表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/27

22話


                 22


 谷川 奈緒のあの案件から一ヶ月以上が経ち、由香の入れ替わりに入った中村 ゆかりも、業務に慣れ、恵とも言い関係が続いていた。

 

 週末の金曜日の午後と言うのは、土日の事を考えると、気分がウキウキしてくる。

 いつもの様に、金曜日の15時からは、一週間のまとめの作業に入る、こうすれば、通常なら16時半には全作業が終わる事になるので、今日の作業は通常通りなので、多分終わるだろう。

 終わる筈だった。


「わわ!どうしよう.....、ゆかり、これ見て?」

 恵とゆかりは席が隣同士、そのゆかりが恵に何か言ってきた。


「ちょ! これどうすんの? ない、無いじゃない」

 何かが起きたみたいだが、恵の向かい席の大輔は、纏め作業の終盤になっていた。 ファイル分けしたものを、各フォルダにまとめて行き、全部終了した所で、バックアップを、念のために2ヵ所に分け、終了した。

 時刻は16時40分、若干は遅くなったが、ファイルが多い分、まあまあの時間に終れた。


「あれ? あれれ? 1個ないよ」

「マジ?」

「うん。見つからない。どうしよう?」


 恵のPCのディスプレイを見て、いつも見慣れたフォルダを開いて、ファイルを探しているが、最後の最後に開いたファイルが見つからない。

 纏めも殆ど終わっていたファイルだ。


「ゴミ箱見た?」

「真っ先に見た」

 そんなやり取りをしていると、作業が終わった大輔が、慌てている二人の素振りを気にして、デスクを回り、寄って来た。

「どうしたんですか?」

 恵もゆかりも、画面に真剣で振り返りもしないが、画面そのままで大輔に事情を説明する。


 三人でアレコレしているうちに、時刻はすでに五時を回ってしまった。


「恵、あんた今日って確か、両親が泊まりに来るって言って無かった? もう五時回ったよ?」

「いいの。 それよりこれ探さなきゃ.....」

「なに言ってるの、今日はあなた達と両親で、ご飯食べに行くって言ってたじゃない。しかも、予約がしてあるって...」

「でも、これ探さなきゃ....、浮かれていた自分の責任だし、私が何とかするから...」

 ゆかりは大輔を見て、頼んできた。


「大ちゃん、お願い。恵、このまま返すから、その後私を手伝って、お願い!」

 コレには恵が反論する。


「ゆかり、何言ってるの? 私の責任でこんな事になったんだから、最後まで何とか見つけ出すから、あなた達こそ先に上がってよ」

 次は、大輔が恵に帰りを促した。


「恵さん、良いから、後は任せて早く行ってください、お子さんもご両親に会えるって楽しみなんじゃないんですか?だから、行ってください」

「そんな、悪いよ、自分の責任なのに」

「何言ってるんですか。オレと由香が散々お世話になってしまって、いまだに恩も返せていないんですよ、だからこんな時くらいは、後輩に甘えてください」


「そうよ、恵さん。私からもお願いします。後は私と ダイ がやっておきますから、心配しないでください」

 業務が終了した由香が、何事かがあった事を察知し、終了後に大輔の居る部署に来ていた。

 あれから由香は更に大輔とは親密になり、今では“ダイ”と、呼ぶ程の仲になった。

「みんながそんなに言うんなら、お言葉に甘えちゃおうかな」

「甘えちゃいなさい恵、あと、あそこのバカップルにも手伝わせてやるから、行きなさい」

 そう言って、バカップル紹介の、幸宏と美菜が何も知らずに、業務後の休憩ルームから歩いてきた。何も知らずに、だ。


「ごめんね~、この埋め合わせは後日必ずするから。じゃあお願いね」

 そう言うと、恵は急いで帰り支度をして、もう一度謝ってから、速足で退社して行った。


「何か恵さん、慌てていたけど、何かあったのか? 大輔」

「ま、まあな.....」


 この後、ゆかり、由香、幸宏、美菜と大輔の5人で手分けして、保存先のファイルの捜索をした。


            *


「何でこんな所に、ドラッグしちゃったんですかね?」

「ほ~んと、恵にしては信じられないミスね、でもまあ良かったわ、意外に早く見つかって。お手柄よ、大ちゃん」

「ありがとうございます」

「まさかな~、あんな場所に入っていたなんて、気が付かねえよ、流石PCが得意なだけあって、目の付け所が違うな、大輔」

「でもこれでやっと帰れるわね、やった~」

 美菜が両手を上げて喜んだ。


「美菜、コレからご飯食べに行かないか?」

「そだね、行こう行こう」

「大輔はどうする?」

「えっと、オレ達は......」


 その時、ゆかりのスマホが鳴った。

「あ、恵からだ」

 そう言うと、スマホ画面をスワイプし、通話し始めた。


 あれからが気になったのだろう、恵は電話先で謝っている様に聞こえたが、ゆかりが事の顛末を説明し、すでに作業は終了している事を伝え、通話は終わった。

「恵が皆に、ありがとうゴメンね、だって言ってたから」

「で、間に合ったんですか」

「うん、今は社長たちとレストランに着いたって言ってた」



「「!!??」」

 大輔と由香が驚いた。

(えぇ?! 恵さん達と、社長夫婦が食事??)


 それを見たゆかりが、逆に驚いた。

「ちょ...、大ちゃん、何を驚いているのかな?」

 それを見ていた幸宏も、逆に驚く、そして。

「何で恵さんと社長が.....」

 由香も驚きを隠せない、一体 恵と社長が何でと言う、奇想な事に感じた。


 大輔と由香の驚愕の表情に、“はは~ん”と、理解をして、説明し始めた。


「もしかして、大ちゃん、由香ちゃん、恵の事、いまだに良く知らないでしょ?」

「既婚のOL さんですよね?」

「あは、そうなんだ、全く知らなかったのね」

「女性なので、あまり詮索は....」

「そっかそっか.....」

 そう言った後、ゆかりは恵の正体を話し始めた。




「あのね、恵って、実は.....、ここの社長の令嬢なの」

「「!!」」

 コレに、また大輔と由香が、high驚愕した。


 言われて一瞬言葉を失い、思考も停止したが、言われてみれば、今までの 行動・仕草・振る舞い、それに “社内事情に詳し過ぎる事”が、一気に理解が出来た。


「は~ん...、どうやら分かったみたいね」

「はい。なるほど、恵さんに纏わる事で、周囲がうまく事が廻っていた事に、納得しました」

「あら、やっぱりキレがいい男ね、もう分かっちゃったみたいね」

「谷川 奈緒先輩の事も、恵さんが関わっていたんですね?」

「はい!正解。でも、あれは谷川さんが、あなたと由香ちゃんに、ハラスメント的な事をしているだけが理由じゃ無かったんだけど」

「あ!!」

 大輔が瞬時に気が付いた。

「うふふ、ホント回転早いわね、大ちゃんは、...で、分かったみたいね。そう、社内の部長との不貞が原因かな。噂は知っていたんでしょ?」

「あ、はい、美菜から聞いて.....」

「そう......、あ、ちなみに、美菜ちゃんって、この会社の上役の娘ってのは?」

「あ、それは大学の頃から知っていました」

「なるほど。確か...、一緒の大学だったよね?君たち4人は」

「「「「はい!」」」」

 一斉に息が揃った。

「幸宏とオレが同じで、由香と美菜が一つ下です」

「そうね」



「で、あの後、谷川先輩って、どうなったんですか?」

「そのままよ。ま、あの後、上役から、チョットした処分と、厳重注意されてたけどね。この次問題起こしたら、即!退職だって言われてたわ」

「それじゃあ、その、えっと.....、相手の...」

「あ~.....、不倫相手の営業部長はね、奥さんの耳に入って、一時大変な事になったみたい。今はウチの系列会社に移動になって、営業職は続けているって聞いてるわ、離婚はしなかったみたいだけど、その後の詳細は知らな~い」


 (流石、社長の娘との親友だ、社内の詳しい事情を良く知っている。口が堅い事をよく理解していて、恵さんは、ゆかりさんに相談したりしてたんだ)

 大輔は、社内に良き親友と言う理解者が居てくれる事が、自分を高める事に必要だという事を、この二人から改めて学んだ。



「あと気になるのが、谷川先輩の取り巻きのDQN二人って、その後どうなったんですか?」

「あのままな~んも無いよ。ただ、直属の上司から。ちょっとだけお目玉くらったって聞いたかな。ま、そんなもんだよ、金魚の○○だからね~」

「ははは.......」


「じゃあみんな帰ろか。恵も必死に謝りながら、感謝してくれていたし。じゃあみんな、お疲れ」

「お疲れ様でした~!」


「うふ。大ちゃん、彼女と仲良くね」


 意味深な笑みを大輔と由香に向け、颯爽と帰って行くゆかりに、二人は頭を下げ見送った。



            △



 退社後、幸宏たちとは別行動となり、大輔たちは、そのまま細井家に行く事にした。


 由香との家路の途中、由香と大輔のスマホが鳴った。

 恵からのお詫びと御礼のメッセージが、5人に一斉送信されたみたいだった。

「律儀だな恵さん」

「そうね。 でも、ビックリしたわ。恵さんが社長令嬢だったなんて。身内の美菜からも聞いてなかったし」

「そうだよな、美菜って恵さんと身内になるんだよな」

「うん、そうだね。だけど、今まで何で教えてくれなかったのかなぁ」

「それは多分、気を使っていたんだと思うぞ。例えば、美菜の父さんの地位って知ってたか?」

「そう言えば、詳しい地位は知らない、ただ、会社の上役って事くらいかな」


「だろ? 最近知ったんだが、美菜の父さんの地位は、専務だ」

「!」


「びっくりだろ?オレも最近だが、恵さんから聞いたんだ」

「だって、そんな事、美菜は一言も.....」

「だから、美菜は気を使って、わざと言わなかったんだ」

「それを言って、周りから“臆”されて、何となく壁が出来たり、将来の地位狙いなどで、変な男が寄って来ないように、はぐらかしてたんだと思う」

「だったら...、親友なら、敢えて言って欲しいよ。何かちょっと寂しいな、そんな気遣い」

「違う違う。由香が大切だからこそだと思う。 親友に“臆”されたら、希薄な関係になってしまう、そんな事が嫌だったんだな」

「私、そんな事で美菜を嫌ったり、希薄な関係になったりしない。 したく無い」

「じゃ、そう言う事だ。 でも、多分、今更言い辛かったとは思うな」

「それ知っている事、美菜知ってるかな?」

「そんなんいいじゃん、今更。 それ知って、どうだ?」

「別に、今までと変わらないけど」

「じゃ、終わりだなこの話」

「そっか。そうだよね。 美菜は美菜だもんね」

「ははは......」


 知らずのうちの美菜の気遣いが、嬉しい由香だった。



            △



「ねえ、大輔。お腹空いた」

「ありゃ。気持ちが晴れたら、今度は空腹か」

「だってお腹減ったもん」

「ちょっといいレストラン行くか?」

「えぇ~‼、ココはやっぱり“B級グルメ”の王者、 焼きそばでしょ?」

「あ、いいね、焼きそば定食」

「でしょでしょ!ねえ行こうよ~、あそこの店」

「よ~し分かった。あそこ美味しいからな、決定だな」

「うん!」


 車内が、店舗に着くまで、焼きそばコールになっていた。



          ◇  ◇



「美味しかったね~大輔。もうハズレないよね、あそこの焼きそば定食」

「揺るぎないなあそこの味。他には行けないからな」

「何かね、あの店の お好み焼きも普通に美味しんだって。今度行ったらテイクアウトしちゃおかな」

「じゃ、近いうちにまた行こうか“はまちゃん”」

「うん、行く!」

「はは、好きだな~由香は」

「えへへ、食べるの大好きだもん」

「それで太らないのは、凄いな由香は」

「自慢だよぉ~」


 車内で、やや大ぶりな胸を張り、自慢する由香。


「しかし、もう定番になったな、由香が俺ん家泊まるの」

「付き合ってからまだ数ヶ月なのに、親の公認があるからね」

「由香来ると、姉ちゃんが喜んで連れまわしてるからな」

「うふふ、私は結構楽しいよ、お姉ちゃんと一緒に居るのは」

「由香と早く二人きりになりたいのに、今日も今か今かと姉ちゃん待ってるんだろうな~」

「行くの知ってるからね」

 少し項垂れる大輔。


「早く由香、抱きたいのに~.....」

 小声で言ったのに、由香にはしっかりと聞こえてしまったらしい。


「も..、もう、大輔のスケベ!」

「あ~、聞こえてた?」

「もう、丸わかりだよぉ、えっち~」


 由香の顔がほんのりと染まった。


「イヤなのか?」

「............」

「なのか?」

「........、い、いよ」

「やった~」

「もう、ホントにスケベなんだから~」

「だから言ったろ? 一穴主義だって」

「な、その言い方がエッチなの」

「だって、由香一本だから」

「それは~...、とっても嬉しいかも」

 大輔からの自分への一筋宣言に、この上ない喜びを感じる由香。


「あ~、もう着いちゃったよ。あ~あ、暫く姉ちゃんに由香取られちゃうのか~、ざんね~ん」


 細井家に到着して、二人とも車から降り、玄関に入ると。


「ゆか~! 待ってたぞ~!」

(あ~!いきなり捕まっちゃったよ~)


「由香、ご飯食べたか? 食べたなら、一緒に風呂入ろう、な」

「お、お姉ちゃ~ん...」


 大輔はそっちのけで、玄関に着くなり、由香をさらわれる、大輔だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ