第3話
「手伝うよ」
放課後。散らかった教室を一人で片付けていると、ミルラがやってきた。
「ミルラ、ありがとう」
「それにしても、一人で片付けやらされてるの?」
「ううん。先生が、後で掃除メイドさん呼ぶって言ってたんだけど、私がやったことだし、自分で綺麗にしないとって思って」
「ふーん。真面目なんだ」
「田舎の庶民の出だからね」
「そっか……」
ミルラは、指を鳴らした。すると、優しい風が散らばった破片を集めてくれた。
「すごい。そんなに魔法使いこなせてるんだ」
「小さい頃から属性出てたからね」
「私は、まだまだだな。今日なんて、授業中断して、皆に迷惑かけたし……」
「それだけ、君の光の魔力は強大なんだよ。でも、怪我人そんなに出なかったのはラッキーだったね」
「ジュニパー様に怪我をさせてしまったわ!」
「いや、そうだけど、ジュニパーは元々俊敏さと防御魔法に優れていたし、加護魔法も重ね掛けしてる。寧ろ、今回、怪我を負ったこと自体、不自然なくらいなんだ」
「やはり、ジュニパー様は凄いのね!」
「まっ、まあ凄いけど、そこじゃない……。それに、授業の最初で憎まれ口を叩いたのは、わざと君の周りから他の生徒を遠ざけるためだったと思うんだ」
「ミルラも、そう思う?」
「大惨事にならないよう、そして誰かの代わりに自分が怪我をした」
「どうして……」
ジュニパーのことを思うと、声が震えた。
「時々、彼女は未来を知ってるような素振りをするんだ。だけど、本人は絶対語ってくれない」
私もミルラも黙って、集めた破片を箒で塵取りに入れた。
「そういえば、ジュニパー様の腕を掴んだ方。騎士団長の息子さんと言ってましたが、お名前はなんていうの?」
「ああ、ザインだよ。本人も、剣の腕前が飛び抜けていて、そんじょそこらの兵士じゃ太刀打ちできないらしい。寡黙なイケメンとして、女子から人気だよ……。ジュニパーが陰で『攻略対象2』て変なあだ名つけてたけど……」
「ジュニパー様にあだ名つけられるなんて、羨ましいな」
「そうか?」
「……ザイン様ね。庇ってくれたのに、お礼言うの忘れてたから、どこかで会えないかな?」
「それなら、この時間は運動場で剣の練習してるんじゃないかな?」
箒と塵取りを片付けながら、時計を見る。
「ミルラ、ありがとう! 行ってみるね」
私は背を向けて教室から出ていく。
ミルラが寂しそうな顔をしていたことを、この時の私は気づいていなかった。




