星空の下で
いつもご愛読ありがとうございます。
お陰様で3万pvを達成し、月別pv数の記録も更新できました。
これからもハマり続けてもらえるように頑張っていきますのでよろしくお願いします。
ワイバーンの襲撃を凌いだついでに昼食を取った迅たちは、飛竜のソフィアの治癒を済ませてから空の旅を再開させていた。
しかも、今度は男3人もソフィアの背に乗ったままでだ。
ソフィアは学院を出発する時は男3人を毛嫌いしていたのだが、ワイバーンから救ってもらった事に恩義を感じたのか、今度は嫌がることなく乗せてくれたのだった。
「おぉ、すげぇ!見ろよ和輝!まるで飛行機の外に乗り出してるみたいだぜ!」
「それくらいは分かるよ。頼むから大人しくしててくれ剛。これで機嫌を損ねてまたはたき落とされたらたまったもんじゃないだろ?僕はもうあんなに走りたくはないからな」
かなりの速度に興奮している剛が、背中の端の方へ移動してはしゃいでいた。
一方で和輝はというと、背中の真ん中辺りで体育座りで大人しくしており、無邪気な子供のように振る舞っている剛に批難するような目を向けていた。
どうやら先ほどまで走っていたのが響いているようで、〝また走る羽目にならないように″と大人しくしているのだった。
和輝だけ傷心気味ではあるものの、こうして全員を乗せてくれたソフィアに対して、ティアがその体を撫でながら声をかけていた。
「カズキさんたちを乗せてくれてありがとうね、ソフィア」
「グルァ!」
「よかった。これで和輝くんたちも消耗しなくて済むね」
和輝たちがソフィアの背中に乗れたことは麗奈たちも喜んでいた。
「ん、一件落着。私も危うく死にそうだったから助かった」
「それは繭が懲りずに見てたからでしょ?」
真面目な顔で頷いている繭に、凛がジト目をしながらツッコミを入れた。
一方で迅も隅の方で寝転んでいるのだが、昼寝をしようとしているところでシルフィアの妨害を受けていた。
「お姉さまにも『借り』が出来ましたわね、ジンさん」
「だからその理屈はおかしいだろ。こっちは助けた方だぞ?それに姫さんからは依頼の報酬をまだ貰ってないからな。仮にお前のトンデモ理論があったとしても、未だに姫さんの方が俺に『借り』がある状態だぞ」
ティアをお姫さま抱っこした件について指摘してくるシルフィアに、迅はだるそうにしながら反論した。
しかしいくら弁解しようとも、普段の仕返しのつもりでいるシルフィアは止まらなかった。
「お姉さまはそんなに安くありませんよ。だからまた『借り』が増えたことになりますわ」
「あ〜、はいはい、それでいいからもう寝かせてくれよ。こっちは朝早くに起こされたうえに走らされたから眠いんだよ」
「せっかくの空旅なんですから堪能しないともったいないですよ?」
ついに根負けした迅がめちゃくちゃ理論を認めたものの、それに調子付いたシルフィアがニヤニヤしながらなおも妨害を続けてきた。
そんないつになくしつこいシルフィアに対して迅は―――
「……柑奈、頼むからこいつに構っててやってくれ」
近くにいた柑奈に丸投げした。
「あはは、分かりました」
「ちょっと!人を子供みたいに扱わないでください!」
ぞんざいに扱われたことで憤慨するシルフィアだった。
こうして仲良く?話しながら空の旅を続けた迅たちは、日が完全に落ちる前に今日の野宿場所を確保し、キャンプ感覚で寝床などの準備をしていった。
辺りが完全に暗くなった頃、迅たちは魔力を流すことで光を放つ小さい灯篭のようなものの明かりを頼りに、ほぼ出来立ての料理を『魔法袋』から取り出して夕食を取っていた。
「あー美味かった!」
「そうだな。それに今日はよく動いたからまだ食べれそうなくらいだよ」
他よりも一足先に食べ終わった和輝と剛が、満足そうな表情で語り合っていた。
そして、同じく完食していた迅が立ち上がり、暇になった2人に声をかけた。
「さてと……おい、神崎と八木沼。ちょっと向こうまでついてこい」
「え?何かするのか?」
「ま、待てよジン!俺は今日は何もやらかしてないはずだぞ!」
林の奥へと指をさして誘ってきた迅に和輝は単純に聞き返したものの、不良の呼び出しのように受け取った剛は軽く青ざめながら身構えていた。
「べつに叱るわけじゃねぇよ。いいからついてこい」
余計な勘繰りで焦っている剛に、呆れた表情を浮かべた迅。
そんなやりとりをしているところへ、ティアが声をかけてきた。
「ジンさん、3人で何かをするつもりなんですか?」
「まぁな、男同士のちょっとした野暮用ってやつだ。てなわけだから、姫さんたちは少しの間ここにいてくれ」
「分かりましたけど、変な事だけはしないでくださいね」
「分かってるよ」
ティアは内容を明言しなかった迅に疑念を抱いたものの、〝追及する必要はない″と判断して迅たちを見送った。
迅たちが林の奥へと行ってしばらくたった頃、麗奈たちは食事も終わって手持ち無沙汰になってきていた。
「30分以上は経ったけど、まだ戻ってこないね?」
「ん、てっきりすぐに戻ってくると思ってた」
「何をしてるんだろうね?」
麗奈だけではなく、他の全員も迅たちが何をしているのかが気になっていた。
そんななか、考え込むようにしていたシルフィアが全員に向けて声をかけた。
「……皆さん、見に行きましょう」
「シル、貴女またジンさんにちょっかいをかけたいだけでしょう?」
「やめておいた方がいいよ、シルちゃん」
シルフィアの提案に対して、ティアと柑奈が否定的に返した。
「今回はそういうつもりはありませんわ。ただ単に、今見に行かないと後悔するような気がするんですの」
ティアの言い分に関してはシルフィアは何の弁解も出来ないはずなのだが、それでも自分が予感している事を確かめずにはいられないようだった。
「そんなよく分からない理由であの人たちの邪魔をしちゃダメに決まってるでしょ。いいから大人しくしていなさい」
「待ってティア。ちょっとだけ見に行くならどう?」
よく分からない根拠でなおも言い募ってくるシルフィアに対して、少しだけ口調を強くして窘めたティア。
しかしそこへ、同じく気になっていた繭も口を出してきた。
「マユさんもそんな事言って……」
「繭、面白そうだから見に行きたいんでしょ」
「それはもちろんあるけど、ジンくんがあの2人だけを呼んだのがまず怪しい。だってジンくんなら大抵の事は1人で出来るし、もし特訓だったら私たちにも教えてくれるはず」
繭は凛の指摘を認めつつも、気になっている点についてちゃんとした理由を説明した。
「それはそうかもしれないけど……」
「それにジンくんはハッキリとモノを言うタイプのはず。そのジンくんが〝男同士の野暮用″って誤魔化したってことは3人でずるい事をしてるのかも」
「そうですわ!きっとそうですわ!あの3人は〝走らされたから″って自分たちだけおいしい思いをしているんですわ!」
流れを変えた繭の説明に、まるで確信したと言わんばかりに訴えるシルフィア。
「……はぁ、分かりました。コッソリと確認するだけで邪魔をしないと約束出来るなら認めます」
2人の言い分、というよりも繭の推測が分からなくもないティアは、仕方なく条件付きで認めることにした。
「分かりましたわ!」
「まったく、そもそもジンさんが私たちを除け者にするはずありませんから、きっとその考えは外れてますよ」
ハッキリと返事をしたシルフィアに嘆息しつつ、迅の事を信頼しているティアは最後まで2人の考えを否定していた。
テントなどを繭と凛の二重壁で囲って準備を済ませたティアたちは、迅たちが歩いていった方へまっすぐに歩いていた。
「3人ともどこまで歩いていったのかな?」
「ん、私たちもいる以上、そんなに遠くには行ってないはず」
「おそらく、そろそろ見える頃だと思いますわ」
とくに魔物と遭遇することもなく10分ほど歩いた麗奈たち。
すると程なくして、木々の隙間から白い光が見えてきた。
「あれ?あっち側で何か光ってない?」
「あれは師匠の『魔力結界』なの」
「何度も見たから間違いないの」
凛が最初に光を発見し、それを見たイリスとエリスが迅のものであることに気付いた。
「ってことは本当に特訓してるのかな?」
「やっぱりシルの早とちりだったのよ」
「まさか本当に違うなんて……」
わざわざ魔力を使ってまでやる事なんて限られているため、〝今回は本当に間違っていた″と確信するしかなかったシルフィア。
そして、だいぶその光の元まで近付いた麗奈たちは木の陰からそっと覗いた。
するとそこには―――
「はぁ〜、やっとゆったり出来るわ〜」
「あ〜、疲れた体に染みるな〜」
「まったくだ。それに、空を見れば満天の星空。こんな最高なお風呂は初めてだよ」
バカでかい『魔力結界』を湯船の形にしてお風呂を満喫している3人がいた。
「「「この卑怯者ーーー!」」」
見た瞬間に〝お風呂だ″と悟った木原姉妹と凛が木の陰から飛び出して声を張り上げた。
「ほらやっぱり!ジンさん!あなたは本当に最低な人ですわ!」
「「ひゃ〜、師匠のハダカ〜」」
指をさして怒るシルフィアに、お風呂よりも迅の裸に興奮しているイリスとエリス。
「「………………」」
ティアと繭にいたっては無言で唖然としていた。
突然現れた麗奈たちに、和輝と剛は驚いていた。
「麗奈⁉︎それにみんなも⁉︎」
「和輝くん?3人だけで何を楽しんでるのかな?」
「ひっ⁉︎」
笑みを浮かべつつもいつにない怒気を放ってくる麗奈に、ビクッとして青ざめていく和輝。
「お姉ちゃん、剛さんも同罪だよね?」
「うぇっ⁉︎」
麗奈と同じような表情をしている柑奈が剛に対しても指摘すると、和輝と同じように青ざめつつ裏返った声が出てしまっていた。
「やっぱり来たか。悪いが俺らは疲れを癒してるところだ。分かったらもうしばらく静かにしててくれ」
全く悪びれていない迅が手をヒラヒラとさせながら言い放つと、その態度にカチンときたシルフィアが詰め寄った。
「あなたって人は!自分たちだけ良い思いをしておいて、よくもそんな態度がとれますわね!」
「仕方ないだろ?俺らは頑張って走ったりワイバーンを倒したりしたんだ。これくらいは大目に見てもらわないとな。なぁ姫さん?」
「………………」
迅が今までずっと固まっていたティアに話を振ると、ティアは無言で迅の元へと近づき、しゃがんで迅の頬をつねり始めた。
「はひふんはよ」
「私の信頼を返してください」
「ほんはほほいっへほ」
ジト目を向けながらつねってくるティアにされるがままの迅。
「ねぇ、ジンくん。私たちもお風呂に入りたいんだけど……ダメかな?」
頬をつねられたままでいる迅の元へ来た凛が、伺うように懇願した。
凛は出来ることならば自分たちで用意したいと思っているのだが、和輝やティアも含めて『魔力結界』は中途半端なものしか出来ないために、迅に頼むしかなかったのだった。
ちなみに、イリスとエリスでは単純に魔力不足なので、お風呂のような大きさは作れないのが現状だ。
「分かってるよ。俺らが出たあとに用意してやる」
「やったー!ありがとう、ジンくん!」
ティアの手をほどきながらあっさりとお願いを引き受けてくれた迅に、声を大にして喜ぶ凛だった。
「ふん!当然のことですわね」
感謝するでもなく威張るように言い放ったシルフィア。
そんなシルフィアに対して、迅はニヤリと笑みを浮かべた。
「おいおい、俺は無条件でなんて言ってないだろ?シルフィア、お前が俺の昼寝の邪魔をした事を謝ったら用意してやるよ」
「な⁉︎なんで私だけなんですの!」
「そんなのは自分がよく分かってるだろ?それに俺の性格もな」
どうやら今度は昼寝を邪魔したことへの仕返しのようだった。
そんな迅の考えを全て悟ったシルフィアは歯噛みした。
「くっ!そ、そんな事を言われたって―――」
迅に対しては負けん気を発揮するシルフィアが反論しようとしたところで、その華奢な肩をティアが優しく掴んだ。
「シル、一回謝るだけですよ?」
「お姉様⁉︎」
まさかの1番信頼している姉が迅の味方をしたことに、目を見開いて驚いたシルフィア。
「ほら、ジンさんの気が変わらないうちに早く」
「で、でもそんな「シル?」ぴっ!」
シルフィアはティアの言葉にも抵抗しようとしたのだが、笑みと同時に放たれた威圧に怯んでしまっていた。
そして、これ以上の抵抗は無意味だと悟ったシルフィアは迅に向き直った。
「うぅ……くっ……ジ、ジンさん。お昼の時は、その……邪魔をして、申し訳、ありませんでした」
存分に悔しさを滲ませつつも、しっかりと謝罪を口にしたシルフィア。
明らかに心からのものではなかったものの、それで充分だった迅は腕を組んで一つ頷いていた。
「おう。謝罪の言葉、しっかりと受け取ったぜ。これに懲りたら今後の昼寝は邪魔をするなよ」
「キッ!」
ニヤニヤしながら地味な追撃をしてきた迅に対して、シルフィアは悔し涙を浮かべながら睨み返した。
迅たちのお風呂タイムが終わり、改めて広くした湯船にお湯が張られていた。
そして『魔力結界』を色んな形に変形させることで、湯船以外にも服を置いておく場所や体を拭く場所などを作っていた。
白い光を放つ『魔力結界』の中でお湯に浸かっている8人の乙女たち。
その光景はとても神秘的なもので、彼女たちの美しさ、そして可愛さを際立たせていた。
「はぁ〜、いいお湯だね〜」
「そうだね、お姉ちゃん」
「これは本当に感謝しないとですね。このお湯、よく見たら癒しの効果まで含まれてます。こんな事まで出来るなんて、やはりジンさんは多彩ですね」
「……悔しいですけど、このお湯は本当に良いものですわ」
「「極楽、極楽〜」」
しばらくは我慢するしかないと思っていたお風呂に入れたことで、シルフィアを除いた全員が心から堪能していた。
「さてとみんな、旅行の定番、恋バナをしよう」
全員がゆったりとしているところへ、目をキランと光らせて提案した繭。
「また繭は突然そんな事言って〜」
「仕方ない。これは女同士だからこその定番なんだもの」
まるで自分は悪くないというように頷いている繭。
繭の中では決定事項だからこそ、他の人の意見は聞くつもりもないようだった。
「で、麗奈と柑奈ちゃんはいつから和輝くんのことが好きなの?」
「う〜ん、私はいつの間にかって感じかな?」
「私も同じです。小さい頃からずっとかっこいいなって思ってましたから」
真っ先に話を振られたというのにスラスラと答えた木原姉妹。
2人とも頬を染めてはいるものの、恥ずかしさなどは感じてるわけではないようだった。
「凄いね2人とも。そんな堂々と話せるなんて」
「そりゃ自分の本心だからね。それに、うじうじしてたら足元をすくわれちゃうから」
「いくらお姉ちゃんでも負けないからね」
そう言ってお互いに好戦的な笑みを見せ合う木原姉妹。
「2人はちょっと特殊な感性だね。普通だったらもっと殺伐としてるはず」
「ふふ、仲が良いからこそだね。で、言い出しっぺの繭はどうなの?」
「私はそういうのは特にない。でもジンくんはかっこいいなって思う」
「あ、それは分かるなぁ。ジンくんは強いから頼りになるもんね」
繭と凛はどちらも迅の名前を挙げているが、好きな人というよりも憧れや尊敬といった感情の方が強いようだった。
するとそこへ、シルフィアも話に加わってきた。
「あんな人のどこがいいんですか?人に嫌がらせをする事しか考えてないような人ですよ?」
普段の態度が良くないというのもあるだろうが、迅に対してもはやトゲしかないような評価を付けていたシルフィア。
「でもそれはシルフィアちゃんにだけな気がするけど?」
「ん、それにこっちから見てると仲良くケンカしてるように見える」
「私とジンさんの仲が良いなんてことは一切あり得ませんわ。でも、あの人の実力に関しては信頼しています」
繭と凛の率直な感想をキッパリと否定したシルフィアだが、それでも迅の全てを毛嫌いしているわけではなかったようだ。
「へぇ、そうなんだ。じゃあ誰か気になる男の人とか「男なんて大抵はクズですわ」……そっかぁ」
凛の問いかけを遮ってまで自分の価値観を吐き捨てたシルフィア。
凛もこれにはさすがに反応に困ってしまっていた。
〝これ以上は聞けない″と判断した繭は、次にティアへ問いかけた。
「じゃあティアはどうなの?王女としてよくアプローチをかけられてるんだろうし、誰か気になる人とかいない?」
「そうですねぇ。私もピンとくる人はあまり……っ!」
繭の質問に、今まで王宮などの社交の場で知り合った人たちを思い出していったティアだったが、唐突に迅にお姫さま抱っこされたのを思い出して赤面してしまった。
「え?その反応はもしかして……」
「い、いえ、なんでもありませんよ?」
一瞬で表情が変わったティアを見た凛がまじまじと視線を向けたところ、明らかに動揺して目を逸らしたティア。
「これは当たり。耳まで赤くなってるもん」
「こ、これはお風呂に入ってるからですよ?」
完全に確信までしている繭が、ニヤニヤしながら真っ赤になっているティアの頬や耳をツンツンしていた。
ティアはそれでも誤魔化そうとするが、全く動揺を隠せていなかった。
そんなティアの話を聞いていたシルフィアは、大好きな姉が男に誑かされそうである事に危機感を覚えて、ティアに詰め寄った。
「お姉さま!一体誰なんですか⁉︎かくなるうえは私が排除してみせますわ!」
「シルちゃん、排除しちゃダメだよ」
姉のためにすぐにでも暴走しそうなシルフィアを、柑奈が苦笑しながら抑えようとしていた。
そしてそんな喧騒をどこか遠くの事のように感じているティアは、かつてない羞恥心に見舞われていた。
(とても恥ずかしいです!ただ聞かれて思い出しただけでこんなに恥ずかしいなんて……これは初めてダンスを踊った時よりもキテるかもしれません。いや、でも、あれは初めての経験だったからこそ恥ずかしいのかもしれなくて、だからべつに大した話ではないわけで……)
ティアの頭の中では徐々に混乱し始めていた。
のんびりするはずのお風呂で微妙に騒ぐ乙女たちの会話は、まだしばらくは続きそうであった。
私事なんですが、未だに本職の方が忙しいので、クリスマス投稿・お正月投稿などは期待しないでください。
申し訳ありません。
感想やレビュー、評価などをお待ちしています。




