最終話
気まずさは残ったものの、パーティーは順調に行われた。
「ホノカ!」
ずっと姿が見えないミルラを捜していると、ジュニパーが駆け寄ってきた。もう吹っ切れたように、表情が明るい。
「ホノカ、私のために動いて下さったと聞きました。心より感謝申し上げます」
うやうやしくジュニパーは頭を下げる。
「そんな、おやめ下さい。私はジュニパー様が好きなだけです。好きな人には、幸せになって欲しいと思うものです。それに、ミルラがいなければ、ボーン殿下に渇をいれることはできませんでしたし、ミルラがいなければユエ様の音魔法の案も出ませんでした。彼がいなければ私は無力でした……」
ジュニパーは少し考える素振りをした。
「……私、勘違いしてたのかも。主人公が、やたらと『ジュニパー』だけを気に掛けていたから、百合ルートだと思ってた。でも、このルートのエンディング直前で、私は車に轢かれて転生したから、このパーティーイベントを知らないんだった。で、ジュニパーと仲良くなることで新たに攻略対象ができるとするなら……」
ジュニパーが早口で何かブツブツ言っている。何を言っているのか、さっぱりわからない。
「ジュニパー様?」
困惑しながら声をかけると、ジュニパーの目がカッと開かれた。
「アイテムが足りてないわ!」
「へっ? えっ?」
「ホノカ。ひょっとして、ミルラを捜してるのかしら?」
「あっ、はい!」
「たぶん、教室にいると思うわ」
「ありがとうございます!」
「ただし! 教室に向かう前に、中庭を通りなさい。そして、青い花をよく見ていきなさい。そこで何か見つけたら、そのまま寄り道せずに教室に行くこと。いい?」
ジュニパーは早口で捲し立てた。
「……? わかりました」
とりあえず、頷いておいた。
ジュニパーは、何か未来がわかるのか。そんなことを聞ける雰囲気ではなかった。
中庭の青い花を眺めた。ふと、その花の側にカフスボタンが落ちてることに気づいた。
「えっ!? これって、ベルリラ公爵の紋章じゃ? ジュニパー様の?」
会場に戻ろうとして、ジュニパーの言葉を思い出す。
『何か見つけたら、そのまま寄り道せずに教室に行くこと』
月明かりに照らされた教室で、ミルラは何か探してるようだった。
「あっ、ホノカ! どこかでカフスボタン落ちてなかった?」
驚いて、中庭で拾ったカフスボタンを黙って渡した。
「これだ! 良かった……。助かったよ、ありがとう」
「ミルラの?」
「そうだよ」
「だって、ベルリラ公爵の紋章……」
ミルラはハッとした顔をしたが、すぐ微笑んだ。
「まさか、うちの紋章を覚えてるなんて……」
「だって、ジュニパー様の家の紋章だから……。えっ……、うちの?」
「改めまして、僕はベルリラ公爵家の長男・ミルラ。ジュニパーの双子の弟なんだ。この学院には、身分を偽って入学してた」
「そう……だったのですね」
「今まで通りに話して」
「ですが……」
「ジュニパーのために、いつも一生懸命な君に惹かれてた。これからも、いやこれからはもっと、君とは親しい関係になりたい……」
普段、くしゃりと笑う彼は幼く見えていた。しかし、今目の前にいる真剣な表情の彼に、ドキドキしている。気づけば私は、ジュニパー様と同じくらい、ミルラのことを考えるようになっていた。
それに、この表情はジュニパーと似ている気がする。
「私も……、あなたのこともっと知りたい」
ミルラはいつもみたいに笑う。私もつられて微笑んだ。
そして、視線が重なり、ミルラの顔が近づいてくる。ゆっくり目を閉じた。
学年末のテストも終わり、年度末休みになった。
ジュニパーとミルラの実家、ベルリラ公爵家に招待され、中庭でジュニパーとミルラとティータイムを楽しんでいた。
「公爵家の礼儀作法は、ジュニパーが教えてくれるって。だから、今度学校が休みの時、うちに通っておいで」
ミルラはそう話してきた。ジュニパーは頷いている。
「ジュニパー様、お忙しくないのですか!?」
「ええ、とっても忙しいわ。妃教育もあるし」
ジュニパーが澄ましてそう言うが、ミルラは笑う。
「ボーンの婚約者になりたくて、子どもの頃から、巻きで王妃教育終わらせたから、余裕があるはずだろ」
「ホノカばかりに時間取れないわよ」
「私、頑張りますね!」
抱きつきたい衝動を抑え、力強く言うと、ジュニパーはそっぽを向いた。
「で、ホノカへの教育終わったら、ジュニパーは王宮に入るって……」
「やっぱり、私頑張らない」
「えっ……」
「はっ!?」
ジュニパーは驚いて思わず立ち上がっていた。
「ジュニパー様と離れたくない!」
「私は早く離れたいわよ!」
「やだー」
「我が儘言わない!」
「相変わらず、ジュニパーへの想いは妬けるくらい重いね……」
ミルラは困ったように笑っていた。
終わり
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
悪役令嬢ものが好きで、「自分でも書いてみたい!」と思い、書き始めた作品でした。
初投稿で不慣れなことばかりでしたが、ChatGPTに投稿方法など相談しつつ、何とか完結まで辿り着くことができました。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです!




