三十八話
「う……うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
施設の中で悲鳴が響き渡る。大量の人形を見た女魔族の悲鳴だ。
「落ち着け。ただの人形だ。何の魔力反応も無いから動く事も無いぞ」
「に……に……だ……」
「姉さん……やっぱホラー苦手じゃないっすか。取りあえず深呼吸っすよ。ほら、ひっひっふー」
男魔族が古くからあるボケで女魔族を落ち着かせようとするが、色々と恐怖で振り切ってしまった女魔族は……そんなボケをかました男魔族を……ぶん殴った。
「それは深呼吸じゃない!!」
「ぐえぇ!? 姉さん酷い!」
「姉弟漫才はその辺にしておけ。さっきも言ったがゴーレムでも無さそうだからな。恐らく……ただの人形マニアだったんだろう」
勇者は二人のやり取りを漫才と言い切り、冷静に人形を調査。コンコンと人形を叩いてみたり、何か無いかと色々な角度から調査したりと、二人の行動を完全にスルーしている。
「あ……兄貴酷いっすよ。俺、ただ落ち着かせようとしただけなのに」
「それはデリカシーが無いボケをしたお前が悪いだろう? 相手を考えろ」
「そ……そうよ! 私は妊娠もしてないし、そもそも妊娠するような事もしてないから!」
「お……おう、そうか。だが、それを力いっぱい言うのもどうかと思うぞ?」
女魔族の自爆。どうやら彼女はまだまだてんぱっている様だ。
普段の彼女であれば、このような天然ボケとも言うべき自爆はしないだろう。……よほど、薄暗い部屋に薄っすらと見える人形の群れが怖かったようだ。
そして、勇者も彼女の発言に何と言えば良いのか解らず、つい普通に突っ込んでしまう。
「あ……あ……あうあうあうあうあうあうあーーー!!!」
女魔族の照れ隠しによる奇声と、その原因を作った弟である男魔族への乱打。まぁ、ポコポコといった感じで全然力も入っていないのだが……。
「……お前の姉は完全に崩壊したぞ」
「兄貴……恐らく、兄貴の最後の言葉がとどめだと思うっす」
そんな女魔族を暖かい目で見守る二人。男魔族は黙ってポコポコパンチをその身に受け続けている。
「兎に角だ……人形は特に怪しい場所は無いな。魔力の流れはと……下か?」
「下っすね。まぁ、良く有る地下室に秘密があるってパターンっすかね」
「とは言え、何故こうも無造作に人形が置かれているんだろうか」
「これで、この人形がゴーレムだったり、人間が人形に変えられたと言うなら話は別なんっすけどね」
「生命反応も魔力反応も全てに置いてただの人形としか判断出来んからな。真面目に人形マニアなんじゃないか? 領主とやらは」
「あれっすかね? 人形スキーだけど家族に知られるのは! って事で、こんな場所に人形専用の施設を造ったんっすかね」
「まぁ、それなら問題ないけどな。ただ、この地下に流れる魔力反応だな」
ただの人形マニアなのであれば、地下など必要ないだろう。
もし、誰かにこの施設がばれた時用と言うのであれば、人形も地下にあるはずだ。
現状において、全てが疑う要素になってしまっている。これで、本当にただの人形マニアの施設と言うならば、実に滑稽な話だが……それは無いだろうと勇者と男魔族は意見を重ね合わせている。
状況は実に怪しい。
人が突然消えた。人形が無造作に置かれている施設。更には地下室がある。こうなると、人形自体がカモフラージュでは無いかとも思えてくる勇者達。
「兎に角……地下を見ない事には判断出来んな」
「上や他の部屋は良いんっすか? 何か資料とかあるかも」
「そうだな……少し調べておいたほうが良いか。日記とかでもあれば良いんだがな」
そして、調査する方法を決めて行く勇者達。男魔族にいたっては、実に慣れていると言った感じだ。なので……。
「調査に関しては、お前のやり方を基準にしよう。先導を頼んだぞ」
「兄貴! 任せてもらうっすよ!」
勇者は男魔族の手腕を信用し調査のやり方を一任する事にした。感動の余りやる気に溢れる男魔族。
そんな二人の横で、いまだに「あうあう」と言いながら、男魔族をポコポコしている女魔族が居たりするが……直に正気度を回復するだろう。たぶん。
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