第8話
「だって、君とは一緒に来れなかっただろう?」
「だからといって、他の女性と来るなんてっ!」
「安心して下さい! 私の心の中心には、いつもジュニパー様がいらっしゃいます」
「あなたは、黙って!」
ジュニパーにそう言われ、口をつぐむしかなかった。
「ザインルートもユエルートも潰して、ボーン殿下狙いなのかしら」
ジュニパーは、ボソッと独り言を呟いた。何の話しか聞こうとしたが、先にボーンが前に出てしまった。
「礼儀作法に長けた君が、声を張り上げるなんて珍しいこともあるんだな」
「……っ。」
ジュニパーは、皆の方に向き直り頭を下げる。
「皆様、お騒がせして大変申し訳ありませんでした。どうぞ、引き続きお楽しみ下さい」
そう言って、会場から離れていってしまった。
ボーンが、彼女を追いかけようかどうか迷って、まごついている。
「……殿下、ジュニパー様がいないと寂しいです」
「あっ、ああ。そうだよな。行ってくる」
ボーンはやっとジュニパーを追い掛けた。
「ホノカ嬢が、あんなに美しい方なんて」
「ボーン殿下とお似合いでしたわ」
「ジュニパー様を差し置いて、殿下と二人で来るなんて、やりますわね」
「ですが、庶民出身ですよね?」
「あら、ですがホノカ嬢の所作、綺麗ですわ」
「ジュニパー様のあの顔見ました? 傑作ですわね」
「いつも偉そうですから、あれくらいのお灸は必要ですわ」
「ボーン殿下も、いい加減愛想が尽きるのではないかしら」
平静を装って、お茶を飲む。
自分のことを言われるより、ジュニパーを嘲笑う声の方がイライラした。だけど、こういうのは聞き流さないといけないと、ミルラに忠告されている。
しばらく経って、ジュニパーは一人で戻ってきた。周囲の陰口が止まる。
「皆様、楽しんでいますか?」
堂々と微笑む彼女は、本当に美しいと思った。
楽しくないお茶会はお開きになり、帰りもボーンが送ってくれることになった。
躊躇ってジュニパーを見ると、冷たく目を細めながらも、追い払うように顎をしゃくった。
馬車の中、ボーンは尋ねてきた。
「ホノカ、君はジュニパーと仲が良いのかい?」
「はい! 親友(になる予定)です!」
即座に答えると、ボーンは声をあげて笑った。
「ハハッ。そうか……。やっと……」
「はい?」
「いや、何でもない」
暗くなってきた外を眺めながら、ボーンは呟いた。




