三十話
男はやり方を間違えた。
レベリングを行なった時、一切の後処理をしなかった。
男は勘違いをしていた。
ただ殺し、燃やし尽くせば問題が無いと思っていた。
そして残ったのは、数多の恨みとそれを目の当たりにした男の後悔。
蠢く黒い影が男を覆った時、男の全てが終り、化物が産声を上げた。
勇者と男魔族が黒い竜の頭のような触手を切裂いて行く。そして、女魔族が落ちて来たソレを炎の魔法を使い焼き払っていく。
「くっそ! 限が無いぞ!」
「斬っても斬っても次から次に生えてきますね! 兄貴どうします?」
「何、最初から今回は様子見の予定なんだ。ぶっ倒れない程度に斬りまくるぞ!」
「あいさー!」
勇者の剣が、男魔族の爪が化物にダメージを与えていくが、肝心の化物と言えばダメージをダメージと思っていないのか、何の反応も無くただただ機械的に次から次へと触手を勇者達に向ける。
圧倒的な火力不足。
これは勇者達にとって最初から解っていた事だ。しかし、ここまで化物が何の反応も見せないとなると、一体如何すればいいのか解らなくなる話だ。
故に……勇者は思考を逆に切り替えた。
「うぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ちょ! 兄貴! 魔力込めすぎっすよ!!」
ちまちまとやって情報収集した所で何も手に入らないのなら、デカイ一撃を入れたらどうなるのか。そう勇者は考え、聖剣に膨大な魔力を送り込む。
送り込まれた魔力が黄金に輝き、剣の大きさを一回りも二回り……と大きくなって行き、片手剣だった聖剣が、黄金の魔力により竜の首すらも簡単に落せるサイズへと変化した。
「消え去れぇぇぇぇぇ! ドラグベイィィィィン!!」
黄金に輝く巨大な剣は竜の首を落す為だけに鍛え上げられた技。それを勇者は化物に対して振り下ろした。
勇者が剣を振り下ろした瞬間、化物を中心に一面が黄金の輝きにより支配される。
コレであれば、化物もやれたのでは? と、勇者以外の二人は考え喜びの声を上げようとするものの、ふと見た勇者の真剣な表情が変わっていない。
そして、二人の目に映る驚愕の光景。
そう、化物は沢山あった触手を斬りおとされ、本体と思われる胴体が切裂かれたが……直に何の反応も見せる事無く、黙々と胴体と触手を修復し元の姿へと戻ってしまった。
「まじかよ……兄貴の一撃でも駄目なのか?」
「あはは……どうするのよこれ」
二人が絶望の表情を浮かべる。が、勇者だけ真剣な表情を変えずに何時も通りの感じで口を開いた。
「ま、様子見だからな。こんなもんだろ」
「「ええええええええええええええええええ!?」」
二人の絶叫が周囲に響き渡った。まぁ、驚くのも無理は無い。あれだけの大技だ。勇者にとって切り札と言ってもいいはず。だと言うのに、それが様子見だなどと勇者は口にしたのだ。
「でもでもでもでも!! あれ以上の攻撃って早々無いよね!?」
「まってまってまって!? 兄貴には策でもあるんじゃないのか!?」
余りにもと言える事が多発した事により、二人は混乱をしたままどうにかなるのか? と口にする。
「ま、現状は無いが……まぁ、どうにかなるよな? なぁ?」
勇者が声を掛ける。だが、そこには誰も折らず、勿論だが二人に声を掛けたわけでもない。
「ん? 誰か居るの?」
「へ? 俺達じゃない方向を見てるよな?」
訳も解らないといった二人を他所に、勇者は一ヶ所をただただ見つめる。
十秒、二十秒、三十秒と時が過ぎ、相手が痺れを切らしたのか空間がブレ一人の男が姿を現した。
「ったく。俺に気が付いてるとはな。流石勇者様と言ったところか?」
「そりゃどうも」
何気ない会話をする二人。の様にみえるが其処には相容れないといった空気が流れている。
そして、出てきた男を見た女魔族と男魔族は本日二度目の絶叫を上げるのだった。
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誰か出てきました。




