【13】届いた郵便
戻ったのはお父さんではなく・・・
離婚宣言から四日後。
美香はポストに「本人限定受取郵便の到着のお知らせ」と書かれたハガキが投函されていたことに気づき、英美に渡す。
英美はハガキを奪い取るようにもらい受ける。差出人は「五条弁護士事務所 中原進」とあり、受け取りの手続きをするよう記載があった。
「それなに? 弁護士とあいつの名前があるけど」
「……どうやら、私宛の郵便物が届いたから受け取ってくれってことみたい」
「なにそれ怪しい。詐欺じゃないの? 最近よくあるってニュースになってたし」
「そうかもしれないけど、あの人の名前と弁護士事務所っていうのが気になる。明日受け取ってみるわ」
五日目。進は戻っていない。部屋は二人が出したゴミが目立ち始めている。
英美はさすがにおかしいと思い、メールやSNS、最後は電話で連絡を取ったが一切反応は無い。SNSは既読もつかない。
進の置いていった冊子と離婚届はすでにごみに出しており、何も残っていない。
彼の言ったことは本当なのか? なぜ? 頭の中に答えの出ない疑問がいくつもわき上がる。
美香はいつもどおり学校に行っている。一人になった英美は不安になっていた。何が起ころうとしているのか、あの人は何をしているのか。離婚は本当なのか。確かめるすべは何もない。
昼過ぎ、家のベルが鳴った。英美は大慌てで玄関のドアを開ける。
「あなた! いったいどういうつもり!?」
「あ、あの……郵便局ですが」
「は!?」
英美の剣幕に驚きながら配達員が告げる。
「本人限定受取郵便をお届けにあがりました。中原英美様に受け取りをお願いいたします」
「ほ、本人限定受取郵便!? ……あ、ああ」
依頼していた郵便が届いたのだと気づき、やっと冷静になる。
「失礼ですが、中原英美様ご本人でいらっしゃいますか?」
「そ、そうですけど」
「お手数ですが、身分を証明できるものをお出しいただけますか」
あまりに呆気にとられ、言われるがままに免許証を出す。
「……たしかに中原英美様ですね。こちらがお届け物です」
そういって渡されたのは、何かの書類が入った封書だった。裏を返すと『五条探偵事務所』という印字と、手書きで「中原進」と書かれている。
受け取りにサインをすると、免許証を英美に返した。
「……はい。それでは、確かに配達いたしましたので。これで失礼いたします」
配達員は、特に何も変わった様子もなく去って行った、
局員が去ったあと、封書を持って居間に戻る。封書の中身は資料と離婚届、USB、そして手紙が入っていた。手紙には次のようなことが書かれていた。
「英美と美香へ。先日の書類と離婚届、そしてデータを送る。先日渡した書類はきっと捨てただろうから。必ず届くように、本人限定受取の郵便で送る。何度でもいうが、俺は本気だ。離婚してくれ。退職はすでにしたし、ローンは完済した。財産分与も、一切冗談ではないし妥協もしない。もう無理にとは言わないが、きちんと内容を見てもらいたい。荷物を引き取る日程が決まったらまた連絡する。当日は、いなければいないでいいから、離婚届だけはサインしておいてほしい。追伸。ネットもSNSも電話も全部切った。連絡は封書にある弁護士を通してくれ。じゃあ元気で 家族のATMだった進」
五条という弁護士の署名が入った文書によると、USBは離婚原因となった映像や録音の資料と資料のデータとのことだった。
自分の部屋に戻り、中身や文書の確認を始めた。
ちなみに、本人限定受取郵便は拒否もできるそうです。
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