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第21話 お騎士様抱っこ

数多の魔力の根が張られ、侵入者(またはティアネ姫が脱走しないよう)様々な“トラップ”が仕掛けられたベルハリア城。


なんとしても突破するべく、暫定の逃走経路を進み始めた3人!


途中、『母からの物理的な叱責』ともいえるような木桶の雨をかわし、以降の対抗策としてセニーナの“観察眼”に頼ることに。


だが……


「それはもう、とんでもなく疲れます」


「だだだ大丈夫ですか!?汗拭いてください!!」


氷の壁【ルナシエ・クリスタ】と違い、すぐに足腰が震えるようなダメージはないものの……


セニーナの体には冷や汗、脂汗……様々な『疲労感』が物質として表れていた(でも顔は涼しげなまま)。


「私の“観察眼”……名を、【リフェンディング】と名付けました。意識を集中させることで、空間に漂う魔力の流れを読むことができます」


「すごいじゃない!カッコいいわっ!♪」


「目を閉じている間だけに限られますが」


「カッコいいけど難しいわねっ……!??!」


手放しで褒めようと思ったけど、案の定重い“制約”に体が硬直するティアネ。


「目を開けたまま使用すると、著しく精度が下がってしまうので……この城を攻略するにおいて、私1人では運用が難しい【スキル】です」


「……なら大丈夫!今は…私たちが一緒じゃない!♪つらいことなら、みんなで力を合わせましょってイルゥニも教えてくれたわ!♪」


「ティアネさん……!」


「私が『家を出たい、つまんない、つらい』ってたくさん言ってもぜんっっっぜん力を合わせてくれなかったけどね……!!」


晴れやかな表情から一転、苦虫を噛み潰したように「んにににに」する。


「あはは……せ、セニーナさん、もう大丈夫そうですか…?」


「はい、ありがとうございます。問題ありません。進みましょう」


さらに廊下を前進する3人。


「ここは……東側にある倉庫かしら」


おそらく定期的に転移魔法を受け、なおかつ城の壁も変動していることもあり、位置関係が把握できず自信なさげに伝えるティアネ。


「少しだけ【リフェンディング】を使用し、リスクを圧縮します。ここでお待ちください」


「うん、おねが」


“ガコンッ”


「へっ?」


「ティアネさんっ!?」


突如、ティアネの足元の床がブロック状に大きくくり抜かれ、落下する。


「きゃああああああああああっ!!」


「姫様っ!?」「ティアネさあああんっ!!」


慌てて2人が手を伸ばすも届かず、張り上げた声が暗闇に溶け込み消えてゆく。


「くっ、私としたことが………!……それに、ここで姫様と分断されるとなる、と――」


最悪のケースを想定する2人。


これまでは『ティアネの恩恵』により、軽度なトラップのみで済んでいた。


が……その割合が変わるとなると――


“どすんっ!”


「お゛ゃゃぁゃっ!?」「いったぁぁあああ!?」


何故かティアネが『アルスティの頭上』から落下してきた。


「姫様っ!アルスティさん、ご無事ですか!」


「いっ……たぁああ……ええ、平気」


「あたたた……お、おかえりなさい……ティアネさん……」


目の前にぱっくりとあいた大きな床を眺める。


「……やはり……『正解のルート』と呼べるようなものがありますね」


目をつむり、魔力の揺らぎが薄い部分を感じ取るセニーナ。


「……しかし……少しずつ、位置が変わっています。定期的に確認する必要がありますね」


「えぇ……それじゃ、セニーナさんが疲れちゃいますよっ!」


「セニーナに正解の床を教えてもらいながら、向こうの扉まで歩いていかないとダメってことよね?」


「はい、ですが私はその間身動きが……お2人に手を繋ぎ、先導していただくとしましょう」


「わ、わかりました。じゃあ、手を……」


アルスティの手を遮るかのように、元気良く主張するティアネ。


「いいえ!もっとわかりやすく、手っ取り早い方法があるわ!」


急にセニーナに抱きついた、のではなく……『持ち上げ』た。


「っ!?」


「ええっ、なんですかっ!?」


「私がこうして運んであげるから、意識を集中させててっ!」


城と姫を守る騎士が、その姫に“お姫様抱っこ”のような形で抱えられる。


「……姫を守る護衛騎士が、このような……申し訳ありません。それに、私の重量分、腕への疲労が……」


少しバツが悪そうに塞ぎ込みかけるセニーナを温かく照らす。


「いいのいいのっ♪いっつも助けてもらってるし!というか重くなんてないわよ?♪思っていたよりずぅっと軽くてびっくりしちゃった♪」


「……ありがとうございます。では……集中しますね」


深呼吸を経て、セニーナは魔力の流れを読み取ることに意識のリソースを割く。


「まず、7歩ほど歩いてから……右を向き……」


次第に、目標到達点へのナビゲーションを読み上げ始める。


ティアネの後ろをぴったりとくっついて歩くアルスティ。


「次も、左へ8歩…少し回り道をします。再度、左へ……」


「よ~し♪もうあとちょっとよ!」


「はい。最後は4歩分を飛び越えるように、大きく……」


「ジャンプしろってことね、お安い御用よっ!」


人を抱えていると思えないぐらい、軽快に飛び上がるティアネ。


「あっ、その前に右に3歩ほど」


「えっ?」


“ぱこーんっ!!”


「痛ったぁああああっ!!?」


今度は床の崩落ではなく、以前のフロアで撃退した木桶が降ってきた。


「ん、っぐ……んにににに……お母様ったら………!!」


セニーナを抱えたまま、涙目のまま頬を膨らませる。


「で、でも……床が抜けなくて、良かったですね……あはは……」


「そ、うね……最後まで話を聞かずに跳んじゃった私も……悪かったわ!」


反省をすぐ済ませ、怒りを抑えるように力強く足を踏み込む。


“ガコンッ”


「あ」



新たに判明したセニーナの【スキル】と、忘れていた方向音痴具合……


加えて、ティアネの高い身体能力がさらに表現された一幕だった。



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