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第27話 抜け道

煌王祭(こうおうさい)まで、残り2日を迎えた朝。


「(あれ……なんだか……いつもより、護衛の騎士さんが多いような……)」


ベルハリア城に留まる傍ら、新人メイドとして雑用を続けているアルスティ。


ティアネたちに迫るタイムリミットによる焦燥感とは別に、優雅な朝は今日も来る……はずだった。


「(ううん、今は集中……せっかく城壁沿いの掃除を任せてもらったんだし、何かいい情報を探さなきゃ……)」


今朝のアルスティの仕事内容は幸運にも、昨夜ティアネたちが足止めをくらった回廊付近の清掃だった。


まず、あの巨大ゴーレムは今どうなっているのか。何か突破するためのヒントは……。


手を抜かず、素早く掃除を行いながらきょろきょろと視線を回す。そして徐々に、例の武器庫へと近づいていく。


すると、壁沿いに1人の女性が座っているのが見えた。


「んお? お前……おぉ、この前の新人じゃねーか」


「あっ……お、おはようございますっ……」


跳ねたオレンジ色の髪が、燃え上がる炎のように情熱的な印象を与える。


初対面時の怒髪天をつく印象とは違い、いくらか落ち着いた声で話しかけてくれた。


「(リンゴをくれた騎士さんだ……何してるんだろう……)」


「――ってツラだな。はっ、見回りに決まってんだろ?コーリツ(効率)的に、な」


強い語気だが、軽く歯を見せつつ顎を上げる。


「もうすぐ煌王祭じゃねーか。お前らメイドも忙しくなる時期だろ?アタシらも見回り強化して、場所変えたり色々やってんだよ」


今の彼女が本来の雰囲気なのだろうか。


以前より怯えることなく、アルスティも会話を始める。


「今朝、騎士の皆さんとすれ違うことが多かったのも……」


「おう。お祭りで浮かれてる時に、なんか悪いこと考えてるヤツがいるかもしんねーしな」


右手に力をこめ、ゆっくり振り上げてから続ける。


「まっ、どんなのが来てもアタシがバッサリだけどな。つーかヒマすぎて何か起きてほしいぐらいだぜ。ははっ」


ジョーダンだけどな、と明るく歯を見せる女騎士。


「お前もこの前みたいになんか悩んでるってカンジのツラだなー。1人でできることなんてタカが知れてんだから、ちゃんとまわりをコーリツ的に頼ってけよ?連携だ、連携」


「連携……あ、ありがとうございます。皆さん、すごく優しいですから。その、貴方も……気を遣ってくれて、るんですよね。えへへ……」


「あ? はっ、言っただろ。お前らが減ったら誰がアタシの服の洗濯とか部屋の掃除とかめんどくせーことやってくれるんだよ」


ぶっきらぼうに返すも、怒りをはらんだ様子はない。


「じゃー行くわ。めんどくせーゴーレムの配備とか手入れもある、しな……っと。あ、サボッてたんじゃねーからな。このあたりの様子を見に来てただけだ」


彼女のクセだろうか、後頭部の髪をがりがりとかきあげつつ立ち上がる。


「は、はい。じゃあ、また……」


「おう。あー、イルゥニによろしく言っといてくれ。宿舎によこしてくるメシ、ちょっとはコーリツ的に量考えろバカってな」


アルスティとすれ違い、肩をぽんと叩きつつ去っていく。


「……あっ……お名前、聞きそびれちゃった……」


名残惜しさはすぐに消え、回廊の清掃を再開する。


「……連携……か……。そういえば、あの隠し部屋って今どうなってるんだろ……」


武器庫の扉に手をかけようとした瞬間。


「アルスティさん♪お疲れ様です~♪」


「わひゃああっ!?イルゥニさんっ!」


相変わらず、神出鬼没ともいえる気配の絶ち方で背後から声をかけられる。


「もうお昼ですよぉ~♪今、すぅ~っごくキッチンの方が忙しくて……お手伝いに回ってもらえませんでしょうか~?」


「あ、は、はいっ!いま向かいますっ!」


武器庫を調べることは叶わなかったものの、代わりに不自然な継ぎ目があった石壁などの様子を思い出す。



「……継ぎ目……あれ……そういえば……」





―





「そしておそらくですが……あの巨大ゴーレムは見た目通り、小回りがきかないものと思われます。そのため、配置場所が限られており……また、駆動するための魔力量も通常より多く……」


出発前の作戦会議。


前回の戦利品である『ゴーレムの設計図』とおぼしき書類をある程度解読したセニーナ。


2人に向け、解説を始めつつ……質疑応答の時間を作っていた。


「もういっそのこと、私がおもいっきりぶつかりに行って、体勢を崩せば……」


「いえ、それはリスクが高すぎます。護衛騎士としても許可はできません」


具体的な攻略イメージが思いつかないまま、頭を抱えるティアネ。


「んにににに……アルスティの【スキル】で、足元を外すとかできないかし、ら…… ……アルスティ?」


「へっ?あ、ああ、ごめんなさい。ちょっといいですか?」


「どうかした?」


「えっと……あのおっきなゴーレムと相手にしなくても……なんとか、なるかも……しれません」


アルスティはこの時間までに考え、検証した事実を共有する。


「んっと、あの武器庫の隠し部屋を開ける時の不自然な石壁の継ぎ目……あれと似たものを、別の収納庫でも見たことがあったんです……実は」


「そうなのっ?今日も見てきたのっ?何か見つけたっ?」


既に開けたことを前提としてたずねるティアネ。


「え、あ、はい……夕方に、整理の名目で収納庫に行くことができたので、こっそり開けてみたんですが……細い通路が続いていました」


「成程……別のルートから、攻略が可能かもしれない、と」


「当初のルートとは違いますけど、もし収納庫にたどり着けたら確認する価値はあるかなって……」


「――早速行きましょうっ!今日の目的地は、収納庫よっ!♪」


善は急げ!思い立ったらすぐ行動!


アルスティの手を取るように駆け出すティアネを、静かにセニーナが追いかけた。



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