蒼影の覚醒者
魔物の群れが村へと入る前に立ち塞がった和輝たちは、簡単な作戦を立ててから魔物と戦おうとしていた。
「僕と剛と麗奈で1番デカイのを倒す!繭と凛と柑奈ちゃんは小さいのを頼む!」
どういう訳か和輝たちを確認した瞬間にオーガと小鬼たちとで分かれたので、和輝も人数を分散させる方向で剛たちへ伝えた。
50メートルほど離れた所に見えるオーガは真っ直ぐに進んでおり、小鬼たちは側面から村の中へと入るつもりらしく、回り込むかのように動きはじめていた。
「「私たちは遊撃!」」
魔物の動きを見ていたイリスとエリスは、デカイのは和輝たちで充分だと考えて、攻め手が少ない繭たちの方へと向かうようだった。
「サラ、私たちは討ち漏らしをやりましょう」
「ええっ⁉︎あたしも戦いたい!」
「ダメです。ジンさんに任されたじゃないですか」
「あぅぅ、そうだった……」
「それに、あの程度の敵には勇者たちで充分です」
サラは率先して戦う気満々だったが、セラが万が一の事を考えて止めていた。
セラに止められたサラは渋々といった感じで了解し、村の囲いのギリギリの所で構えた。
真っ直ぐに和輝たちへと突進してきたオーガは、どこで手に入れたのか、持っていたバカでかい斧を和輝へと振り下ろした。
「グラァアアアッッ!」
ガキン!
「ぐっ!重い、けどっ、これぐらい、なら!剛っ!」
オーガの斧を『ゼヴォルス』で受け止めた和輝は、必死に踏ん張りながら親友へ声を掛けた。
その声に反応した剛はオーガの死角から近づき、無防備な脇腹へ衝撃波を纏った拳で殴りつけた。
「オラァッ!」
ズン!
「グルォッ⁉︎」
「『グリン・ラジェーション』!」
ズドン!
「グラァッッ⁉︎」
剛に殴られてフラついたところへ、麗奈がビームとでも言うべき光の閃弾を放った。
光の閃弾は一直線にオーガの肩を撃ち抜き、オーガはその痛みのあまりに斧を落として片膝をついた。
「ナイスだ2人とも!」
和輝たちの方は順調にオーガを追い詰めており、決着がつくのも時間の問題であった。
一方で、繭たちの方はというと―――
「『黒霧』!」
「『フォレスト・バインド』!」
「『エアロ・スラッシュ』!」
繭が黒いモヤで敵の視界を塞ぎ、柑奈が木の枝を操って身動きを縛り、凛が風の刃で小鬼たちにトドメを刺すという見事な連携プレーを見せていた。
さらにはイリスとエリスも『魔力刃』で小鬼たちを斬り倒していたので、こっちはかなりのハイペースで終わっていた。
「ふぅ、これでこっちは終わり」
「やったね、繭!柑奈ちゃんも支援ありがとう!」
「凛さんもお疲れ様でした」
順調に倒しきった繭たちは、互いに労いあっていた。
「向こうも余裕そうだけど、いつでも支援出来るようにしとこう」
和輝たちの方を確認した繭は凛と柑奈に声をかけて、和輝たちの方へと向かっていった。
和輝たちによって瀕死のところまで追い詰められていたオーガは、悔しさを顔に出しながらなんとか立ち上がった。
「グッ!ナゼ、カテナイ……オレツヨイ、チカラテニイレタ」
「力を手に入れただって?おい!どういう意味だ!」
魔物の言う事に耳を貸すつもりは無かった和輝だったが、オーガが呟いた言葉はさすがに無視をする訳にもいかず、少し声を荒げながら問いかけた。
しかし、オーガは和輝の言葉に何も反応せずに、うわ言のように色々と言葉を呟くだけであった。
「マケナイ、オレツヨイ、カテル、タオス、コイツラコロス」
「……なんかやばくねぇか?」
オーガから感じるなんとも言えない不気味さに剛が不安に思った次の瞬間、オーガが唸り声を出しはじめた。
「グゥ……フグゥ……グラァアアアッッ!」
オーガが急に咆哮をあげると、それと同時に直径1メートルほどのいくつもの岩石が現れ、その岩石が村の方へと飛んでいった。
「しまった⁉︎」
和輝が急いで村へと戻ろうとするが、距離的に不可能であった。
繭と凛も急な攻撃に対して反応が遅れてしまい、壁を作るのも間に合いそうにはなかった。
セラが村へと放物線を描きながら飛んでくる岩石を止めようと―――
ズガガガガガガン!
セラが氷の壁を作ろうと力を入れたところで、全ての岩石が空中で粉々に砕かれた。
「へ?」
全く予想していなかった結果に呆けてしまう剛たち。
だが、サラとセラ、それと和輝だけは一瞬だけ青い何かがいたことに気づいた。
その青い何かは猛スピードで動いたかと思うと、いつの間にか村の前で立っていた。
「本当の強者は、くだらんヤケクソの攻撃などしない」
その場で止まったことによって、ようやくハッキリとその姿を見ることができた和輝たち。
パッと見でも歴戦の猛者を感じさせるその男は手に青みがかった片手剣を持ち、青い髪に紺色のロングコートをたなびかせており、目元にできたクマと濁った青い瞳も合わさって、ゾッとしてしまうほどの圧力を放っていた。
青い影の正体を見た和輝は、その男の放つ圧力と先ほどの実力に対して驚愕していた。
(少ししか見えなかった……なんて速さだ)
渾身の攻撃を防がれたオーガと和輝たちが固まるなか、青髪の男が和輝へと向き直って声をかけてきた。
「……さっさとトドメをさしたらどうだ?」
「あ、そうだった!くらえっ、『黄光雷刃』!」
ズガァァァン!
男に指摘されたことで硬直から戻った和輝は、未だに呆然としたままのオーガへ雷の一撃を放った。
反撃をすることもなくそのまま雷撃を喰らったオーガは、断末魔すらあげずに黒焦げになって絶命した。
「やったな、和輝!」
「剛もお疲れさま!」
オーガを倒し、互いに声をかけあう和輝たち。
そんな中、青髪の男が森の奥へと歩き去ろうとしており、それを見た和輝が男へと駆け寄った。
「あっ、待ってください!」
声をかけられた男は立ち止まり、和輝の方へ振り返った。
「すいません、手伝って頂いて助かりました。ありがとうございました」
「……気にするな、個人的に気に入らなかっただけだ」
和輝の素直なお礼に戸惑ったのか、少し間があいてから返答した男。
「あの、よければお名前を聞いてもいいですか?」
「……セルストだ」
「セルストさん、ありがとうございました」
「……俺はもう行くぞ」
和輝から再三のお礼を言われたセルストは、〝もう終わり″と言わんばかりに歩き去ろうとしていた。
和輝とセルストの会話が終わったところで、不満顔をしているサラが和輝へと近付いた。
「ちょっとー、せっかく譲ってあげたんだからしっかりと決めてよね」
「ご、ごめんよ、サラ」
サラから怒られた和輝はヘコヘコと謝るしかなかった。
「これではあの人の方が勇者ですね。それから、私たちを呼び捨てにするのはやめて下さい」
「え⁉︎ご、ごめんなさい」
サラに付いてきたセラからもダメ出しをされてしまい、和輝は完全に下っ端勇者となっていた。
和輝がヘコヘコしていると、歩き去ろうとしていたセルストが戻ってきた。
「お前が勇者なのか?」
「え?あ、はい。そうですけど……」
ガキン!
自分が勇者であると答えた瞬間に、セルストの神速の剣が和輝へと振るわれた。
全く反応できていなかった和輝はそのまま突っ立っているだけだったが、近くにいたセラが氷柱を作りあげることでセルストの剣を防いでいた。
「物騒ですね。あなたも魔物なんですか?」
「ほう、よく受け止められたな。俺は勇者の力を試したかっただけなんだが、まさか子供に止められるとは思わなかったぞ」
和輝の目の前で淡々と会話している2人に対して、自分が死んでいたかもしれないという事実を呑み込んだ和輝は青ざめていた。
(……全く反応できなかった。セラさんが守ってくれなかったら、僕は今頃……)
和輝が自分の最悪を想像している間にも、事態は次へと進んでいた。
セルストがセラに注目している間に、サラが自分の写し身である剣を作り出し、セルストの背後から斬りかかった。
ガキン!
「今のが腕試しだなんて、嘘は大概にしといた方がいいよ。セラが守ってなかったら、そのまま首を刎ねてたでしょ?」
「お前も中々やるようだな。お前たちが勇者だと言われた方が納得できそうだ」
サラの剣を難なく受け止めたセルストは、ギチギチと鍔迫り合いになったまま淡々と評価していた。
サラは一旦、剣を弾いて距離をとり、セラと挟みうちにするような位置で剣を構えた。
「御託はいいです。あなたの目的を聞かせてもらいますよ」
「さっき言った通りだ。勇者の力というものに興味があったんだが、期待はずれもいいところだ」
セラの睨みをきかせた問いに、セルストは周りを見回しながら目的を語った。
剣を霧散させながら語るセルストは心からの本音を言ったようで、その言葉からは嘘をついたようには感じられなかったサラとセラ。
しかし、理由がどうであれ、〝この男は捕まえておいた方がいい″と判断した2人。
だが、先ほどからセルストが戦う姿勢を見せないので、逃げるつもりだと悟ったサラとセラは油断しないように警戒心を強めた。
「逃げられると思うの?」
サラに指摘されたセルストはピクリと反応し、この場を離脱しようとしていた考えを捨てて、自分の魂剣を改めて取りだした。
「……見逃してやろうとしただけだ。いいだろう。今この場で、お前たち全員を殺していくとしよう」
ヒュッ!
「うぎっ!」
「くっ!」
セルストが宣言したと同時にその姿が搔き消え、たった一瞬の間にサラとセラに一太刀ずつ浴びせた。
だが、サラは剣を割り込ませて、セラは氷を作ることで身を守ったものの、2人とも力負けして弾き飛ばされてしまった。
「能力が派手に強いだけだな。こんな近距離では、速さに分がある俺の方が有利だ」
2人を森の奥へと吹っ飛ばしたセルストは淡々と語り、次の標的である和輝たちの方へと向いた。
「オラァッ!」
狙いをつけられた和輝たちはすぐに戦闘態勢に入り、先手として剛がセルストの背後へと回り込んだ。
「遅い」
ボグッ!
「ガハッ!」
しかし、剛の拳は簡単に避けられてしまい、逆に腹にヒザ蹴りを喰らってしまった。
剛は4〜5メートルほど飛ばされ、そこへセルストが追撃を仕掛けた。
「『黒繭』!」
「『ウォール・オブ・ウィンド』!」
セルストが剛に近づく前に繭と凛の二重壁がなんとか間に合ったものの、剛は痛みによって立ち上がれないようだった。
突然目の前に現れた壁に阻まれたセルストは先に術者である繭と凛を狙おうとしたが、そちらに目を向けた時にはすでに2人とも壁に包まれていた。
「『シャイニー・ロザリオ』!」
セルストがどう動くか逡巡した僅かな隙に、麗奈が放った光の十字架がセルストの死角から襲いかかった。
しかし、セルストは一切振り向いたりせずに躱してしまった。
「うそっ⁉︎」
目を見開いて驚いた麗奈だったが、完全な不意打ちで放ったものを難なく避けられては仕方のないことだった。
光の十字架を避けたセルストは標的を麗奈へと変え、一瞬で麗奈へ肉迫した。
「遅いと言って「『黄雷撃』!」っ⁉︎」
「くそっ!今のも避けるのか!」
麗奈が斬られる直前に、セルストの動きを予測していた和輝がゼヴォルスの雷撃の弾を放った。
しかし、セルストはその雷撃に対しても反応し、ギリギリのところで躱されてしまった。
「威力は凄まじいが、当たらなければ意味がない」
麗奈よりも僅かに反応出来ている和輝の方が厄介だと考えたのか、今度は和輝へと襲いかかるセルスト。
「くっ!ゼヴォルス!」
対する和輝は僅かに見える影を目印に雷撃を放つが、雷撃自体は速いものの、和輝が認識した所へと雷撃を放った時にはすでにセルストは別の所にいた。
それを何度か繰り返したところで、セルストが和輝に急接近した。
「ただ電撃を放つだけしか能が無いのか?」
ドス!
「うぐっ!」
目の前にセルストが現れたことには気づけたものの、体の動きが全く追いついていない和輝は、太ももを剣で貫かれてしまった。
そして、その痛みによって尻もちをついたところで、セルストが剣を逆手に持って和輝へと向けた。
「これで終わりだな」
セルストは呟くと同時に、剣を和輝へ突き出した。
ガキン!
しかし、和輝に刺さるギリギリのところで『黒繭』に防がれていた。
「ちっ、またこれか。このまま突き破ってやる」
「「させない!」」
『黒繭』を強引に突き破るために力を入れようとしたセルストだったが、その前にイリスとエリスが飛びかかった。
「たぁ!」
「やぁ!」
2人は迅との特訓のおかげで身体強化そのものも大幅に強化されており、さらには最小の動きで斬れ味バツグンの『魔力刃』を交互に絶え間なく振るうことで、少しずつセルストを押し返していた。
「くっ!厄介な連携だが、遅い!」
捌くのに徹していれば攻撃を受けることはないセルストだったが、このままでは埒があかないために、一度大きく距離をとった。
そして、自慢のスピードで左右へ大きく動きながら2人の目を錯乱させ、まずはイリスの死角に回り込んでから斬りかかった。
ガキン!
「んくっ!エリス!」
「はい!」
迅との模擬戦で鍛えられた戦闘の勘によって、イリスはギリギリのところで剣を割り込ませた。
しかし、無理な体勢のせいで踏ん張りが効かないので、すぐにエリスへ声をかけた。
イリスの声に反応したエリスはすぐさまセルストへ斬りかかってイリスから引き離し、さらに追撃をいれようとした。
しかし、またもやセルストのスピードに翻弄されて、背後に回られてしまった。
「ふっ!」
ガキン!
「なっ⁉︎」
「んぬっ!イリス!」
「はい!」
確実にやったと確信していたセルストだったが、先ほどのイリスと同じようにギリギリのところで防がれてしまい、今度ばかりは驚愕の声をあげてしまった。
そして、驚いてから息をつく暇もなく、今度はイリスが斬りかかってきた。
セルストは思いもよらなかった双子の連携プレーによって自分のペースを崩され、いつにないほどに手こずっていた。
ここまでなんとかセルストを相手にしているイリスとエリスだが、2人の内心では焦りが大きくなっていた。
(どうしよう……これ以上は攻め手が足りないの)
(今が精一杯なのに……このままじゃ押し切られちゃうの)
2人がセルストを相手にしのげているのは、連携プレーによって相手にいつもの動きをさせていないからなのだ。
だからこそ色んな手数で攻めていたのだが、同じような攻め方が増えたせいか、セルストの動きに少しずつ余裕が出てきているのだ。
このままではイリスとエリスの動きが見切られてしまい、ろくに反撃もできずに殺されてしまうだろう。
イリスとエリス、そして和輝たちが応戦してから5分ほどたっていた。
いや、5分も保たせたというべきか。
どんな形であれ、その5分を耐え抜いたことは決して無駄ではなかった。
「こんのぉぉぉっ!よくもやったな!『ブレイズ・ファイア』!」
森の奥へと吹き飛ばされていたサラが上空へと飛び出し、怒りと共に巨大な火炎玉をセルストへと放った。
直径10メートルほどだろうか。
サラの放った火炎玉は周りを巻き込む勢いで燃え上がっており、繭と凛が慌てて味方全員と村側に二重壁を張っていた。
「みんな逃げてぇー!」
「「ひーーっ!」」
「ちっ!面倒……っ⁉︎」
セルストに1番近かったイリスとエリスも二重壁に包まれていたのだが、さすがに怖すぎたのだろう。
麗奈の警告を受けた2人は、悲鳴をあげながらその場を離れた。
一方でセルストも躱そうとしていたが、いつの間にか足を氷漬けにされており、その場から動けずにいた。
「速いなら捕まえればいいだけです。『ジエロ・グレイブ』」
いつの間にか戻ってきていたセラが、動けないセルストを正四角柱の氷で覆った。
氷の柱は3メートルほどの高さまで伸びたところで、そのまま火炎玉を飲み込むように広がって伸びていった。
氷柱の中ではセルストが足の氷はどうにか壊したものの、壁は特別製なのか傷一つ付けられず、唯一の脱出口である上からは火炎玉が迫ってきていた。
サラの火炎玉は氷の中にいるのに汗をダラダラとかいてしまうほどの熱を放っているので、これに少しでも触れたらすぐに灰になってしまうだろう。
(くそっ!逃げるのも相殺するのも無理か……ならば仕方ない)
完全にお手上げであると判断したセルストは懐から転移石を取り出し、それを使って氷の中から離脱した。
「……逃げられましたね」
氷の中を把握していたセラが、今までにないほどの不満顔をしながら全員に伝えた。
すると、和輝たちはその場でへたり込んでしまい、サラも悔しさから地団駄を踏んでいた。
「くっそ〜、やり返したかったのに〜!」
「「つ、疲れた……」」
「なんとか……なったのか」
「くそ、手も足も出なかったぜ……」
「全然見えなかったね」
どうにか追い返したと言っても、ほとんどはサラとセラのおかげである。
だからこそ、和輝たちの落胆も大きいものとなった。
セルストが逃げてから10分ほどたった頃。
麗奈、繭、凛の3人は負傷した和輝と剛、それと村人たちに回復魔法をかけて回り、柑奈とセラが周辺の警戒をし、イリス、エリス、サラの3人は村の片付けを手伝っていた。
「……誰か来ました!」
柑奈が森の奥から歩いてくる集団に気づき、全員に声をかけた。
柑奈の声に反応した和輝たちと村人たちが集まる中、森の中からほぼ女性の集団が現れた。
「悪いな、遅くなった」
「ジンくん!」
柑奈が気づいた集団は、迅が奪還した女性たちであった。
やっと帰ってこれた女性たちは自分の家族と再会し、泣きながら喜びあっていた。
迅はそれを見ながら和輝たちのもとへと向かい、それぞれの経緯を話し合った。
和輝たちから話を聞き終えた迅は、またもや和輝たちを追い詰めた相手というのを聞いて、自分が間に合わなかったというのもあって腕を組んで難しい顔をしていた。
「……でっかい炎が見えたから交戦中だってのは分かってたんだが、村人を放っていく訳にもいかなくってな……なんにせよ、全員無事で何よりだ」
「ジンも無事で良かったよ。僕たちはサラさんとセラさん、それにイリスとエリスがいなかったらやられてたよ」
(こんな人数で、しかもサラとセラもいながら苦戦するとはな……敵も生半可な強さじゃねぇな)
疲れ切ったような笑みを浮かべながら話す和輝を見て、〝余程の相手だったのだろう″と悟った迅。
しかし、そんな強敵が近くをうろついているのなら早めにギルドへ報告するべきだし、他にも知恵を持った異常な魔物の件もあるのだ。
なので今は反省よりも無事に学院へと戻るのを優先すべきなので、迅は落ち込んでいる和輝に悪いことを考えさせないように声をかけた。
「とりあえずは無事であることを喜べ。反省をするのなら、この依頼を済ませて学院に戻ってからだ」
「……分かった!」
迅に声をかけてもらった和輝は自分の両頬を一回叩き、クヨクヨと悩むのをやめて気合いを入れなおした。
〈???〉
とある場所の屋内にある巨大な魔道具の上に寝そべっていた大男は、自分の力を流していた回路がいくつか切られたのを感じた。
「……ん?なんだよ、リンクが途切れたってことは誰かにやられたのかよ。ったく、やっぱり魔物ごときじゃ使いモンにならねぇなぁ」
大男はだるそうに起き上がると、頭をぽりぽりとかいた。
そして、いくつかの失敗に終わった内容を思い返していた。
「いつの間にかあのザコもやられてたみたいだしな。タイミング的には勇者がやったってところか?……はぁ、めんどくせぇなぁ。……まぁいいか、仕事はしたんだしな、もう一眠りしてから次を考えるか」
考えるのがめんどくさくなった大男は、思考を放棄してまた眠りについた。
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