↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界放浪者の神話決戦記  作者: 灰ライト
学院編
23/77

地下での戦い

いよいよ迅の戦いです。

 〈訓練場の地下〉


 和輝たちがサイクロプスと交戦を始めた頃、訓練場の地下では迅と金髪の男が対峙していた。


「それで?あなたはこんな所に何の用なのですか?私に気付けた理由と一緒に説明してもらえますか?」


 穏やかな口調ながらも目が笑っていない男は、迅に殺気を叩きつけながら問いかけてきた。


「お前自身に用があったんだよ。どうしても聞きたい事があってな。あと、どうして気付けたって言われてもなぁ……お前が未熟だからとしか言いようがないな」


 対する迅は、まるで殺気なんて感じてないとばかりに飄々(ひょうひょう)としていた。


 そんな迅の物言いが癪にきた男は薄い笑みを真顔へと変え、露骨に迅を睨みつけてきた。


「まるで私が弱いかのような言い方はやめていただきたいですね。しかも……私に聞きたい事?あなた如きに答える必要はありませんね。それに、私の姿を見た以上は、この場で死んでいただきますよ」


 迅と話す気は更々無いという男は、話し終えると同時に魂剣(ソウルアーツ)を取り出して、戦う構えを見せた。


「そう、それだよ。その力……いったい誰に貰ったんだ?……テメェ」


 男が魂剣を出した途端に、迅の雰囲気が豹変した。

迅が気になっているのは男の魂剣。

迅にはハッキリと分かるが、男の魂剣には精神力だけではなく、明らかに別の(モノ)も流れているのだ。


 今度は男が殺気を当てられ、思わずたじろいでしまう。

さらには、迅の問いかけに看過できない点が含まれていたこともあり、男に焦燥(しょうそう)が見えてきた。


「……貴様、いったい何者だ?なぜこの力の事を知っている?」


「やれやれ、聞いてるのはこっちなんだがなぁ。小さい頃に言われなかったか?質問に質問で返すなって」


「誤魔化すな!だいたい、貴様如きが私に質問をすることそのものが無礼なのだ!」


「……はぁ」


 会話が成立せず、しかも自分勝手すぎる男に対して、思わずため息をついてしまう迅。


「貴様!聞いているのか!」


「あ〜あ〜、もういいよ、うるせぇなぁ。こんな普通の会話も成立しないバカだとは思わなかったぜ」


「なんだと!」


 ただ聞いただけ、ただため息をついただけでいちいち噛みついてくる男に、手をプラプラさせながら呆れかえる迅。

この男の性格なら簡単に済むと思っていた迅だったが、どうやらネコを被っていただけだったようだ。

さすがに、ここまで沸点が低いうえに口調も変わっている男とこれ以上会話をする気にはなれなかった迅は、やり方を変えることにした。


「会話が無理なら力ずくでだ。やるぞ、サラレス、セイドラ」


『はーい!』


『はい!』


 迅は2人の相棒の名を呼んだ。

すると、右手には炎に包まれながら現れた鮮やかなルビー色の片手剣が、左手には雪の結晶を散らしながら現れた透き通ったサファイア色の片手剣が握られていた。

今回は力も見た目も隠さずに出したので、男にもサラレスとセイドラの力が分かるようになっている。


「な、なんだそれは⁉︎……まさか、その剣も神の力を持っているというのか⁉︎」


 サラレスとセイドラから感じる力の強さに、思わず一歩下がってしまう男。


「これはこいつらの素の力だよ。さぁ、やろうか」


 そう言って、少し腰を落とした構えをとる迅。

同時に、普段は眠そうにしていた目つきが鋭くなり、この世界に来た時と同じ臨戦状態へと入った。


「……まぁいい、貴様が何者であろうと、この『神の(つるぎ)』に叶うはずがないのだ。そして、この名を貴様の手向けとして教えてやる。私はカジット、神の恩恵を受けし者だ」


 対するカジットという男は、右手に持つ片手剣を、弓を引くときのような状態で構えをとった。


 互いに睨み合う状態になり、相手を少しばかり観察する両者。

そして、少し間が空いてから……両者は同時に動きだした。

和輝たちですら消えたと勘違いしてしまうほどの速さで動いた2人。


 ガキィン!


 カジットの振りおろしをセイドラで受け止めた迅。

カジットの目がわずかに見開かれ、動揺のせいか剣を持つ手が緩む。

その瞬間を見逃さなかった迅はカジットの剣を弾き、ガラ空きとなった胴へサラレスで追撃をした。


「っ⁉︎『神の盾』!」


 ビギンッ!


 なんとか『神の盾』が間に合ったカジットだったが、迅が放ったただの一振りに、『神の盾』を半壊させながら吹き飛ばされた。


「くっ!」


 5〜6メートル先で、ズザーッと踏ん張って堪えたカジット。

迅はそこで追撃はせずに、再びカジットへと問いかけた。


「どうだ?話す気になったか?」


「ふざけるな!ありえんっ!こんなこと!……あってはならない事だ!」


「……ダメか」


 小物らしくとっとと折れていれば話が早かったのだが、カジットはどうやら現実を受け入れたくないようだった。


「負けるはずがないのだ!この私の神の力が!大人しく神に裁かれろ!『神の斬撃』!」


 喚き散らすような声を出しながら、カジットは『神の斬撃』を繰り出した。


 ギィィン!


 それを難なくサラレスで斬りはらう迅。


 自分の攻撃があっさりと防がれ、勘違いなどではなく、完全に力不足である事をようやく悟ったカジットは、歯軋りをしながら苦渋の選択をした。


(くそっ!このガキ、確実に神の力を使っている!……私が負けを認めるなど腹立たしいが……仕方ない。ここはなんとしても、このガキの情報を持ち帰らねば)


 なんとか理性を働かせたカジットは、どうにか隙を作ろうと模索し始めた。


「……上で暴れている奴は、この学院の生徒のほとんどから集められた力によって動いている。あの勇者たちでは確実に殺されるだろうな。いいのか?お仲間を助けに行かなくて」


 カジットの露骨な気の逸らし方に内心苦笑いの迅だったが、ここはあえて答えることにした。


「確かに、今のあいつらじゃ厳しいだろうな。実際にかなりのピンチに()()()()みたいだしな」


 逃げる事に考えを()いているカジットは、迅の会話の中におかしな点がある事に気付けない。


「ならば、今すぐ行くべきではないか?」


「問題無いな。これくらいの壁はあいつらにとっては必要な事だろうし、いざとなれば俺が()()()()手を出せばいいだけだからな」


「……なんだと?」


 ようやく気付いたカジットに、ニヤリと笑みを見せる迅。


 そう、迅がなんの保険も無しに和輝たちを危険な目に合わせる訳がないのだ。

そんな事を続けていたら、いくら勇者といえども簡単に死んでしまうからだ。

だが、主人公というのはピンチに(おちい)ってこそ力を発揮するものであり、そういう生き物と言っても過言ではないのだ。

だからこそ迅は、自分の手が及ぶ範囲で和輝たちに戦わせるのだ。

すべてはこの先に起こるであろう決戦で生き残らせるために。


「……まさか貴様、上の状況を把握しているというのか?」


「ああ、そうだ。今すぐあのサイクロプスみたいな奴を殺すことだって出来るしな。……う〜ん、ギリギリか?」


 本気になった迅の知覚能力は尋常ではないのだ。

今も全力ではないが、それでも和輝たちがピンチで繭が危険だというのは分かっていた。


 それでも迅は、まだ助けはしない。

なぜなら、徐々に力が強まっているのを和輝から感じるからだった。


「いったい何を―――」


 カジットが迅の意味不明な呟きを問おうとした時であった。


 ゴゴゴゴゴゴ……


 まるで遠くで雷が落ちたかのような音が聞こえたかと思うと、迅のいる地下にまでその振動が伝わり、パラパラと壁のカケラが落ちてきた。


「な、何だ今のは?」


 疑問の声を上げるカジットだが、音や振動は弱かったので驚きは少ないようだった。


「どうやら上の決着が着くみたいだぜ。それじゃあ、こっちもそろそろ終わらせようか」


 そう言って構えなおす迅を見て、焦るカジット。


(くそっ!今日は予想外の事ばかりだ!何か他に手は……!あるじゃないか)


 何かに気付いたカジットはニヤリと笑みを浮かべ、思いついた策をすぐ行動に移した。


「『二連神斬(にれんしんざん)』!」


「っ⁉︎セイドラ!」


『はい!』


 ギギィィン!


 カジットの『神の斬撃』2発が、迅とバルゴたちへと襲った。

だが、迅はセイドラの能力で氷の壁をバルゴたちの前に作ることで守り、迅に向かって来たものはサラレスで斬りはらった。

氷の壁は向こう側が見えるほど透き通ってはいるが、強度に関しては繭や凛の壁の比ではなかった。


「神だのなんだのとほざいておきながら、随分とせこいことするじゃねぇの」


「私だって必死なのだよ。もはや今回は致し方なし。全力で撤退させてもらう」


「俺から逃げられるとでも?」


「そう言ったつもりだ。せいぜいその足手まといを庇ってやるんだな。『千剣神斬(せんけんしんざん)』!」


「ちっ!」


 カジットが繰り出したのは無数の『神の斬撃』。

いくらセイドラの氷の壁といえど、攻撃を受け続ければいつかは壊れてしまうだろう。


 カジットの狙いが分かった迅はすぐにバルゴたちの前に移動し、追加の氷の壁を目の前に作り上げる。


 ズガガガガガガガガッ!


 無数の『神の斬撃』が迅へと殺到した。

さらには、カジットがわざとはずした『神の斬撃』が地面に当たり、砂埃を舞上げることで迅の視界を奪う。


「『数多(あまた)の火精霊よ、我が力に応えよ、火炎連弾』!」


 カジットはさらなる追撃として、オリジナルスペルで無数の火弾を放った。

絶え間ない攻撃によって、〝これだけ攻撃を受けていれば手一杯だろう″と考えたカジットは、剣から魔法へと攻撃を切り替えたことによって自由になった手を懐へと伸ばし、以前も使った紅い宝石を取りだした。

そして、それを使うために魔力を流そうと―――


「『フロスト・エッジ』!」


「ぐぁあああああっっ!」


 突然襲ってきた氷の刃をモロにくらったカジットは、胸の辺りから下を氷漬けにされてしまった。

自分の体が無くなってしまったかのような痛みを感じながら、氷の刃が飛んできた方を見るとそこには、セイドラを振り抜いている完全に無傷の迅がいた。


「バ、バカなあぁぁっ⁉︎なぜ無事でいる⁉︎あれだけの攻撃を受けて無事でいられるはずがないっ!」


 確かにあれだけでは殺すことは出来ないと思っていた。

だからこそ逃げようとしていたのだから。

でも、まさか無傷で現れるとは思っていなかったカジットは、強烈な痛みもあって喚き散らすように問いかけた。


「なぜって言われてもなぁ……お前が未熟だからとしか言えないんだが」


 さっき話した時と同じような事を言う迅に、カジットは今度こそ完全に確信した。

この男は絶対に関わってはいけない化け物だと。


「……ふ、ふざけるなあぁっ!この化け物めぇっ!」


(体が凍らされようとも、この宝石に魔力を流せばいいだけ!)


 まだ少しだけ冷静でいたカジットは、まるで狂乱しているかのように見せて、逃走するための宝石に魔力を流した。


(……あれ?な、なぜだ?魔力を流しているのに……)


 魔力を流したはずなのに何も起きない事に困惑するカジット。

それに対して、カジットが何をしようとして失敗しているのかを分かっている迅は、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。


「無駄だよ、そいつはもう使えないんだからな」


「なっ⁉︎……何を、したんだ?」


「別に大したことじゃねぇよ、俺の力を少し込めただけだからな」


 そう、迅の()()()()を入れたことで、宝石はなんの力も無くなってしまったのだった。


「さて、もう一度だけ聞くぞ?お前にその力を渡したのは誰だ?」


 自分に近付きながら問いかけてくる迅に対してかなりの恐怖を抱くカジットだったが、それでも折れることはなかった。

なぜなら、自分にこの力を(さず)けてくれた方が、この化け物よりも強いと確信しているからであった。


「……この私が言うはずがないだろう?それに、今この場で私を殺してみろ、お前はあの方の逆鱗に触れる事となり、この世の地獄を体験する事になるだろう」


 カジットの苦し紛れとも言える言葉を聞いた迅は―――


「そうか、残念だ」


 〝これ以上は無意味だな″と判断し、目に殺意を宿らせただけであった。


「ま、待て!お前は何も分かってはいない!あの方がどれだけ恐ろしいのかを!あの方を敵に回せば、いくらお前でも「だからどうした?」……は?」


 あの方、あの方とうるさいカジットに、迅は一言呟くだけであった。

それに対して完全に呆けてしまうカジット。


「お前の言うあの方とやらがこの世界でどれほどの強者か知らねぇが……俺を殺したけりゃ、神でも連れてくるんだな」


 そう冷たく言い放った迅は、静かにサラレスを振りかぶった。


「……まっ!やめ―――」


「『フレイム・エッジ』!」


 ズバァァァン!


『フロスト・エッジ』よりも力を込めて放たれた『フレイム・エッジ』は、セイドラの氷ですらものともせずに、カジットを燃やし尽くした。

断末魔を上げさせることもなくカジットを灰燼(かいじん)にした炎の刃は、勢いあまって奥の壁まで燃やし尽くそうとするほどの威力を持っていた。


 何も残ってない惨状を一瞥(いちべつ)した迅は、サラレスとセイドラを霧散させて、上に戻るためにまずはバルゴたちの元へと歩き始めた。


『すっご〜い!まさかここまで力を引き出してくれるなんて!』


「これくらいは序の口だろ」


 興奮しているサラレスに平然と返す迅。


『ご主人様、サラだけなんてずるいです』


「その代わりに出番を増やしたんだから、それで我慢してくれよ」


『……次は私の番ですからね』


「はいよ」


 強い力を出すことが無かったセイドラが拗ねるが、なんとか条件付きで許してもらえた迅。


『そういえば、さっきのが使ってた力ってそんなに強いものなの?ご主人様』


「いや、あれ自体は大したことはないな。あいつは神の力とか言ってたが、実際はただの神通力ってやつだ。もし本物の神の力だったら、確実にお前らの本気を出さなきゃ厳しい力だ」


 サラレスからの問いに、バルゴたちの容態を確認しながら答える迅。


『それなら、なんでご主人様はその、神通力?の力のことを気にしてたんですか?』


「神通力ってのは基本的に神の力が元になってるんだよ。まぁ、だからこそあいつの後ろ盾を聞きたかったんだがな……」


『やっちゃったもんね』


「やっちまったな。まぁ、あのままやってもどうせ聞けなかっただろうしな。それに今回の件を見ても、どうせあいつのお仲間は神崎たちに接触してくるだろうから、それを待ってればいいだけだ」


『……すごい手馴れてる感じがしますね』


「まぁな、いくつもの世界を見てきた経験ってやつだ。さてと、2人ならまだしも3人とか……どうしたもんかな?1人は無駄にでけぇし……」


 さっきは途中で済ませていたケガ等の有無の確認を話している間に済ませた迅は、バルゴたちをどうやって上に運ぶか悩み始めた。


「……無理矢理持ってくか」


 〝どうせケガしてないし″と、考えるのがめんどくさくなった迅は左手でバルゴを、右手でカイトとタルバの服を掴み、首が締まらないようにだけ気をつけながら持ち上げた。


「……よし!」


 迅はそのままひと足で跳べる所に『魔力結界』を張り、それを足場にしていきながら上へと戻っていった。

これで来週のエピローグ分を投稿すれば、この学院編は終了となります。

まだ最初の章というのもあって、迅の力がはっきりしていませんが、ストーリーを盛り上げるために仕方ないと考えています。

ちゃんと迅の力の構想は終わってますので、決してネタが思いつかなかったからとかではありません。


感想やレビュー、評価などをお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。