書に署名し読み上げるところを動画で撮影し、進氏に送ることです。送られてきた動画は氏が同様の宣言と署名をしたものです」
そういって、動画の入ったUSBを挿入したタブレットを二人に見せる。画面には進が映っている。どこかの部屋らしい。
『私、中原進は、五条弁護士を通して、預金五百万円を、中原美香と中原英美に渡す。配分は二人に任せる。この動画を見た十日以内に、受けるかどうか判断してほしい。返事がなければ拒否したものとみなす。受け取る場合は、二人の宣誓書のサインと内容を読み上げたところを動画で送ってほしい。あとで実物の通帳とキャッシュカード、印鑑を送る。最後に。俺が二人にしてやれるのは、本当にこれが最後だ。五条氏との契約は、この金の処理で完全に満了する。もう互いに連絡を取る手段はなくなる。俺は君たちのことを忘れるから、君たちも俺のことは忘れてほしい。さようなら』
簡素な動画ではあったが、進が美香や英美に関心を失っていることを最後にはっきりと示した。
宣誓書は、五百万円を受け取ること、今後一切金銭と面会を互いに求めない旨が記載されている。九枚あり、三人がそれぞれ署名して持てるようになっている。進の三枚はすでに署名してある。
「あの、あの人のことは、教えてもらえないのですか。どうしているかとか」
英美はまだあきらめていないらしい。
「教えられません。これは契約のこともありますが、守秘義務もありますので」
「守秘義務って、家族なんですけど」
「離婚が成立していますから、もう家族ではありません。ちなみに血縁は法律的に関係ありません」
スキを見せないように毅然と言い放つ。
「それと、中原さんには、娘さんが会われたのではないんですか」
娘の美香に話を向ける。
「別に、少し痩せたくらいだと思うけど。うちにいた頃に比べたら印象は違っていたけどね」
「印象?」
「しっかりしているというか。うちでみじめに掃除してる情けない感じはなかった」
五条は少し感心した。見るところは見ているらしい。
美香の方が、現状をよく理解しているようだ。
「中原さんの手紙にもありますが、五百万円を受け入れるかどうかを十日以内に検討していただきます。宣誓書の署名と読み上げはここで行っていただきますので、早めに教えてください。受ける受けないに関係なく、これ以降、あなたがた元家族との関わりは何かしらの依頼が無い限り持ちません」
「お願いです。あの人の連絡先を教えてください。それか、連絡を取ってください。ほら、よくあるじゃないですか。依頼人に内緒で連絡先を教えるようなの」
英美が食い下がる。
「これはドラマじゃないんです。現実ですよ。何度でも言いますが、守秘義務に反しますし、依頼人からも連絡先は明かさないように固く命じられています」
この四日後、美香と英美は受け取ることを決め、事務所に再度訪れた。
「中原英美、中原美香は、元父親の中原進からの五百万円を受け取ります。今後一切、あらゆる金銭の請求および面会の依頼は行いません。また、中原進からの同様の請求も受け付けません。以上、宣言いたします」
二人とも不満そうではあったが、カメラの前で署名と、しっかりと宣誓をした。
五条は二人が出た後、すぐ郵送で動画と宣誓書を送った。
一週間後、進から返送で来た通帳、カード、印鑑を二人に再送した。
再請求に応じた進。
甘い・・・かな?
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