第28話 【挿絵あり】中庭での再戦
「す……すごい……すっごく、スムーズに進めてない?私たち……!」
「……で、ですね、今のところは、怖いぐらい順調です…タブン…」
「はい。これまでで最も体力に余裕があります」
アルスティが提案した収納庫からの『隠し扉』をくぐった3人。
いつもと同じ見慣れた廊下や、城の数々の区画をなぞりはしたものの……
何故か厄介なトラップやガーディアンゴーレムにほぼ遭遇することもなく、歩を進めることができていた。
「……あの扉から入ることで、リーヴェ様の魔法にエラーが発生したのか……私たちを捉えることができなくなったのか……」
「通路はぐちゃぐちゃなままですけどね……あはは」
「でも、全然マシよねっ!このままいけば、いつかは絶対抜け出せるわっ♪」
気が緩みはじめたティアネは、スキップするように前に躍り出て、次なる扉へ手をかける。
「さーてっ!次は……あ、この草木の匂いっ……中庭かしらっ!」
“ギ……”
「「またおっきいゴーレムいるーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」」
――夜の中庭は、昼とは違った雰囲気だった。
丁寧に手入れされた芝生が月明かりの下で銀色に輝き、色とりどりの花壇が整えられ美しい幾何学模様を描く。
甘い香りを夜風に乗せ運ぶ白い花も「ねえねえアルスティっ!?!?現実逃避して何か考えてないっ!?!?逆に落ち着いてないっ!!??!」
「いえ、立ち向かいましょう!今の私たちは、以前と違って万全の体力です。『例の作戦』通りに!」
するりと細剣を抜き、躍り出るセニーナ。
そして、2人に身を寄せ、素早く小声で囁く。
「オッケー!じゃあ、よろしくねっ!」
ティアネが右前方に駆け出し、巨大ゴーレムの視線を誘う。
「私たちも行きましょう、アルスティさん!」
「は、はいっ!」
大きく中庭の外周を走り、ゴーレムに手を振り続けるティアネ。
「こっちこっち~~っ!」
ゴーレムも追従するように大きく体をひねり、足を入れ替える。
その際の大きな体重移動を見逃さず、セニーナたちはゴーレムの左足部分に潜り込んだ。
「では……セニーナ・ヴァルハートっ!行きます!【ルナシエ・クリスタ】っ!!」
“パキパキパキ……ガキィーンッ!!”
足元に突如発生した氷の壁。ゴーレムの左足がぶつかり、大きくよろめき……
“ズゥウーンッ……!”
膝をつき、体勢を崩す。
「やったわっ!その調子よっ!」
すかさずセニーナは目を閉じ。ゴーレムへ意識を向け集中させる。
対象の魔力を分析するスキル【リフェンディング】を使用し、ゴーレムの胴体部分付近へ走り込むアルスティへ向け叫んだ。
「アルスティさんっ!やはり『心臓部分』ですっ!お願いしますっ!」
「はいっ!……うまく行ってっ……!【フロウ・ブレイク】っ!!」
―
「核……ですか?」
「ええ。あの巨大なタイプのゴーレムは、通常と違い、わかりやすい『制御コア』のような部位が……人間の私たちでいう、心臓部分に存在することが読み取れました」
余裕をもって進んでいる途中、セニーナから改めて情報共有がされた。
「対象の魔力に干渉し、動きを変えるアルスティさんの【スキル】であれば……」
「な、なるほど……でも、けっこう近いところで使用しないと、効果がないと思います、タブン……」
「立ってる姿、すっごいおおきかったものね」
「……ええ。そこが問題点でもありますが……うまく近づくことができれば――試す価値は大いにあります」
「アルスティさんの【フロウ・ブレイク】で、あの巨大ゴーレムを……制御しましょう」
―
“ギギギギギ、ギッ……!!”
大きな音を立て、片膝をつきうなだれた姿勢で異音が鳴り響く。
「(みんなの力を借りる……みんなで力を合わせる……!そう、すれば……!)」
かざす両手に力を込め、アルスティは顔をこわばらせる。
「お願いっ…………!!」
次第に摩擦音は小さくなり――巨大ゴーレムは完全に静止した。
「……や、った……!」
「すごい、アルスティ!すごーいっ!」
「ありがとうございます、アルスティさん」
「はあっ……はあ……良かったぁ……」
“……ギギ、ギ……”
「へっ!?」
「危ないっ!こっちよっ!」
爆速で駆け寄ってきたティアネに強引に手を引っ張られ、お姫様抱っこのように抱えられる。
「わひゃあっ!」
“ズ……ズズゥン……”
「――っ……どうやら、魔力制御を失った腕が自動で降ろされただけのようですね。完全に停止した証拠でしょう」
「はぁあ……あ、ありがとうございます……ティアネさん……」
「気にしないでっ♪頑張ったのは2人じゃない!こっちに座って休憩しましょっ!」
少し離れ、ゴーレムを眺められる位置で座る3人。
「えへへ……リベンジ、成功……みたいな感じでしょうか。タブン」
「ですね。アルスティさんが息を整えるまで休憩しましょう。……本当に、素晴らしい活躍と、完璧な【スキル】でしたよ」
「そ、そんな……」
――そんな【スキル】持ってるなんて、怪しい。
――アブないことに使ってるんじゃないの?
「……ありがとうございます……あたしの方こそ、本当に……」
これまでよりもさらに、穏やかな笑顔を浮かべた。




