北の学院へ出発
和輝たちが学院対抗戦を受けると決めたその日の夜、いつも通りにイリスとエリスの特訓を済ませた迅は、寮の自室で本を読みながらのんびりとくつろいでいた。
ちなみにサラとセラは迅の精神世界の中で戦い疲れてしまい、すでにぐっすりと眠っていた。
「ふぁ〜あ、そろそろ寝るか」
ベッドの上で読んでいた本を閉じた迅は、大きなあくびをしながら手を伸ばして本を机に置いた。
そして寝るために仰向けになったところで、 部屋の扉を誰かがノックした。
「……寝るか」
〝もうベッドで寝てるから仕方ないな″と自己完結した迅は、魔導具による明かりを消して目を瞑った。
(俺は何も知らなかった。何も聞こえなかった。寝ているから分からなかった。これでオーケー)
全力の現実逃避をする迅であった。
しかし―――
カチン!ガチャ
「失礼しますわよ、ジンさん。あらあら、まだ寝ていないなら明かりを点けませんとね?」
段取り良く管理人から借りてきた鍵を使って開けたシルフィアが女護衛の1人と一緒に部屋の中へと浸入し、わざとらしい口調で話しながら魔導具に魔力を流して明かりを点けた。
するとパッと部屋が明るくなり、たいして物が置かれていない迅の部屋が照らしだされた。
その部屋の片隅にベッドがあり、迅はその上で壁側に顔を向けるようにして寝ていた。
「すー……すー……」
あくまでも寝ていることにして起きようとはしない迅。
迅が寝たふりをしているというのを察しているシルフィアは少し考え込んだあと、無言で迅のベッドまで近づいていった。
ベッドの側で立ち止まったシルフィアは、指先に無詠唱の小さい火球を作り上げた。
そしてその火球を、ゆっくりと迅へ近付けていき―――
「分かった分かった!起きるから火はやめろって!」
さすがに燃やされては堪らないので、迅は慌てるように体を起こしてシルフィアを制止した。
やっと寝たふりをやめた迅を見たシルフィアは、火球を霧散させて腕を組んだ。
「まったく、最初から寝たふりなんてしなければいいんです」
「だからといってこんな室内で火球もどうかと思うけどな」
全く悪びれていないシルフィアに、ジト目で訴えた迅。
それに対してプイッと横を向いて無視するシルフィア。
「で、こんな時間に何の用だ?」
〝これ以上言っても無意味だな″と悟った迅は、さっそく本題を話すように促した。
「実は今日、北の学院にいる勇者から学院対抗戦の申し入れがありました。向こうは同じ勇者であるカズキさんたちを指名してきまして、カズキさんたちも乗り気だったので対抗戦を受けることになったんです。それで私たちは飛竜で、護衛の皆さんは馬で移動するつもりなのですが、ハッキリ言って移動速度が違いすぎるので護衛なんて出来ないんです。そこで、ジンさんに同行をお願いしたいんです」
シルフィアから割と細かく説明された迅だったが、その話の先のお願いに関して疑問を浮かべた。
「俺を護衛代わりにってか?それで護衛のやつらが納得するのか?」
迅はシルフィアの後ろに控えている女護衛に目を向けつつ問いかけた。
「私たちはそれで構いません。力不足である私たちの落ち度で面倒をかけてしまいますが、どうか殿下をよろしくお願いします」
「はいよ。あんたらが納得してるんだったらべつに構わねぇさ」
頭を下げて頼んでくる女護衛に、迅はすんなりと引き受ける旨を伝えた。
しかし、前に和輝たちと一緒に遺跡への同行をお願いした時には断られたのに、今回はすんなりと引き受けてくれたことに逆に疑問をもったシルフィアが尋ねた。
「あら?今回は素直に引き受けてくれるんですのね?」
「まぁな。本音を言えば他の勇者が気になってたからな。今回の話は丁度いいってわけだ」
前回は何も無いという話だったからこそ同行しなかった迅だが、今回はまだ見ぬ勇者に会えるからこそ引き受けたのだった。
「そうなんですか。それなら私への借りは残ったままになりますわね」
「は?借り?俺がいつお前に何の名目で借りを作ったんだよ」
シルフィアがサラッと口にした『借り』が身に覚えのない迅は、驚いた表情をしながら聞き返した。
そしてそのシルフィアはというと、こちらも驚いた表情をしていた。
「まさか忘れてるんですか?このあいだ出掛けた時に私のことを抱きあげたじゃないですか」
「は?ちょっと待てよ。それで借りを作ったことにされてるのもおかしいけどよ、あれはお前が指示したことだろ?」
まるで〝当然でしょ?″と言わんばかりの態度で返された迅は、その横暴すぎる『借り』の内容にたまらず反論した。
「確かに私が指示しましたけど、姫である私を抱きかかえるなんてこれ以上にない名誉なんですよ?本当ならばお金を積んで土下座で頼んでも出来ないような事を経験したんですから、これくらいは当然のことですわ。むしろもっと色々と請求してもよろしいんですよ?しょ・み・ん・さ・ま?」
どこか馬鹿にするような言い方をしてきたシルフィアにイラッときた迅は、顔を引きつらせながらもその挑発を叩き返すことにした。
「おいおい、それはおかしいにもほどがあるだろ?いくら姫だからといっても貧相ボディのお子さま体型にありがたみを感じるわけねぇだろうが。そういう事はもっと自分のお姉さまのように豊満に育ってから言えよ。この詐欺姫が」
ティアとの差を突きつけながら反撃した迅に対して、シルフィアは怒りで顔を赤くさせていた。
「言いましたわね!また言いましたわね!しかも詐欺姫⁉︎よりにもよってそんな名前で呼ぶなんて!いいですか⁉︎私の力でかの有名な要塞監獄に入れることだって出来るんですからね!その点をよく踏まえてさっきの言葉を取り消してください!ほら早く!」
怒りの感情に任せてだいぶ危ない発言をするシルフィア。
そしてそんなヒートアップしていく2人をそばで静観していた女護衛は、〝さすがにこれ以上はまずい″と思い、2人を刺激しないようにやんわりと声をかけた。
「あの、そろそろ2人とも落ち着いて「おーおー、ついには権力も取り出してくるのか。なんて横暴な姫なんだ。だがそれは俺が最も嫌いなもんだ。その要塞監獄ごと吹き飛ばされてぇならかかって来いよ」
護衛が制止しようとしたところで迅が更に挑発してしまい、シルフィアとの罵り合いが始まってしまった。
〝これはもう無理だ″と悟った護衛は急いで部屋から出て、外で待機していた他の護衛に声をかけた。
「誰かすぐにティア殿下を呼んできてくれ!私たちでは手に負えん!」
指示を受けた護衛の1人が急いでティアのもとへと向かい、残った者で迅とシルフィアを抑えにかかった。
しかし、直接手を出すわけにもいかなかったので、結局ティアが止めに来るまで言い合いを続けた2人であった。
数日後、全ての準備を整えた迅、イリスとエリス、勇者一行、王女姉妹は、一悶着ありつつも咲恵たち生徒会の見送りを受けて【北セントレア】へと出発した。
今回の移動で使われる飛竜は王族が大事に育ててきたもので、体も大きく育っているために一気に10人以上は乗せることのできる巨体を誇っていた。
しかし体が大きくてもその移動速度はかなりのもので、軽くしか飛ばないとしても『身体強化』は必ず必要になるほどだ。
だが、今回は凛が特殊な風の結界を張ることでその必要もなかった。
具体的には風圧を軽減する効果を持った結界で、これによりそよ風が吹いている程度にしか感じないほどに軽減していた。
天気は快晴、なおかつそよ風を受けながらの空の旅は爽快の一言に尽きるものだ。
しかし、かなりの速度で飛んでいる飛竜の背ではイリスとエリス、それに繭の高笑いが響いていた。
「「「あははははは!あはははははははは!」」」
「も、もう繭!プフッ!笑ったら悪いって!」
繭を制止させようとする凛も、堪え切れない笑いを噴き出しかけていた。
さらにその横でも目に涙を浮かべてお腹に手を当てているシルフィアがいた。
「はー、はー、お腹痛いですわ。これでは着くまで保たないかも……プッ、アハハハハ!」
そう言いつつ地上を見たシルフィアは、また我慢すら出来ずに笑い始めた。
「シルもいい加減にしなさい。下を見なければ問題ないんですから」
大人しく座っているティアが言葉では厳しく言うものの、その顔はどう見ても笑いを堪えているとしか思えない表情をしていた。
「ふふっ、でも仕方ないと思うよ、ティア」
「私も……悪いとは、プフッ、思いますけど……クスクス」
木原姉妹も堪えきれておらず、空よりも地上の方が気になっているようだった。
「あははははは!あれ!あの走り方!あっはははははは!」
いつまでも高笑いし続けている繭が、飛竜の背の端から下を見ながら指をさしていた。
繭が指を向けた先に何があるのかというと、猛烈なスピードで走る3人の姿があった。
ドドドドドドドド!
「「うぉおおおおおっっっ!」」
「………………」
その走っている姿の正体は、『身体強化』の光を迸らせながら全力で走っている和輝と剛、そして無言で余裕をもって走る迅の3人であった。
そう、繭たちは地上を走っている3人を見て笑っていたのだ。
しかし、具体的には和輝と剛を見てだ。
なぜなら、迅は一足でかなり前へ跳んで優雅に走っているのに対して、和輝と剛は短距離走をするような走り方をしていたのだ。
前の世界でなら何も笑う要素のない綺麗なフォームなのだが、今は超人と言っていいほどに強化できる世界にいるのだ。
その強化された状態で前のフォームで走ると、まるでギャグ漫画のように手足が動き続けているのだ。
さらに飛竜から離されないようにと必死な顔をして走ると、その実際の動きを見た者からは笑いの種でしかなかった。
「ちきしょう!こっちは必死こいて走ってんのに!上から笑い声が聞こえてきやがる!」
「文句言ってもしょうがないだろ!あの飛竜が乗せてくれなかったんだから!それよりも走ることに集中しないと置いてかれるぞ!」
必死に走りながら微妙に憤慨している剛が愚痴り、それを同じく必死に走っている和輝がなだめていた。
『身体強化』の影響で息切れはしない2人だが、向こうに着いた時に影響が出ないように飛竜で行こうとしたのに、これでは魔力とある意味で精神もやられてしまいそうだった。
実は出発する前の一悶着というのがこれだったのだ。
用意された飛竜にティアから乗り始めて、いざ和輝が乗ろうとすると、飛竜が和輝を尻尾でペシッとはたき落としたのだ。
それを見ていた剛が〝何やってんだよ″と笑いつつ乗ろうとすると、これまたペシッと尻尾ではたき落とされた。
目の前で仲良くうつ伏せに倒された2人を見た迅が飛竜に目を向けると、表情も分からないその顔からなぜか察してしまい、乗るのを諦めた迅。
そのあと、どうにか和輝たちを乗せようとティアが説得してみるものの、飛竜がそこは一向に譲らなかったために仕方なく走ることにしたのだった。
ちなみに、見送りをした生徒会メンバーも大笑いしていた。
すぐ横でうるさいうえに見るだけでウンザリしてしまうような走り方をしている2人に、迅は呆れたような目を向けながら声をかけた。
「なぁ、お前らもっと楽な走り方にしろよ。見てるこっちが疲れるわ」
「そんなこと言っても!いきなり変えられるわけないだろ!」
「いいから試しに思いっきり跳んでみろよ。そうすりゃ1発でコツも分かるはずだ」
見兼ねた迅が強引にやらせてみると、不恰好ながらも迅と同じような走り方になっていった2人。
速度も問題無いので、これでだいぶマシになったはずである。
そもそも、さっきまでの走りではただ単に手足を速く動かしているだけだったのだ。
それでは効率が悪いし、強化されている以上は踏みこみには問題無いのだからひとっ飛びを繰り返した方が楽でいいのは当たり前であった。
和輝と剛が少しずつ走り方を変えているところを、麗奈が真っ先に気付いた。
「あっ、走り方が変わった」
「よかった、あれなら笑うこともありませんね」
麗奈の言葉を聞いたティアは、下を覗いて見えた光景に安堵していた。
「やっぱりティアも笑ってたんだね」
「仕方ないじゃないですか。まさかあんな走り方をするとは思ってませんでしたもの」
凛から指摘されたティアは、苦笑いしながら弁解した。
「はー、はー、もうだめ……お腹痛すぎて死にそう……プッ、クククク!」
一方で、繭は未だに余波を受けていた。
そしてイリスとエリス、シルフィアの3人はもう笑ってはいないものの、笑いすぎによるお腹と精神的なダメージによって倒れこんでいた。
持っていた小型の簡易時計で時間を確認したティアは飛竜の首根っこの方へと移動し、その体を撫でながら声をかけた。
「もう少しだけ飛んだらお昼にしましょうか。あと少し頑張ってね、ソフィア」
「グルァッ!」
ティアに声をかけられたソフィアは、元気良く吠えて返事した。
そしてそのまま少し飛んだところで、ソフィアの正面に何か黒いものが見えてきた。
「ガァアアアッ!」
その黒いものの姿かたちがハッキリと分かってきたところで、ティアたちが乗っているソフィアに狙いをつけたのか、その黒いものは勢いよく向かってきた。
その向かってくるものを見たシルフィアは、驚いたように声をあげた。
「あれは!ワイバーンの変異種⁉︎」
全身が真っ黒なワイバーンはソフィアの3〜4倍の体躯を持っており、それが真っ直ぐに向かってくるのはかなり恐ろしいものがあった。
「ソフィア!ぶつからないように飛んで!」
「グァッ!」
ティアの指示を受けたソフィアは、ワイバーンと接触する手前で急降下して躱した。
しかし、偶然にもワイバーンが振り回している尻尾がソフィアへと向かってしまい、凛の風の結界に衝突した。
バリン!
「うそ⁉︎結界が破られた⁉︎」
「すぐに張り直す!」
すでに気持ちを切り替えていた繭が魂剣を出そうとしたが、その前にワイバーンが向かってくるのが先だった。
ほぼ真上から迫ってきたワイバーンを、体を回転させながら躱したソフィア。
「きゃあっ!」
その急な動きに、たまらず取り付けられていた手すりを掴む麗奈たち。
繭も魂剣を出すよりも掴む方を優先するしかなかった。
「皆さん!落とされないように掴まってください!」
ティアが顔を上げて全員に注意を促したその時、下から放たれた黒い光線がソフィアの翼を掠めてしまった。
「グルァッ⁉︎」
驚いたソフィアが少し暴れるように動いてしまい、手すりを中途半端にしか掴んでいなかったティアが手を滑らせて空中に放り出されてしまった。
「あっ――――」
呆然としながら背中から落ちていくティア。
そして落ちている事をはっきりと認識すると、たまらず目を瞑った。
するとそこへ―――
『大丈夫だからそのままでいなさい、ティア』
ティアの中にいるディーネが落ち着かせるように声をかけた。
その言葉を信じたティアがぎゅっと体を固まらせた直後、ティアの背中と膝裏に優しく触れる感触があった。
それに気付いて目を開けるとそこには、地上にいたはずの迅がティアをお姫様抱っこの形で抱きかかえていた。
「ジンさん!」
「しっかり掴まってな、姫さん!」
呼びかけてきたティアに簡潔に返すと、迅は上空に来た時のように『魔力結界』を使って移動し、ワイバーンの首に蹴りを放った。
ズドン!
「ギュルアッ⁉︎」
ティアに衝撃をあまり与えないために威力を弱めていたが、それでも軽く怯ませることに成功した迅。
「姫さん!このままやるから身体強化を掛けておけ!間違っても舌を噛むんじゃねぇぞ!」
「はい!」
迅がワイバーンを見据えながら指示を出し、受けたティアは『身体強化』を掛けて両手で迅の胸元の服を掴んで備えた。
一方で、迅に一撃を喰らって怯んでいたワイバーンは体勢を直すと、狙いを迅に定めて口の先に黒いエネルギーを溜め始めた。
「残念、それは悪手だぜ。『魔力結界』!」
迅はニヤリと笑うと、いつぞやと同じように『魔力結界』をエネルギー弾の目の前に張った。
その事に気付いていないワイバーンは、溜めきったエネルギー弾を放った。
ズドォン!
「グルォッ⁉︎」
案の定、目の前で爆発し、たまらず錯乱している間にワイバーンの頭上へと移動した迅。
「オラァッ!」
迅は自分の頭上に張った『魔力結界』を使って下へ勢いよく跳び、一回転してかかと落としを放った。
ズッ、ドォオオオン!
脳天に重い一撃を喰らったワイバーンは、弾かれたように地上へ叩き落とされた。
そこへ、下で待機していた和輝と剛がトドメを刺すために襲いかかった。
急なワイバーンの襲撃を乗り切ったのを確認し、ホッと安堵した麗奈たち。
そしてイリスとエリスと繭の3人は、目の前で見た圧倒的な戦闘に目をキラキラとさせていた。
「おぉー!カッコイイ!」
「「凄いの師匠!」」
派手な戦闘に大興奮の3人であった。
「なんとかなりましたわね。ソフィア、無茶しないようにゆっくりと降りて」
「グルゥ……」
シルフィアは一旦落ち着かせるためにソフィアに指示を出した。
そのソフィアはどこか申し訳なさそうにしていた。
下で和輝と剛がワイバーンを滅多打ちにしているのを確認した迅は、ひと息ついてから腕の中にいるティアに声をかけた。
「ふぅ、大丈夫か姫さん?」
「はい、ありがとうございました。それにしても凄い動きでしたね。目が回りそうでしたわ」
「悪かったな、足だけだと派手に動くしかなかったからよ」
笑みを浮かべて答えるティアに、苦笑いしながら謝る迅。
「ふふっ、べつに気にしてませんわ。むしろジンさんの戦い方を間近で見れて良かったです」
「そりゃなによりだ。さて、俺たちも降りるか。ずっとこのままってわけにはいかねぇからな」
「そうですね……っ!」
迅に同意した直後に、自分がお姫様抱っこされているのを今更ながらに気付いたティア。
(そうでした!私、ジンさんに抱かれていたんでした!)
王女であるティアはもちろん初体験なので、認識した途端に変な硬直をしてしまった。
「ん?どうかしたか?」
「い、いえっ、なんでもありません!」
違和感を感じた迅に問いかけられ、微妙に頬を染めつつも誤魔化したティア。
しかし、内心ではいつもとは別人と言えるほどに羞恥心に悶えていた。
(あぁ……これは予想以上に恥ずかしいです。それに、これ程までに殿方と密着したことなんてありませんから、どうしても意識してしまいます……)
『魔力結界』の足場を作ってゆっくりと下へ跳び降り始めた迅の顔を見ると、見慣れていたはずなのに別人のように見えてしまい、その事が無性に恥ずかしく感じてしまうティア。
(でも、こんなに逞しく感じるものでもあるんですね。ドキドキしますけど、それでいて安心できるような不思議な感覚です)
ティアは迅の力強い腕に包まれながら、初めて感じる気持ちに戸惑っていた。
しかし決して悪いものではなく、むしろ心が温まるような感覚であった。
(これが恋というものなんでしょうか……それすらも分かりませんけど、今はもう少しだけ、この人の腕の中で堪能させてもらいましょう)
そうと決めたティアは迅の胸に頭を預けて、下に降りるまでその心地いい感覚に頬を緩ませていた。
またワイバーンかよ!というツッコミは無しでお願いします。
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