↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界放浪者の神話決戦記  作者: 灰ライト
学院編
24/77

学院襲撃のあとに

学院編のエピローグとなります。

 学院の教師が生徒を襲うという、未曾有(みぞう)の事件のあとしばらくは、学院の内外で慌ただしくなることになった。


 まずは当事者である和輝たちはというと、木原姉妹と凛と繭と剛の5人は、その日のうちに完全に回復した。

これはティアの回復魔法のおかげであった。

しかし、和輝だけは傷が癒えてもすぐには意識が戻らなかった。

医者に診てもらっても詳しい事は分からず、精神力を限界を越えて使った代償ではないかと、そういう推測しか立てられなかった。

幸いにも丸2日寝込んだところで意識が戻り、後遺症も無かったようなので、ある意味良かったと言えるかもしれない。


「次にこんな無茶したら許さないから!」


「は、はいっ!」


 幼馴染にこっぴどく叱られた事を除けばだが。


 バルゴたち3人もその日のうちに意識が戻り、普通に動けるようになっていた。

ただし、3人にはチャーリーと関わっていた疑いがあったため、数日間は事情聴取をされる事になった。


 そして、迅はもちろん無傷だったので、イリスとエリスの特訓を再開させていたのだが、シルフィアからの追求だけは続いていた。


「ちょっとジンさん!まだ話は終わってませんわ!」


「なんだよ、俺はもう全部話したっつーの」


 カジットを倒してバルゴたちを連れ帰り、その当事者の1人として話を聞かれた迅だったが、もちろん神関連の話は伏せてだが、しっかりと報告はしたのだ。

しかし、その内容を伝え聞いたシルフィアが、ここしばらくの間さらに詳しい内容を教えろと迫って来ていたのだった。


 シルフィアとしては納得がいかなかったのだ。

穴の底へ落ちたと思ったら和輝たちを追い詰めたカジットを倒し、バルゴたちを回収して全くの無傷で戻って来たのだ。

察しがいいシルフィアは疑問に思った。

〝無傷で勝てる相手ならばもっと速く戻って来れたんじゃないか″と。

普通だったら〝登ってくるのに時間が掛かった″とでも言えば納得出来ただろう。

だが、迅はついついやってしまったのだ。


「あ〜、うん、まぁ、それなりに大変だったんだよ」


 何回も同じ事を色んな人に聞かれ、そんな精神的に疲れている時にシルフィアに尋ねられたというのもあり、ついつい適当な感じで答えてしまったのだ。

今まで迅にからかわれてきたシルフィアは、これは何か隠してると確信し、それを聞き出すために奮闘中なのであった。




 〈街道にて〉


 王都から【西セントレア】へと繋がっている街道に、1台の馬車がゆっくりと進んでいた。

その馬車は商人の持つ物とは違い、(きら)びやかな装飾が(ほどこ)されており、明らかに貴族の物と分かる馬車であった。

その馬車は完全に囲われている作りだが、御者と会話するための吹き抜けと、外を眺めるための窓が取り付けられている造りであった。

その馬車の中には3人の女性が乗り込んでおり、今は【西セントレア】へと戻っている最中であった。


 王都から各街までは2、3本ほどの街道が整備されており、基本的にはこの街道のどれかを使って通行するのが普通となっている。

しかし、冒険者などは整備がされていない道を通って行く事が多いため、用事によって使い分けられるようになっていた。


 馬車の中の3人は一応冒険者ではあるのだが、今回は1番安全な道を馬車で送ってもらっていた。


「元気出してください、会長」


「そうよ、まだ望みが無くなった訳ではないんだから」


 馬車の中では赤いショートヘアの小柄な女の子と、白のロングストレートヘアのスタイル抜群な女の子が、茶髪のロングストレートヘアで、こちらもプロポーション抜群の、会長と呼ぶその人を慰めていた。

2人から励ましの言葉をもらった会長は、それでも落胆した気持ちを抑える事ができずに、左手首に着けている青いミサンガを見つめたままであった。


「……分かっている……分かってはいるが、もう東西南北全てを回った事になる。確かに望みはあるんだろうが、残っているのは果てしない大地や海、さらには無数とも言える村や集落。……これでは夢のまた夢というものだ」


 その会長はまるでヤケになっているかのようで、親しい友人の慰めを受けても力のない言葉しか出てこなかった。

そんな弱りきった会長の姿に、何も出来ない自分が悔しくて歯噛みしてしまう2人。

それでもどうにか元気付けようとするが、いい話題が出る事もなく、黙って馬車に揺すられていく3人。

そのまま沈黙が続くかと思われたが、唐突に御者を務めている初老の男から声が掛けられた。


「申し訳ございません、お嬢様方。どうやらお嬢様方に用のある方がいらっしゃったようです」


「相手が誰だか分かりますか?」


 御者の男に声を掛けられた会長は、さっきまでの暗い雰囲気を霧散させ、毅然とした態度で御者の男に聞き返した。


「装備を見た限り、恐らくですが王国兵かと思われます」


「ふむ、【西セントレア】から王国兵ということは、ティアからの使者かな?」


「ティア様からですか?」


「私たちの居場所は分かっていなかったはずだし、急ぎの用件かもしれないわね」


 御者を含めてさすがの観察眼と頭の回転であった。

少しして、ティアからの使者らしき王国兵が馬車まで近づき、馬から降りて馬車へと声を掛けた。


「失礼します!ティア王女殿下からの命により馳せ参じました!」


「少々お待ちくださいませ」


 馬車の中からこっそり顔を出して相手の確認をしていた3人は、相手が知り合いである事を御者の男に伝えると、御者の男は馬車から降りて扉を開けた。

 開けられた扉からは3人とも降りてきて、王国兵へと向き合った。


「お久しぶりですね、ゴール副部隊長殿」


「えぇ、お久しぶりでございます。それと、私めはゴールと呼び捨てで充分でございます」


「私みたいな若者がそれをするのは問題だと思いますが?」


「全く問題ありませんよ。今のあなた様に勝てる者なんてほとんどおりませんからね。それこそ同じ勇者様でないと」


 そう、この会長と呼ばれていた女の子こそ、7年前にこの世界に呼ばれた勇者の1人なのである。

その勇者である会長は、ゴールの尊敬しまくりの態度に苦笑いしていたが、表情を切り替えて本題を聞くことにした。


「それでは善処しておきます。それで、いったい何があったのですか?」


「はっ!【西セントレア学院】にて、チャーリー教諭による襲撃が行われ、一時は我々騎士団も壊滅の危機に(ひん)しました」


「そんなまさか⁉︎」


「あの温厚なチャーリー先生がそんな事をするなんて……」


 お供の2人が驚きを隠せない中、会長は冷静のままであった。


「それで、ここに来れたという事はもう片付いたと思っていいのですか?」


「はい、新たに召喚された勇者様方のご活躍により、負傷者は出たものの死者は出ておりません」


「そうですか、それは良かったです」


 会長は確かにホッとはしていたが、〝新たに召喚された勇者″という言葉を聞いて、少しだけ顔を曇らせた。

それを会長が考えている事とは別の意味で捉えたゴールは、すぐに補足を入れた。


「ご安心下さい。ケガ人はティア殿下が全て治してくださいましたので」


「あ、あぁ、それは心配していませんよ」


 顔に出てしまった事を心の中で悔やみながらも、すぐに笑みを見せて誤魔化す会長。

その笑みでゴールは誤魔化す事が出来たが、横にいるお供2人には見透かされているらしく、心配そうな顔を向けられていた。


「そうですか。それで、私がこちらに来たのはその件の報告と、ティア殿下からの便りをお届けに参ったのです」


 そう話したゴールは腰のポーチから封に入っている手紙を取り出して、会長に渡した。

受け取った会長は手紙を読んでいき、そこまでの量は書かれていなかったのか、割とすぐに読み終えた内容を2人にも話した。


「ふむ、どうやら今回の件の事後処理で、理事長も生徒会もいないということで貴族たちにごねられているみたいだ。それで、可能ならば戻って来てほしいそうだ。それと、事件の詳細が書かれた紙も入っていた」


「あらあら、それならすぐに戻らないとね」


「あぁ、理事長はまだ用事があって戻れないから私たちで対処しないと。ゴールさん、ティアからの手紙ありがとうございました。私たちはこのまま学院に戻ります」


「ありがとうございます。お忙しい身である事は承知していますが、どうかティア殿下をよろしくお願いいたします。では、私はこれから王都へ報告に行かなくてはなりませんので、これにて失礼します」


 最後に深い一礼をして、ゴールは王都へと向かっていった。

それを見送った会長たちも、馬車を再び走らせた。


「さて、戻ったら色々と大変だろうが、やる事をすぐに済ませて今回の旅の休暇を取ろうか」


「「はい!」」


 3人を乗せた馬車は【西セントレア学院】を目指して進んでいった。




 〈???〉


 コツコツと石畳みの上を歩く男が1人。

その男は青い髪と紺のロングコートをたなびかせながら、奥へと目指して進んでいく。

やがて、かなりの広さがある空間に出てきた。


 そこかしこに普通の人では持ち上げられないような瓦礫が転がっており、まるで戦場の跡地のようなその場所を、その男は瓦礫から瓦礫へと飛び移って奥へと目指す。

そして、その空間が終わり、通路へと差し掛かるその境目に、何かの結界と思われる薄い膜が張られていた。

しかし、男はそれを気にせずに歩いていき、何事もなくそこを通過していった。


 そのまま奥に進んで行くと、先ほどの空間よりは小さいものの、体育館ほどの広さを持つ場所に出てきた。

そして、そこの中央には巨大な魔導具が鎮座しており、その魔導具の半分ほどより上はガラスで出来ているようだった。

その中には紅く発光しているクリスタルが入っており、それがこの場所を照らす光になっていた。


 男はその魔導具の前までやってきて、上を見上げた。

その視線の先には、この魔導具の上で寝転んでいる、頭が寂しい大男がいた。

男はそれを見て目を鋭くさせると、その大男に声を掛けた。


「そこで何をしている?貴様の仕事はどうした?」


「あぁん?……なんだ、お前か……よっと!」


 大男は起き上がると、かなりの高さにも関わらず飛び降りてきた。

ズーンと男の横に降りてきた大男は、男の厳しい視線も気にせずに、一つ伸びをした。


「ふぁ〜あ、で?何だって?」


話を聞いていなかった大男にイラッときた男は、少し口調を強めて再び問いかけた。


「だから、仕事はどうしたと聞いている!」


「あぁ、わりぃわりぃ。骨のある奴がちっともいねぇからよ、逆に飽きちまったから部下に任せて寝ちまってたよ」


 全く悪いと思ってはいない大男に更にイラッとくる男だが、仕事を続けているならと怒りを抑えた。


「それで?あの勇者たちはどうなんだ?」


「勇者だぁ?あぁ、そういえばまた新しいのが来たんだっけか?興味ねぇから忘れてたわ」


「……忘れてたなら部下にでも何でもいいから、とっとと調べてこい」


「分かった分かった。相変わらずうるせぇ奴だなぁ」


 男はこの大男が嫌いであった。

なぜなら、自分が計画通りに動こうとしても、この大男の気分のせいで遅々として進まないからであった。

だからこそ、会話をする時はどうしても言葉が荒くなってしまうのであった。


「まったく、そんな調子ではいつか勇者に討ち取られても知らんぞ」


 男がその言葉を放った瞬間であった。


「ああ?」


 大男から殺気が放たれ、男が一回だけ(まばた)きをした瞬間に大男が消えていた。


「この俺さまがあんなヒョロい奴らに負けると?本気でそう言ってんのか?」


 凄まじい圧が込められた声が、後ろから聞こえてきた。

男は全く察知出来なかった事に肝が冷え、生唾を一度飲み込んだ。


「……物事に絶対などありはしない。俺はそれを経験したからこそ危惧しているだけだ」


 恐怖に負けそうになるが、男はそれを堪えて反論した。


「……あぁ、そうか、そういえばそうだったなぁおい。確かに、そんな事があったなら不安になっても仕方ねぇな」


 男の言い分に納得した大男は、薄い笑みを浮かべながら離れていった。

男はその事に安堵してひと息つくが、大男の放った言葉によって再び固まることになった。


「まぁ、安心しろよ。俺さまはお前如きとは違って、そんな無様は晒さねぇからよ。気長に報告を待っているといいさ」


 そう言い放って、大男は高笑いしながら歩き去っていき、残ったのは悔しさに打ち震える男だけであった。


 男は少しして感情が収まり、巨大な魔導具へと向き直った。


「もう少しだ、あともう少しで全てを終わらせることができる」


 魔導具を見るその男の目は、全ての闇が凝縮されたかのように、酷く濁っていた。

これにて第1章は完結でございます。

ここまで読んで頂いた皆様、ありがとうございました。

次の章ではさらに熱いバトルシーンを満載で書いていくつもりなので、これからもよろしくお願いします。


ここでひとつの区切りとなりますので、バトルやストーリーに関する感想や評価などをしてもらえると助かります。

自分としてはバトルシーンはとくに力を入れて書いています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。