三十七話
時が切り取られた場所。
勇者達はこの地に来て受けた最初の印象がそれだ。
男魔族から報告は確かに受けていた。
全て状況を残したまま、何も破壊される事なく、村からは人だけが消えた。
ゾンビが出たはずだった、腐乱臭のみが残っていた、だが……そんな形跡など全く無い。そんな報告だ。
だが、勇者達がこの地に来た時には、既に物品を奪った者が居たり捜査の為に色々と弄られた後なのだろう。様々な物が破損され、奪われただろう痕跡がちらほらと視界に入ってくる。
「ふむ……腐乱臭が消えた事と、既に捜査され荒らされた事しか解らんな……ぱっと見た感じだけなら」
「そうっすよね。少し前に捜査してた人間が居たからか、賊の一人すらいやしませんね」
「生命反応も、この付近には無いみたい。これなら堂々と調査出来るわよ」
こんな状況の場所を調査して何が解るのだろうか? と思わなくも無いが、勇者達は村へと足を進める。
その際、女魔族が周囲に誰か潜んでないかと生命反応を探るが、何も無かったようだ。
「しかし、既に物的な調査はされて居るからな。そうなると俺達がやるのは」
「魔力的なモノっすね」
「そうだな。人のレベルでは見つけれないものでも、俺達のレベルになれば発見できる物が有るかも知れないからな」
魔力の流れを調べる。
何せ、ゾンビが出た・村人の全てが突然として消えた・出たはずのゾンビの居場所が解らない。となれば、何らかの魔法やら魔術が使われたと思ったほうが良い。
しかし、人々の捜査ではなんらかの答えなど見つからなかったのは、既に男魔族のスパイ行為で調査済みだ。
であれば……本当に何も無かったのか、レベルが足らないのか、それとも誰かが隠蔽改竄している事になる。
そう考えた勇者達は、先ず自分達が直接此処にある魔力の流れを調査する事で、なんらかの当たりを付けるつもりだ。
「兎に角だ。まずは違和感を感じたという内容を調査するべきだな」
「了解っす! えっと……たしか……ここで……うん」
鼻を使いくんくんと、耳をつかいピクピクと、男魔族が其々の器官をフルに使って周囲をチェックして行く。
その姿……正に犬である。
しかし、余りにも真剣な表情でやっている為に……これは笑ってはいけない、でも笑いそうになるのは仕方ない話で……。
勇者と女魔族はと言うと、そんな男魔族を視界に入れないようにしつつも、必死に笑いを堪えていた。
「くん……ん? あ、兄貴! 姉さん! ここ! 此処に何かあるっす!」
此処掘れわんわん……では無いが正にその様な雰囲気で、ある場所を指差す男魔族。思わず「クッ」と声を出す勇者だが、次の瞬間、直に冷静さを取り戻し男魔族の指差す場所を確認し始める。
「ふむ……村の中央か。確かに、妙な魔力反応が微かにだが有るな」
「……これ、魔族でも見つけるの大変よ? かなり巧妙に隠されてるわね」
行動の見た目とは裏腹に、男魔族の調査能力はかなり優秀だったようで、間違いなく此処に何かがある事を理解する二人。
もし男魔族が居らず、この二人で調査していた場合見逃していたかもしれない。そう二人が感じるほどのモノだった。
「どれどれ……ご丁寧に村の中央には建物がある訳だが」
「あれは、ここら一帯の領主が作った施設らしいっすね」
「ほー……なにやらきな臭い話だな」
其処まで大きくない村。そんな村にある領主が作った建物。これで怪しくない訳が無い。
「ま、大丈夫だとは思うが……お前等注意しろよ」
そんな怪しい場所だ。突入しない訳が無い。そして、何があるか解らないので勇者は二人に向かって注意をする。
勇者は実力的にも二人は大丈夫だと信じているが……それでも何が起こるか解らないのだ。何せ、その何かが起きたのが化物事件なのだから。
誰も居なくなった村の、領主とやらが作った施設。そのに足を踏み入れると、其処にあったものは……。
沢山の人形だった。
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ずらりと並ぶ人形……ホラーっすよねぇ。




