表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/64

二十九話

 死んだ魚のような虚ろな目。深淵でも覗いたかのようなただただ黒い瞳。言い方は様々だが、間違いなくその目は何も見ていない。

 その様な目を持つ者が、街の中を何の目的も無く歩いて行く。


「おい兄ちゃん。人にぶつかっておいて何もなしか?」

「服が汚れちまっただろうが! どうしてくれるんだ!?」


 何処にでも居るようなチンピラ達。言ってしまえばよくある手法と言うヤツだろう。

 態とぶつかっておいて、相手にの所為にし金を奪う。彼等にとっては日常的な行動。


 しかし、今回はターゲットにした者を間違えた。


 何も反応を示さない青年に、彼等は苛立ちを覚えたのだろう。

 どんどん言葉が強くなって行く。しかしそれでも反応を示す事がない。故に、誰かが最初に手を出した。

 こう言った行動も、彼等にとっては何時もの事だ。脅し暴力を振るう。そうすれば金を出す。それを繰り返して警備兵が来たとしても、ちょっと賄賂を贈ればそれでお終いだ。

 だから、今回も徹底的に痛めつける事にした。


 ニヤリ。


 彼等の目には青年の口がそう歪んだ様に見えた。いや、実際に歪んでいる。普通に考えれば、こいつは殴られて喜ぶ変態か? となるだろうが、このチンピラ達は全く違う、全身の毛が逆立つような悪寒が走った。

 これはヤバイのでは? チンピラ達の誰かがそう考えた時にはもう遅く、青年からは膨大な魔力が溢れ……。







「街一つが化物に飲まれたか」


 勇者がそうポツリと呟く。目の前では黒く巨大な何かがうねうねと動いている姿が見える。

 恐らくあれが、山の様に巨大な竜の正体だろうと判断し、行き成りどうやって現れたのか? と、考え込んでしまう。


「確かに、あそこは街があった場所ですね……兄貴、でもどうやって行き成り街に現れたんで?」

「解らんな。周囲の話を聞く以上、本当に突然現れたらしいからな。となると、転移か? 変形か? どういった方法にしろ、かなり上手く倒さないと逃げられるだろうな」

「魔法でどーん! と吹き飛ばすにしても、大きすぎるわよね」


 実際、どうやってこの場に現れたのか。その方法が解らない限り、完全に討伐する事は難しいだろう。

 もしスライムの様な存在だとすれば、格でも残せばどこかで復活する可能性もある。転移であれば、飛ばれてしまえば追う事自体が難しい。変形だとすれば、やられた振りをして小さい何かに変化し逃げてしまうだろう。

 そしてそれらは、其々によって対処の方法が違う。

 例えば、転移であれば転移を妨害する結界を作る。核を残すタイプであれば、その土地を完全に焼却なりして浄化するのがベターだろうか。変形であれば、探索能力もちを動因するなどの方法がある。


「全てを同時には出来ないからな。あいつの特性を知りたいんだが……難しいよな」

「奴が出てきた時、その状況を見た者は奴に飲まれてますからね」


 折角見つけたのに八方塞だ。そんな事を考えている三人だが、もちろん何もしない訳にも行かない。


「とりあえず、何か攻撃でもしてみるか? 首を落せば……って、首はどこだ?」


 ウニョウニョと動いているそれ。言うなれば花クラゲのヒドラみたいなものだろうか。

 沢山の首があるように見えるそれは、頭でなく触手かもしれない。


「……中心を突いたほうが良いだろうか? だが、中心点は大きすぎるし、そもそも接近出来ないよな」


 山のような大きさだから当然だろう。その胴体もまた巨大であり、如何攻撃しても中心点まで攻撃が通ると思えない。

 それに胴体を攻撃して居る間に、頭のような物もだまって待機して居るはずが無いだろう。


「馬鹿みたいな火力が幾つか居るんだろうが……足らないよな?」

「山ですからねぇ……」

「私達の魔法でアナタをサポートしても無理よね」


 絶対的な火力不足。これが本当に竜だったのであれば、首を落としてお終いだっただろう。それならば、勇者の一閃で何と無かった可能性はある。

 しかし、目の前に居るのは弱点が解らない謎の生物。感覚的にはスライムに近いだろうか。

 もし、スライムと同じであれば核を探して潰せば良いのだが、ここまで巨大だとその核が何処に有るのかを、探す事すら大変である。


「切り刻んでいくしかないか?」

「魔力とスタミナ……足りますかね」

「ただ、斬りおとしたら焼却しないといけないのよね……手間だわ」


 斬り落とした場所に核が有る場合や、そもそも核でなくても欠片があれば復活するタイプだった場合。一切を残す訳には行かないので、完全に消滅させる為に落とした後、魔法で焼く必要がある。実に手間が掛かる相手だ。

 しかも、ここまでのモンスターとなればただの焼却だとしても、相当な火力の魔法が必要だろう。誰かそこら辺にいる存在に頼む訳には行かない。

 そう言う訳で、勇者は女魔族に焼却作業を一任する事にした。


「俺とコイツでどんどん切裂いていくから、お前は焼却していってくれ」

「あー……了解。焼却に専念するわね」

「おっし。じゃ、俺は兄貴と突撃っすね!」


 それぞれのやる事を決め、まずは軽く様子見をする。ついでに相手を削って行こうと勇者は行動に移す。

 モンスターの特性がどんなものか。それを判明させなければなと考えながら。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。


クラゲのヒドラをはじめて知った時は……唖然とした記憶がありますw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ