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三十一話

 女魔族と男魔族は驚きの余り、叫んだ後は口を魚のようにパクパクとさせている。

 そして、勇者は出てきた男と視線をぶつけ合い……その口をゆっくりと開き言葉を投げつけた。


「正直。俺の魂と聖剣が今すぐにお前の首を落としたいと言っているんだがな」


 何という事だろうか。勇者は自分から呼び出しておいて、首を落としたい等と間違いなく喧嘩を売るような事を言い出した。

 そして、その言葉を受け取った男はと言うと、一瞬ニヤリと笑みを見せた後、まるで今から殺し合いをするような気配を見せ……。


「何……俺の魔力と拳も似たようなモノだ。今すぐその顔を打ち抜けと告げておるわ……だが」

「あぁ、今はソレよりも……アレの対処だろう?」


 お互いがお互いを敵だと言っている。だと言うのにも拘らず、それ以上の問題が目の前に在るために、お互いが我慢をする。そう、互いに認識しその事を確認しあうかのように会話続けた。


「アノ存在は放置する訳にはいかないからな。あんな物が居たんじゃぁ……俺の計画に支障が出る」

「アンタの計画が何かは後でじっくりと尋問するとしてだ。放置出来ないというのは前面に同意だ……魔王殿」


 色々と問題があるだろう発言が飛び出したが、それを吹き飛ばしてしまう単語が勇者の口から飛び出した。


 魔王。


 人類にとって、そして勇者にとっての絶対的な敵であり討伐対象。

 何故その様な存在が、今、此処に、よりによって勇者なんて存在の目の前に現れたのか。普通ならありえない話だ。

 だが、今は化物が居る。勇者が放つ最高クラスの火力すらものともしない……そんな化物が。


 しかし、余りにもタイミングが良すぎる話だ。幾ら魔王とて、いきなりこの場に現れるなど。それこそ、待機でもしてない限りはありえない。

 ただ、勇者はそう言った思考を今は要らぬと排除する事にした。何せ目の前の化物はありえない存在だからだ。


「まぁ……もし斬撃がお前の首に行ったとしても赦せ。何、ただの誤斬だ」

「ほう、ならば俺の一撃も赦せよ? 何、ただの一撃だ」


 本当に共闘する気があるのだろうか? そのようにも取れる会話だが、既に両者ともお互いを見ておらず、その目には化物を映している。

 そんな、戦闘開始直前といった空気ではあるが、ここで女魔族と男魔族がやっとの思いで復活し、声を出す事が出来る様になった。


「お……お……ま……魔王さま、どうして此処に!?」

「そ……い……いやいや、突然すぎですよ!?」


 そんな事を復活と同時に話し出した二人を魔王がチラリとみて、一瞬……それこそ誰にも気がつく事が出来ない刹那と言える間に笑みを浮かべたのだが、そんな表情も直に戻し、いや、更に真剣な表情を作った。


「ふむ、そう言えば居たな。なにやら勇者と随分仲が良さそうだったではないか」

「い……いえ、その!」

「あー……えっと……」

「良い良い。別に気にもしておらぬ。むしろ中々愉快な事をすると思っておったわ」


 実は全てを知っているぞ。そんな事を考えている魔王だが、その事は言わない。何せ彼の計画に支障が出たら困るからだ。

 しかし、此処で姿を見せ、勇者と共闘していた二人をみて何も言わないなどは出来ない。

 故に、気にしてないけど面白い事をして居るね。と、要約すればその様な事を口にしたのだった。

 ただ、言われた側からすれば、それは脅し以外何物でもない。あわあわと慌てる二人。


「おい……お前等、目の前に天敵とも言える存在が居るというのに、何挙動不審になってるんだ」


 そんな二人に勇者が声を掛ける。とは言え、言ってる内容は正論だがかなり厳しい言い方だ。

 しかし、ソレも仕方ないだろう。敵を前にしてよそ事など持っての外である。


「まぁ、勇者殿の言う通りだな。おいお前等。別に好きに行動しても言いと常日頃言っているだろう? 勇者と絡むのも自由だ。だが、俺に何か思う事があるのであれば、さっさと立ち直って化物を倒す手伝いをしろ。そうすれば、今後の事は全て俺の名の下に許してやる」


 別に許すことでもないけどな。などと魔王は思っているが、彼等の雰囲気からすると、まるで罪人と言ってもいい反応をして居る。

 結局の処、魔王にとって大切なのは計画だ。その計画実行の為には目の前の化物を排除して〝勇者と絡む魔族〟が必要となる。

 故に許す必要など無いのだが、女魔族と男魔族からすれば許しを得なければ、魔王の思惑通りに動かなくなるだろう。

 ならば、計画を二人に告げれば良いのでは? と思うが、計画を知れば自然体では居られなくなる。故に魔王はそれを伝える事をしない。


「兎に角……今は化物狩りをするぞ」

「そうだな。まぁ、その後はお前だ首を洗っておけよ」

「ぬかせ。勇者こそその顔を打ち抜かれて良い様に綺麗にしておけ」


 軽口を叩きつけ合う二人。だが、これは世界史上初の事だ。


 勇者と魔王が共闘する。


 嘗てこんな事は一度たりとて無かった。故に……また一つ、世界の歯車が狂いだした。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


魔王様降臨! って、普通に予測できましたよねw

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