三十六話
ゾンビが溢れる。
そんな事件が、とある村で起きたらしい。とは言え、らしいと言うだけで確定した情報では無い。
では、何故そんな情報が出たのかというと。
「どうやら、大量のゾンビを見た! って人の証言の元、調べ上げたら……其処には村人が一人も居らず腐敗した臭いだけが残ってたそうなんっすよ」
と、男魔族が調べて来た話を勇者にする。
それにしても、聞けば聞くほど奇怪な事件だな……と、勇者は考え始めた。
何せ、臭いだけが残っており、それ以外は何も残って居ないのだ。腐った肉も、朽ちた骨も、死体のしの字すら見当たらない。
では、何処かに移動したのでは? と考えるが、どうやら足跡が一切無いとの事だ。
「更に可笑しい話なんっすけど……どうも、何も破壊されてないんっすよ。家は綺麗なまま残って、中に食事中と思われる状況や、遊んでいただろうボールや遊具が散らばっていたり……」
「ちょっと!? それ、ただのホラー話じゃないの!?」
「……いやいや。ゾンビが出た時点でホラーだろうが」
不思議現象を拠り怖く話し出す男魔族に、女魔族はオバケが嫌いなのかホラーだと過剰に反応。
それを見ていた勇者は、ゾンビだってホラーだと切り捨てる。
「違うわよ! ゾンビは魔石を持ってるもの! モンスターよ!!」
「いやいや、動く死体じゃないか」
「ちーがーうーのー! モンスターなの!」
女魔族が一切譲らない。何とも可笑しな話だが、モンスターなゾンビは良くてオバケは駄目と、何とも子供っぽい処もあったものだ。
勇者も思わずと言った感じで、女魔族を温かい目で見てしまう。
そんな視線を受けた女魔族は、気恥ずかしい思いに駆られたのか「うっ……」と言いながら、少し後ろに下がって言った。
「まぁ、姉さんのオバケ嫌いは今は置いとくとして、俺も実際に見に行ったんすよ……ただ、一足遅かったんですかね? 他の人間が荒らした後で」
「そうか。まぁ、それは仕方ないだろうな。調査に来たのか盗賊が来たのか……どちらにしろ、色々と弄られるだろう」
「えぇ……ただ、どうも可笑しいっすよ。こう……臭いと言うか空気というか」
何か違和感を感じたらしい男魔族。だが、その違和感にたどり着けずうんうんと唸っている。
その横で、女魔族は置いておくと言うワードに囚われ、男魔族をジト目で睨んで要るのだが……あまり効果は無いようだ。
「そうだな。無理に思い出そうとする必要は無いだろう。ふとした時に思い出す可能性もあるだろうしな。それに……明日にでも全員で行ってみれば良いだろう」
「え? 良いんですか? 兄貴は余り外に出たくないんじゃ……」
「出たくないのではなく、現状はなるべく人に会いたくないだけだ。人が消えた村であれば……なんら問題ないだろう?」
「なるほど。そう言う事でしたら」
動きを待つ間になるべく他人と遭遇したくない。これは勇者が姿を消した事で何か動くのでは? トイウ考えや、元パーティーメンバーと距離を置きたい。そんな思惑が隠れた当初からある話。
そして、勇者も口にした通り。今回調べる場所は人が消えてしまった場所だ。この様な場所に来る者と言えば、調査に来る者か盗賊……後は度胸試しでもしようとする愚か者ぐらいだろう。
それと、そうした者達であれば来たとして少数だ。勇者達であれば難なくやり過ごす事など容易だろう。
そう言う訳で、勇者は〝還らずの森〟から出て調査する事を決断する。
この怪奇現象が……化け物事件からの流れと言う可能性が否定できないからだ。
「出来れば、ただの怪奇現象でした。という話なら良いんだけどな」
「ただのモンスターですって!」
勇者は願い、女魔族も願う。まぁ、その願いの内容がズレながらも微妙に一致してはいるのだが……。
どちらにしても、こういう時の感と言うのは嫌な方向で当たりやすい物だったりする。
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