第19話
「いよいよ明日ね……。どうなるのかしら……」
私がジュニパーになって、もう10年経つ。
ここは転生する前にハマっていた、ゲームの世界。主人公はホノカで、ボーン殿下の婚約者の私ジュニパーは悪役令嬢。
乙女ゲームオタクだった私にとっては、ありきたりな設定だったけど、このゲームの主人公が『好きな人には猪突猛進』なところが好きだった。
ただ、自分が悪役令嬢に転生してしまったなら、話は別だ。
婚約破棄ならまだしも、追放や没落といった、最悪なエンディングに向かわないよう気を付けた。
主人公であるホノカには、他の攻略対象のザインとユエへのフラグも立たせようとした。
魔法石の授業で怪我した令嬢の役になり、彼女を叩こうとすることで、ザインに彼女を助けさせたり、テストイベントでユエに会うよう図書室に行かせたりだ。
しかし、彼女はことごとく、そのフラグをへし折っていった。
そして、このゲームに隠しルートがあり、主人公が『悪役令嬢LOVE』になるのだ。
気をつけて彼女との接点を避けていたつもりだが、何故かそのフラグが立ってる疑惑もある。この場合、公爵令嬢人生は続けられそうだったが、結末はわからない。
「今、ホノカはどのルートを辿ってるのかしら。明らかにフラグ、折ってないのはボーンだけよね。ミルラはチュートリアルのお助けキャラだし。……百合フラグは回避……できてるわよね……?」
ホノカが攻略対象1のボーンルートに入っているなら、明日の魔法学院創立記念パーティーで、婚約破棄を言い渡される。
何度目かのため息をついた時、部屋がノックされた。
「お嬢様、ボーン殿下がいらっしゃいました」
「こんな時間に?」
ボーンを部屋に通した。
「殿下、どうなさいました?」
「ジュニパー、すまないが明日のエスコートができなくなった」
その言葉で、胸が抉られた。
(ホノカ、ボーンルートに入ったのね)
「そうですか……」
「本当に申し訳ないっ!」
「いいえ、お気になさらず。エスコートは、ミルラにでも頼んでみますわ」
「ジュニパー……」
「ホノカのこと、よろしくお願いしますね」
「ジュニパー?」
「申し訳ありませんが、もうそろそろ休みたいので……」
「あっ、ああ。すまなかった……」
ボーンを見送り、ベッドに突っ伏した。涙が溢れてくる。
「6歳で転生前の記憶が戻って……、ボーンに会って好きになって……。10年間……ずっと好きだったのにな……」
その日は、なかなか寝付けなかった。
翌日になり、私はミルラにエスコートを頼むこともせず、一人で会場に入った。周りからは驚きや、嘲笑が聞こえる。
中心には、ホノカとボーン殿下。その脇にはザインとユエもいた。
「……?」
それにしても、4人とも隈が酷く、どんよりしている。
ホノカとボーンの前に着いた。皆が注目する。
会場が静まり返った。
「これより、断罪を下す!」
息を飲む。何を言われるかわからない。罪をでっちあげられてるかもしれない。
「我が婚約者・ベルリラ公爵令嬢ジュニパーへの、侮辱罪だ!」




