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第36話 お祭り、楽しかった?


「はぁああぁ~~ぁあ……気持ちいい~ぃ…………♪」


「いいお湯ですねぇ……♡」


「………………」


一度お城に戻り、浴場へ移った3人。浴槽で溶ける3人。


ほぼ徹夜状態からお祭りを楽しみ散らかした弊害が今「あのセニーナさん!??!寝てません!?!溺れちゃいますよ、起きてください!!!」


「はっ……。失礼しました。夢の中でも大量のスイーツに囲まれ、絶え間ない幸福感が…」


「じゃねえーーーーーーよお前ら!!!!なんで姫様もコッチの風呂に入ってきてんだ!!!」


3人の向かいに見えるは、つい先日激闘を繰り広げたばかりの女性騎士――ミルキスの姿。


「あらっ!ミルキスじゃない!!休憩中?」


「『あら』じゃねーよお前ら!!楽しかったか!??!」


「まず感想聞いちゃうんですか!?」


ベルハリア城の浴場は主に2つ。


王族や貴族、エレンディル家が使用する特別仕様の浴場と、使用人が交代で使用する通常の浴場。


ここは通常の浴場だが、それでもベルハリア城のスケールが適応され「大きめの公衆浴場」のような様相と化している。


「うんっ!すっごい楽しかった!」


「そうか!じゃあいいけどよ!何から喋るか頭から飛んでっちまったよクソ!!」


ざぶん、と激しく浴槽に浸かりなおし、バツが悪そうな表情を浮かべる。


「……………」


「イヤ寝てんじゃねーーーーよスイーツバカ??!!起きろオラ!!!」


眼球が飛び出る勢いでツッコみながら食いしん坊問題児の首根っこを掴む。


「んぷぁ、っは……!おはようございます。……ミルキス。貴方、まさか護衛騎士を辞めるつもりではありませんよね?」


「えっ!?」「えぇっ!?」


「ン何だお前起きたと思ったらいきなり!??!!?」


溺れかけたことが気付けになり、ミルキスへ直球の疑問を放り投げる。


「色々言いたそうにしてたのはやっぱそーいうコトかよ。ふん……」


「ど、どういうこと?辞めちゃうの?なんでっ?」


「まあケジメみたいなもんだ。仮にも姫様を城から逃がしちまったんだから。護衛騎士として最低だろ。失格だ」


「いえ……ミルキス。それを持ち出すのであれば、私も同じです」


「あーいいって、お前らのこと恨んだりしてねーから。アタシがあんまりこーいうの、なあなあにしたくないってだけだ」


動揺のあまり出遅れたアルスティもようやく口を開く。


「そ、そんな……!きっとリーヴェ様も、わかってくれると思います!わざとじゃないって……。それに、ミルキスさんみたいな強い人を……」


「ぶっちゃけるとな、城の警備もコーリツ的すぎて退屈なんだよ。そろそろちょっと出ていきたいトコだったんだ」


顎と視線を横に向け、前髪が目に垂れ……建前や真意がわからないまま、ミルキスは心情を伝えた。


「嘘ですね。貴方もリーヴェ様の精神に惹かれた1人のはず。私と同じように……」


「……最初はそうだったけどな。考えが変わったんだよ。まあリーヴェ様とここの皆のことは嫌いじゃねえ。……じゃあな」


大股で浴場の出口へ向け歩いていく姿に向け、ティアネが大きく声を出す。


「ミルキス!もし貴方がここを辞めちゃうって言うのなら……私にも考えがあるわっ!」


「……ふっ、楽しみにしておきまーす、お姫様」


2人とも視線は交差しないものの、互いに明るい声色で伝え合う。



―



「ねえっ!今日は皆で一緒に寝ましょうよっ!私のベッドでっ!」


「ええええっ!?そ、そんな、恐れ多いですよっ!」


「私も、立場としては……護衛騎士ですから」


煌王祭(こうおうさい)の思い出を語りつつ、城下町の明るさが見えるティアネの部屋にて。


急激な“スタミナ切れ”を母に見抜かれ、アルスティたちと一緒に休息を強要されてしまった。


和解したとはいえ無断外出してしまった申し訳なさもあり、大人しく従ったものの……。


「私、今日すっごく楽しかったわ!でも、まだまだ全然やりたいことがあるの!例えば……」


一緒にベッドに『座らされた』アルスティと、腰掛けた程度のセニーナの手を握る。


「友達とおしゃべりしながら、一緒に寝ることっ♪ねえ、叶えてっ♪」


「うう……あ、あたしは、まあ……」


リーヴェとの別れ際、小さく囁かれたことを思い出す。




『……娘を、どうぞよろしくお願い致します。……ふふ♪』




「(あ、ああ……リーヴェ様のあの目……すごく優しかったけど……なんだか、威圧感のようなものも……)」


おそらく……「今回のことは不問とするから、面倒を見てあげて」といった意味合いだろう。


「(……まあ、リーヴェ様に言われたから、という感じでも……ないけど……)」


アルスティはくしゃっとした笑顔を浮かべ、しっかりと自らの意思で答える。


「ぇへへ……ティアネさんさえ良かったら、ぜひ……はい」


「やったぁ♪ね、セニーナもっ♪毛布、いっぱい余ってるのっ♪」


「……では、このベッドのサイドフレームに寄りかかる形で…ご容赦ください」


妥協した提案だが、その言葉に呆れはなく……温かさがあった。


「む!……んにに……まあいいわっ♪」


優雅に手慣れた動きでベッドシーツを整えるティアネ。


「えっ!あ、あたしよりも全然っ……!」


新人メイド研修で学んだベッドメイキングを披露するチャンスだったのに、王族であるティアネが理想的な所作でこなしていることにショックをうけるアルスティであった。




「……ねえ……私ね……この前も言ったけれど……やりたいこと、いっぱいあるの」


頭を並べ、キングサイズのベッドに包まれるティアネとアルスティ。


その近くに頭を寄せ、剣を抱え護衛するように座り込むセニーナ。


「でも、まずは……アルスティに、お礼をしなきゃねっ♪明日、楽しみにしてて♪」


「……ありがとうございます…ぇへへ……明日も、楽しみですね……」


『明日の予定』を頭の中でシミュレーションし、今日の出来事を語り合い……


まどろみの中、心地のよい時間が流れて行った。




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