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取り戻したモノ

 八か月ほど前にこの世界へ一緒に転移してきた同級生。

 盗賊団の一員となり、静華たちを裏切り、逆に返り討ちにしたとき、逃げた少年。

 逃げたとき、静華へ暗示をかけたのもこの少年だった。

 名前は榊原(さかきばら)(たつ)()

 静華と同じ高校三年生。


「いやー、会長が俺たちの場所を探っていたのは知っていたけど、こうも見つかるとは思わなかったよ。元気だった?」


 榊原はエアリスと静華と対峙する状況は何でもないかのように飄々としていた。

 その仕種に静華は苛立ちのような感情が芽生える。

 平静を保つため、苛立ちと一緒に肺の空気を吐き出した。

 思考をクリアにし、自分の目的を口にする。


「私が返してほしいのは、感情だけよ。あなたの暗示を解除してほしいわ」


「ああ、あの暗示。まだ効いていたんだ。結構信用しやすい性格しているんだね。会長は」


 静華は榊原が何かしないか注視する。

 何かする動作をした瞬間、魔法で動きを止め、拘束することも考える。

 静華の剣呑な視線を読み取ったのか、榊原は両手を上げた。


「わかった。別に何かしようとしているわけじゃないから。解除してあげるよ。あの時は逃げることに必死だったからね」


 榊原はそう言った瞬間、指をパチンと鳴らした。

 すると、静華の感情に暖かいものが流れ込んでくるような感じがした。


 次第に――


 ダムが決壊したかのように勢いを増し、静華の感情を埋め尽くす。

 それは恋愛感情。

 いままででも羞恥心などはあったが、それとは別種のもの。

 感情が抑えられず、恋愛感情は徐々に性欲へと変化していくのがわかる。

 ただ一人の男性に抱かれたいと思う感情。

 自分の感情が制御できず、静華は胸を押さえる。


「それじゃ、俺はここらへんでお暇させてもらうよ」


 榊原は踵を返そうとした。


「そうはいかないわ」


 エアリスがその幾先を制した。


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