相手の力量
「速いな」
グランゾアから見た琉海の動きは、残像を残すほど速かった。
動きを見てからでは、間に合わない。
先読みして琉海が攻めて来ると思われる場所に盾を配置していた。
「連撃も確かにシェイカーより上の動きをしていたが、単調でわかりやすい。強化魔法はまあまあってところか」
グランゾアはさっきの戦闘で得た琉海の力を分析する。
「これぐらいのレベルだとシェイカーには荷が重いか」
シェイカーに勝ったのはマグレではないと推察する。
「ま、面倒ではあるが、勝てない相手ではなさそうだな」
琉海の力量を確認できたと判断したグランゾアは、剣の束を持つ手の握りを強める。
琉海の動きは速い。
明らかに自分より速い。
自分から攻めても捕まえることはできないだろう。
だから、グランゾアは適切な戦い方を選んだ。
再び、琉海が動き出す。
さっきよりも速い。
直線ではなく、ジグザグに駆けきた。
盾を躱そうとしているのだろうが、そうはいかなかった。
琉海が近くに来た瞬間、目の前に盾を置き、叩きつけるように盾の側面をぶつけた。
だが――
「ぐッ!?」
はじかれそうになったのはグランゾアのほうだった。
(何が起きた?)
盾を持つ腕が耐えがたい衝撃で横に流れる。
盾が横に流れることで、琉海の姿が見える。
両手には二振りの長剣が握られていた。
(あの剣はどこから出した!?)
短剣なら服のどこかに隠すことができただろう。
しかし、彼の持つ剣は隠すことのできない長剣。
グランゾアの思考が疑問で埋め尽くされる。
しかし、それに反して体は適切な動きをした。
これは数多の経験で培われたものだ。
盾が流れ、体のバランスを崩す前に剣を振り下ろした。
当てるつもりはない。
相手を後退させるための牽制だ。
グランゾアの想像通り、琉海はバックステップで後ろに下がって躱す。
離れると琉海の手元の剣は粉々に砕けてしまった。
「これでもダメか。硬いな」
何かを呟いている琉海。
だが、その言葉がグランゾアの耳に入ることはなかった。
それよりも、盾を持つ自分の手に視線を向けていた。
盾を流されるほどの衝撃。
手は痺れ、衝撃に逆らおうとしたためか、腕の筋を痛めた。
すぐに能力によって完全に回復するが、あの強さは短剣の時とは別ものだった。
(あれは本気じゃなかったということか)
琉海の力量を上方修正し、パワーも楽観視できないと警戒度を上げる。
剣が突然生み出される原理はわからない。
だが、グランゾアはそこに思考を割くのは無意味だと判断し、切り捨てる。
必要な情報は、相手がそういう能力を持っているということだけだ。
必要な情報を頭の中で反芻し、相手の動きを想像する。
(相手は速く動け、パワーもある。確かに強い。身体能力だけなら、今まで戦ってきた中で一番強いかもしれない。だが、俺の手にはこの盾と能力がある)
盾は去年の優勝で王から貰ったオリハルコン製。
破壊できる者はまずいない。
そして、グランゾアの能力である回復によって簡単に盾を手放すことはない。
力の強さもわかった。
次は盾が流れるなんてことは起きない。
全身全霊で盾を構え、盾で阻んだ瞬間の隙を突く。
グランゾアは勝利の算段が立ったと口角を上げる。
後は実行するのみ。
盾と自分の能力に絶対の自信があるグランゾア。
琉海が動き出すのをいまかと待つ。




