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三十二話

「獄炎! ほれ、どんどん焼かれるが良い!」

「こっの糞魔王! 火力がある攻撃をするのは良いが、これでは接近出来ないじゃないか!」

「おお! 勇者殿が居るのを忘れておったわ! ハハハハ」


 化物と戦う為に一時的に共闘しているはずだが、一体何を張り合っているのか。


 勇者の剣が魔王を掠めながら化物を切裂き、魔王の魔法が化物ごと勇者を襲う。

 魔王の魔法が勇者の進路上に発動されたかと思えば、勇者の剣技が魔王の魔法ごと化物を切裂く。


「……これ、支援して居る必要あるのかしら? そもそも、共闘と言っても見た目は足を引っ張り合ってるだけよね」

「姉さん……俺にもわからないっす。ただ、三人で戦ってた時に比べて、化物へダメージが入ってるみたいなんっすよね」


 近接は無理だと女魔族と男魔族は判断して、今は遠距離から魔法による支援攻撃だけをしつつ、ポロリと愚痴をこぼした。

 それにしても、二人が愚痴を言いたくなるのは当然だろう。何せ、化物の触手やら胴体へのダメージが先ほどまでよりも、段違いで削れているのだから。


「だから、進路の邪魔をするなと!!」

「勇者殿が進路を変えればよかろう? それに、俺の魔法と拳の方が優れているからな! 優先順位は俺にあるだろう」

「えぇい! 何処が優れているだ! 同じようなものじゃないか!!」


 お互いを口撃しつつ、化物に対して止らない攻撃を繰り返す勇者と魔王。

 こんな状況を見てしまえば、色々と世界観が変わってしまう人が出てくるだろうが……生憎と、この状況を見ている者は限りなく少ない。

 それ故に、二人は遠慮なく口撃と攻撃を繰り返していく。


「炎はいまいちか……なら氷はどうだ? 凍牢!!」


 魔王が氷の魔法を発動させる。氷で出来た牢屋の様なモノが化物を囲んだかと思えば、その内側が一気に温度を下げ内部の物を次々と凍らせていく。


「あぶな! 俺が入ってたら如何するんだ!! ったく、範囲系は気をつけろと言ってるじゃないか!」

「ちっ。寧ろ入って居れば同時に対処が出来たというモノ……実に惜しい事をした」

「……こいつめ」


 勇者は抗議をしたが魔王の返答の内容が内容だった為に、思わず切れ掛かってしまう。

 だが、実際の所は勇者も勇者だ。化物を狙いつつ魔王の首を目掛けて剣を振ったりしたのだから。なので、本来は抗議をするのもどうなんだ? と言う話ではあるのだが、それはそれという事だろう。


「で、あの魔法で倒せるのか?」

「ふん。無理だろうな。ただ、凍れば再生する速度は落ちるのでは無いか? と思ってな。それに間違いなく動きを止める事はできるだろう。後は、氷の牢が無くなった時に一気に殴り掛かるぞ」


 倒せないだろうが、行動を制限させる事はできる。そう告げると、魔王は自らの腕に漆黒の魔力を溜め始めた。


「なるほど。それじゃその話に乗るとしますか」


 そして、勇者もまた魔王の話に合わせ、自らの聖剣に黄金に輝く魔力を溜め始める。


「……どうする? 私達の場合は下手に接近戦を技を使ったら巻き込まれるんじゃない?」

「姉さん……俺もそう思うっす。だから、二人が突っ込んだ後に溜め込んだ魔力を魔法で撃ち込むのが良いかと」

「うん、そうしようか」


 魔族二人。勇者と魔王の力にびびって動きが鈍る。

 とは言えそれも仕方の無い話。今、勇者と魔王が溜め込んでいる魔力が放たれた時、少しでもその攻撃に触れてしまえば、二人は間違いなく消滅してしまうだろう。

 魔族一人を軽く消し飛ぶ魔力。それを溜め込める二人は、一体どれだけ離れているのだろうか? と思わなくも無いが、それだけの力が必要な化物も一体何者なのかと言う話だ。

 それ故に、二人は接近戦を最初から捨て、今放てる最大の火力を誇る魔法の準備を開始した。


「さて、そろそろだな。遅れるなよ勇者殿」

「お前こそ、外すなよ魔王殿」


 化物を囲む氷の牢が消える。その瞬間に勇者と魔王が、今居る位置から消えた。

 瞬きをしてしまえばもう何処に行ったか解らなかっただろう。もはや瞬間移動では? と思うスピードでの移動。

 勇者と魔王は既に氷付けになっている化物の目の前に移動していた。


「合わせろ魔王!」

「お前がな勇者!」


 共に最大の一撃を放つ。

 勇者の巨大化した黄金の剣が、魔王の禍々しい魔力を纏った拳が。


「切裂け! 全力の……ドラグベイィィィィィン!!」

「穿て! 究極……魔王インパクト!!」


 放たれた其々の技が、化物を飲み込み、化物の中心でぶつかり合う。

 相反する魔力がぶつかった瞬間。反発しあったのだろうか、化物の中心から魔力の大爆発が起きた。


「……これって、私達の魔法いるかな?」

「一応撃っときません? 手を貸せって言われてた訳ですし」


 と言う訳で、オマケと言わんばかりに二人が魔法を爆発が起きている場所目掛けて撃ちこんで行く。果たして、どれほどの効果が有るのかは謎だが。




「それにしても魔王一言良いか?」

「ん? どうした勇者殿」

「いや何……技名。かっこ悪くないか?」


 勇者が放ったその一言。それにより魔王の凍結魔法とは別の意味で空間が凍った。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。


ま、世界最強が二人揃えばこんなものでしょう。

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